東京「4週間後 1日1000人超も」小池知事 リモート出席で危機感

東京都のモニタリング会議で、専門家は都内の新規陽性者数の増加比が大きく上昇していて「感染が再拡大していると考えられる」と指摘しました。現在の増加比が続くと、4週間後には1日に1000人を超えるとして急激な感染拡大に強い危機感を示しました。

モニタリング会議には6月30日に退院した小池知事もリモートで出席し、かすれた声で感染防止対策の徹底を呼びかけました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は6月30日時点でおよそ503人となり、およそ418人だった1週間前・6月23日時点の1.2倍になりました。

新規陽性者数の増加比は3週続けて大きく上昇していて、専門家は「感染が再拡大していると考えられる」と指摘しました。

また、現在の増加比が続くと2週間後の7月14日には1日およそ724人となり、3回目の緊急事態宣言が出された4月下旬とほぼ同じレベルに、さらに、4週間後の今月28日には1000人を超えておよそ1043人と、年明けの第3波とほぼ同じレベルになると分析しました。

そして、人出の増加や感染力が強い変異ウイルスの影響を踏まえると第3波を超える急激な感染拡大が危惧されると強い危機感を示しました。

一方、6月30日時点で入院患者は1553人と1週間前の先月23日より252人増えました。

また、重症の患者は3人増えて47人で高い値で推移していると指摘しました。

専門家は新規陽性者数が増えれば若い世代や中年であっても入院が必要な中等症患者が一定の割合で発生するほか、重症化する患者も増加するとして、医療提供体制がひっ迫するおそれがあると危機感を示しました。

退院した小池知事がリモート出席 対策徹底呼びかけ

6月30日に退院した東京都の小池知事は、7月1日のモニタリング会議にリモートで出席し、かすれた声で感染防止対策の徹底を呼びかけました。

過度の疲労のため6月22日から入院していた小池知事は6月30日に退院し、7月1日からは登庁せずにテレワークで公務を行っています。

1日の会議には自宅からリモートで出席しました。

小池知事は、かすれた声で「コロナ対策の真っただ中でありながら、公務を離れざるを得なくなり、多くの方にご心配とご迷惑をおかけしました」述べました。

一方「感染が再拡大していると考えられる」という専門家の指摘を踏まえ、都民や事業者に対し「これ以上の再拡大を何としても食い止めるためにも、特に、夜間の人流の抑制、基本的な感染防止対策の徹底、そしてテレワークに改めてご協力いただきたい。総力戦で戦い抜いていこうではありませんか」と呼びかけました。

専門家「病床ひっ迫の可能性非常に高い かなり警戒」

モニタリング会議のあと、東京都医師会の猪口正孝副会長は都内の医療提供体制の今後の見通しについて「デルタ株の感染のスピードを考えると決して楽観できない」と述べました。

そのうえで「まだ、デルタ株の重症化率がよく分かっていない。高いということになると、感染のスピードとともに一気に病床がひっ迫してくる可能性が非常に高いので、かなり警戒をしている」と述べ強い懸念を示しました。

さらに「新型コロナウイルスに感染した患者を診る病院がワクチンの個別接種や集団接種を行い、職域接種も行っていて余力がない状況だ。このあたりも考慮し、感染者を少なくしていただきたい」と述べ、感染対策の徹底を呼びかけました。

「夜間の人出の抑制が重要局面」

モニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内の繁華街の夜間の人出は第4波に突入した3月末ごろの水準に達しているとして「感染の再拡大が近く第4波を上回る可能性がある。夜間の人出を抑えていくことが非常に重要な局面になってくる」と指摘しました。

西田センター長によりますと、緊急事態宣言が解除されてから6月30日までの10日間の都内7つの繁華街の人出は、夜間で21.5%増加し、第4波に突入した3月末ごろの水準に達したということです。

また、都内では、緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に移行し、酒類の提供が可能となりました。

こうした中、西田センター長によりますと、夕方から午後8時までの人出の増加が顕著なほか、飲食店に対して午後8時までの営業時間の短縮要請が行われているものの午後8時から午前0時までの時間帯も増加が目立つとしています。

また、昼間の人出も緊急事態宣言が解除されてから5.1%増加しています。

西田センター長は「第4波より速いペースで感染状況が悪化する可能性がある。今週も増加が続くと近く第4波を上回る感染の再拡大となる可能性があり、人流の増加を早期に食い止める必要がある」と指摘しました。

さらに「夜間の人出を抑えていくことが非常に重要な局面になってくる」と述べました。
7月1日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、6月30日時点で7日間平均が502.7人となり、1週間前・6月23日時点の418.0人よりおよそ84人増加しました。

