ワクチン供給 “減少の見通し” 自治体の接種に影響も

新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、全国の自治体では、国からの供給量が減少する見通しとなっているなどとして、接種を一時的に停止するなど計画への影響が広がっています。各地の影響をまとめました。

集団接種の予約 受付一時停止 三重 四日市

三重県四日市市は新型コロナウイルスのワクチンが十分に供給される見通しが立たないことから、集団接種の新たな予約の受け付けを一時的に停止しました。

新型コロナウイルスのワクチンについて四日市市は7月と8月、集団接種と個別接種で合わせて11万回余りの接種を予定していて、会場や打ち手などの準備を進めていました。

しかし、このうち約4万5000回分しか国からの供給の見通しが立たず、すでにその分の予約はほぼ埋まっていることから、集団接種については新たな予約の受け付けを一時的に停止したということです。

かかりつけの医療機関などで行う個別接種の予約は引き続き受け付けるということです。

四日市市の森智広市長は「国が職域接種を広げすぎたのが大きな要因だと考えている。接種体制を整えたにもかかわらず接種を進められず、もどかしい」と述べました。

1回目接種 一時的に停止 大阪

大阪市では市内の24区ごとに集団接種や各医療機関での個別接種を行っていますが、松井市長は2日、記者団に対し、1回目の接種を今月12日から一時的に停止することを発表しました。

各医療機関が今月12日以降で受け付けた1回目の接種の予約については8月以降にずらすよう求めることにしています。同じくファイザーのワクチンを使用している中央区の「城見ホール」の接種会場では、今月17日から1回目の接種を停止します。

一方、2回目の接種についてはどの会場でもこれまでどおり受け付けるほか、モデルナのワクチンを使用している住之江区の「インテックス大阪」の大規模接種会場では通常どおり1回目の接種も受け付けます。

松井市長は「ワクチン供給の見通しが立ち接種体制が整い次第、再開したい。市民や医療従事者にはご迷惑をおかけするが、理解いただきたい」と述べました。

270人 接種キャンセルの病院も… 京都

京都市は6月30日、国からのワクチンの供給量が減少し先行きが見通せなくなっているとして、市内の医療機関に対し、来週以降に配送するワクチンの量をこれまでの半数以下に制限すると通知しました。

これを受けて京都市上京区の堀川病院では、接種の見通しが立たなくなったとして、新規の予約の受け付けを停止するとともに、64歳以下の1回目の接種の予約を一部キャンセルすることを決めました。

キャンセルとなるのは今月12日から27日の期間に接種を予約している270人で、病院では職員が一人一人に電話で連絡をして理解を求めていました。

すでに予約している65歳以上の高齢者と、1回目の接種を受けた人の2回目のワクチンについては確保されているということです。

堀川病院の山田正明事務長は「私たちも早くワクチンを接種できればと考えているし、64歳以下の方は、ようやく接種券が届き予約できたという状況なので、キャンセルとなったことにがっかりしていると思う。今後の状況を聞かれても私たちも『わからない』としか伝えられない状況で、国には今後の見通しを説明する責任があるのではないか」と話していました。

少なくとも約5万人の予約をキャンセル 神戸

神戸市はファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて、国からの供給量が市の希望する量を下回っているとして、少なくともおよそ5万人の予約をキャンセルすると発表しました。

神戸市によりますと、6月以降、ファイザー製のワクチンについて、市が希望する量に対して国からの供給量が半分以下になっていて、7月も希望量を大幅に下回る見込みだということです。

このため、神戸市は1回目の接種を終えた人への2回目のワクチンを確保するため、1回目の予約をした人のうち、7月6日以降のファイザー製のワクチンを使用する集団接種会場と大規模接種会場、7月12日以降の個別接種や施設での接種について、1回目の接種予約をすべてキャンセルすることを明らかにしました。

キャンセルする人数は、市が把握している集団接種と大規模接種だけで、およそ5万人に上るということです。

また、市内のすべての接種会場の1回目の新規予約の受け付けを一時的に停止するとしています。

神戸市では65歳以上の人については7月8日以降、モデルナ製のワクチンを使用する集団接種会場への予約の振り替えを受け付けることにしています。

神戸市の久元市長は「神戸市は、かなり早いペースで接種を進めてきたので大変無念だ。できるだけ早くワクチンが円滑に供給されるよう国にお願いしたい」と述べました。

8月分のワクチン供給「未定」 福岡

福岡市が6月28日に市内約800の医療機関に出した文書によりますと、「ファイザー製のワクチンの供給量がこれまでよりも減る見通しが国から示された」としています。

このため各医療機関で直近2週間のうち接種が多かった週の回数を「目安接種数」として、7月12日以降の予約数はそれを超えない範囲で設定し、8月は2割から3割減らした予約数に制限するよう要請しています。

