“ECMO装着 国内最長189日間”の男性 病状回復で取り外す 福岡

去年12月に新型コロナウイルスの感染が確認され、半年にわたってECMO=人工心肺装置を着けて治療を受けていた福岡県の50代の男性の病状が回復し、今月中旬、装置を取り外すことができました。回復した新型コロナの患者が装着していた期間としては国内で最長だということです。

福岡大学病院救命救急センターによりますと、福岡県内に住む50代の男性は、去年12月初めに新型コロナの感染が確認され、重い肺炎のためECMOと呼ばれる人工心肺装置を着けて治療が続けられてきました。

そして、今月中旬、病状が回復し、装置を取り外すことができたということです。

新型コロナの治療では一般的にECMOの装着は1か月をめどに行われますが、今回は189日に及び、全国の重症患者の治療について情報をまとめている「ECMO-net」によりますと、回復した新型コロナの患者が装着した期間としては国内で最長だということです。

男性は今も人工呼吸器を着けていて話すことはできませんが、筆談で「病院のおかげで今、生かされてリハビリが出来ています。感謝 ありがとうございます。リハビリ子供でも出来るわって事を懸命にやっています。これからもがん張るぞ!」と心境を明かしました。

この病院は去年春から新型コロナ患者のECMOを使った治療に特化して取り組んでいて、期間が長くなった際の合併症への対処法など、経験の積み重ねによる治療技術の向上が生かされたとしています。

治療責任者「ECMOの治療技術 明らかに発展」

今回の治療の責任者で、福岡大学病院救命救急センター長を務める石倉宏恭教授は、この1年余りの治療技術の向上が生かされたとしています。

今回の治療について石倉教授は「本来、ECMOを使った治療は1か月が1つのめどだが、患者の状態から必ず改善すると思っていた。試行錯誤でやってきて、誰も経験のないことだった」と話しました。

また、この1年余り、新型コロナの患者のECMOを使った治療に特化して取り組んできたことに触れ、「何度か諦めかけたが、これまでの症例から学んだことを生かし、できることがないかくまなく検討してチャレンジした。ECMOの治療技術は明らかに発展した」と述べました。

そして、「ここまで頑張ったのは患者本人で、われわれは少しサポートしただけだ。次の目標は人工呼吸器からの離脱で、いつかは歩いて退院してほしい」としたうえで、「これからもさらにレベルアップして、助かる命を助けたい」と話していました。

治療189日 NHK取材班が記録

189日に及んだECMOを使った治療の様子をNHKの取材班が記録していました。

今回、ECMOの離脱ができた患者は、ことし2月、NHKが福岡大学病院救命救急センターで取材を許可された際、新型コロナ専用の集中治療室でECMOを使った治療を受けていました。

重い肺炎を起こし、傷んでしぼみかけた肺にわずかに圧力をかけて開こうとする治療や、細菌感染など、治療の長期化に伴う、さまざまな合併症への対処が続いていました。

ECMOの治療が始まってすでに2か月余りがたっていて、この取材の直後、ウイルスの検査では陰性となりましたが、ECMOの装着は必要で、センター内の一般病室で治療が続けられていました。

センター長の石倉宏恭教授は、当時の取材で「炎症で真っ白だった肺がわずかに改善し、少しずつ酸素を取り込める状態になりつつある。なかなか改善せず難しいが、頑張らなければ」と話していました。