増加比は、前の週のおよそ120%となり、3週連続で大きく上昇しました。
先月28日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は
▽20代が29.0%でした。

前の週に続いて20代が最も多くなりました。

次いで
▽30代が19.3%
▽40代が15.9%
▽50代が12.5%
▽10代が10.7%
▽60代が4.5%
▽10歳未満が4.1%
▽70代が2.3%
▽80代が1.4%
▽90代以上が0.3%でした。

50代以下で全体のおよそ92%を占めています。

また、10代以下の割合が前の週より4ポイント増えておよそ15%に上昇していて、専門家は「保育園や学校などでの感染防止対策を改めて徹底することが急務だ」と指摘しました。

一方、65歳以上の高齢者は、今週は184人で前の週より14人増えましたが、割合は0.9ポイント減って5.4%でした。
感染経路がわかっている人では、同居する人からの感染が50.9%と最も多く、次いで職場が14.7%、高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が14.3%でした。

今週は、施設での感染が増えていて、特に、小中学校や高校などでの感染例が複数、報告されています。

施設内での感染は、
▽10代未満では前の週から12.7ポイント増えて42.2%、
▽10代では前の週から15.7ポイント増えて45.4%と大きく上昇しました。

一方、施設での感染した人のうち、80代以上はおよそ35ポイント減って25.7%でした。

また、会食は7.3%とほぼ横ばいだったものの、専門家は「マスクなしの会食に参加して参加者全員が感染した例やバーベキューに参加して複数の人が感染したケースが見られた」と指摘し、マスクを外す機会が多い会食での感染に警戒するよう呼びかけました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は6月30日時点で300.9人で、前の週からおよそ40人増えました。

増加比は、6月30日時点で115.4%と前回から6.2ポイント上昇しました。

専門家は「感染経路がわからない人の数は3週連続して増加している。感染経路が追えない潜在的な感染拡大が危惧される。第3波では増加比が120%を超えたあと急激に感染が再拡大しており今後の動向に十分警戒する必要がある」と分析しました。

そのうえで「再拡大を回避するためには感染経路がわからない人の増加比をさらに低下させる必要がある。これまで以上に人の流れの増加を抑制するとともに、感染防止対策を徹底することが必要だ」と警戒を呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合はおよそ59%と、前の週と比べて横ばいでした。

年代別では、20代から50代、それに70代で50%を超えています。

専門家は、「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路がわからない人とその割合も高い値で推移している可能性がある」と指摘しています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は6月30日時点で5.1%となり、前の週の6月23日時点と比べて0.5ポイント上昇しました。
入院患者は6月30日時点で1553人と6月23日の時点より252人増加していて、専門家は、変異ウイルスのスクリーニング検査では「N501Yよりもさらに感染力が高いとされるL452Rの陽性率も上昇している」としたうえで、今後について、「急激な新規陽性者数の増加により、医療提供体制がひっ迫するおそれがある」と指摘しました。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ80%を占めていて、専門家は「およそ1か月前の65%前後から上昇傾向だ」と分析しています。

年代別で最も多いのは、50代でおよそ20%、次いで、40代のおよそ19%などとなっています。

また、30代以下も全体のおよそ30%を占めていて、専門家は「6月以降、若年、中年層の割合が増加している。この傾向が続けば若年・中年層の中等症患者が増加し、遅れて重症患者が増加する可能性がある。あらゆる世代が感染によるリスクを持っている意識を強く持ち、人と人との接触機会を減らし、基本的な感染防止対策などを徹底するよう啓発する必要がある」と呼びかけています。
都の基準で集計した6月30日時点の重症患者は6月23日時点より3人増えて47人でした。

男女別では、男性34人、女性13人です。

また、年代別では
▽50代と70代が最も多く、それぞれ15人
▽次いで60代が8人
▽80代が4人
▽40代が3人
▽20代が2人でした。

専門家は「あらゆる世代が感染によるリスクがあることを啓発する必要がある」と指摘しています。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は6月30日時点で178人で、6月23日時点と比べて27人減りました。

ただ、専門家は「急激な重症患者数の増加は通常の医療も含めて医療提供体制のひっ迫を招くため、厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

また、6月30日時点で陽性となった人の療養状況を先6月23日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は242人増えて954人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は253人増えて1134人
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は97人増えて793人と
すべてにおいて増加しています。

「療養が必要な人」全体の数は844人増えて6月30日時点で4434人となり専門家は「依然として高い水準で推移している」と指摘しています。

また、6月28日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した29人が亡くなりました。

死亡した29人のうち、70代以上が25人を占めています。