市によりますと、ワクチンの供給量は先月およそ36万回分でしたが、今月はおよそ35万5000回分に減り、8月は未定だということです。

福岡市の個別接種は現在全体で1日約1万4000回に上っていて、今月からは64歳以下への接種も順次始まります。市は個別接種が減っても集団接種と職域接種により今の接種ペースは維持できるとしています。

一方で、8月以降についてはワクチンの供給量が決まっておらず、接種への影響は不明だとしています。

接種計画 見直し迫られる医療機関も

福岡市西区の「福岡リハビリテーション病院」は、7月12日からの7日間と、26日からの7日間に、それぞれ750回分の予約を受け付けていました。
しかし市から接種回数をそれぞれ684回に抑えるよう連絡があったということです。

病院は、認められない66回分について、今後予約した人たちに連絡して延期してもらうなど調整を進めることにしています。

8月はさらに接種の回数が制限され、480回に減らすよう市から要請されたということです。

病院は、3割も減少すれば2回目の接種の予約ができなくなる人も出てくるおそれがあるとして、ワクチンを確保するよう市に求めています。

医療機関「接種急げと言われたのに…」

福岡リハビリテーション病院の財部勲雄医事係主任は「接種を急ぐよう言われてきたのに実際はワクチンが足りないという通知で、正直現場は混乱している。予約した人たちにも申し訳ない思いだ」と話していました。

大阪 吉村知事「長期の“宣言”地域など 集中的に供給を」

大阪府の吉村知事は河野規制改革担当大臣と面会し、ワクチンの供給量が限られる中、リスクの高い地域で供給のスピードを落とすのは避けるべきだと述べ、長期に緊急事態宣言が出された地域などに集中的にワクチンを供給するよう要望しました。

大阪府の吉村知事は「接種の能力が高まってくると国の供給スピードと逆転することもありうる話で、そういう状況も起きうると思う」と述べました。

そのうえで「いまも大都市中心に感染が広がりつつあることを考えると、リスクの高いエリアでワクチン供給のスピードを落とすのは避けるべきだ。長期的に緊急事態宣言が出されたエリアや、感染が拡大すると全国にも波及するようなエリアを『ワクチン接種重点地域』に指定し、できるだけ早く供給することが必要だ」と述べ、長期に緊急事態宣言が出された地域などに集中的にワクチンを供給するよう要望しました。

これに対し河野大臣は「高齢者分のワクチンは6月末までに送り出しているので、そこは全力で打っていただき、64歳以下の人の分については 7、8月の輸入量をベースに、いろいろと意見を伺いながらしっかりやっていきたい」と述べました。

今後の配送スケジュールは?

厚生労働省が示しているファイザーのワクチンの今後の配送スケジュールです。

全国の自治体に向け、7月5日から18日にかけて合わせて1287万回分、19日から8月1日にかけて、合わせて1240万2000回分をそれぞれ配送します。

厚生労働省は8月以降配送する量を具体的に示していませんが、8月2日から15日と16日から29日にかけてもそれぞれ同量程度を配送する予定で、週明けにも周知したいとしています。

一方、一部の自治体で希望した量が届かず、予約の受け付けを延期する動きなどが出ていることについて、厚生労働省は「自治体としては8月以降に届く量が予測できず、不安に感じていると思う。できるだけ早く具体的な配送量を示すので、ワクチンが入ってくる量に応じて接種を進めるスピードを調整してほしい」としています。

政府「9月末までに希望者全員分は確保可能だ」

新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、ファイザーのワクチンの供給が5月から徐々に本格化し、6月末までにおよそ1億回分が供給されました。

今後の供給見込みは、7月から9月末までの3か月でおよそ7000万回分、10月以降がおよそ2000万回分で、政府は今月からファイザーのワクチンの供給は減少することになるとしています。

ただ、9月末までに5000万回分のモデルナのワクチンの供給が見込まれており、政府は9月末までに希望するすべての人が接種するのに必要なワクチンは確保できるとしています。

河野大臣「職域接種 申請が想定を超えた」

新型コロナウイルスワクチンの職域接種をめぐり、政府は、予想以上の要望があったとして新規の申請受け付けを休止し、すでに申請があった分の内容を精査していますが、これまでに承認されたのはおよそ半数にとどまっています。

河野規制改革担当大臣は記者会見で「7月中のスタートは厳しいと認識していただきたい。申請が想定を超えたのは事実で、『見通しが甘かった』と言われればおわびするしかない」と重ねて陳謝しました。

また自治体に配送するファイザーのワクチンについて「供給できる量が希望する量の3分の1なので、手持ちの在庫をうまく使いながら供給量に応じた接種のスピードをお願いしたい」と述べました。