東京などコロナ感染再拡大懸念 専門家「感染者減る要素ない」

東京都内では25日、新たに562人の新型コロナウイルスへの感染が確認され、3日連続で前の週の同じ曜日から100人以上増加するとともに、6日連続で前週の同じ曜日を上回りました。さらに1週間平均で感染者数を見てみると東京都などでは再び増加傾向がみられ、感染の再拡大が懸念される状況になっています。専門家は「リバウンドの兆候が見え、今後しばらくは感染者数が減っていく要素が見られない」と指摘し、改めて対策の徹底を呼びかけています。

NHKは各地の自治体で発表された感染者数をもとに、1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較してまとめました。

全国 6週連続で減少も“ペースは鈍化”

全国では
▽先月27日までの1週間では前の週に比べて0.77倍
▽今月3日は0.69倍
▽今月10日は0.72倍
▽今月17日は0.74倍
▽24日まででは0.94倍となっています。

感染者数は6週連続で減少が続いていますが減少のペースは鈍ってきていて、1日当たりの新規感染者数はおよそ1452人となっています。

首都圏で“再増加”

一方、首都圏では感染者数が再び増加する傾向が見られます。
東京都内では25日、新たに562人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたほか、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスの感染確認が1日の発表としてはこれまでで最も多い68人でした。こうした感染状況について専門家は「リバウンドの兆候が見え、今後しばらくは感染者数が減っていく要素が見られない」と指摘しています。

専門家「リバウンドの兆候 感染者数が減る要素ない」

新型コロナウイルス対策に当たる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「全国では下げ止まりの状態が見られ、東京都に関してはリバウンドの兆候が見えてきている。東京都では緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のもとでも人流がずっと増加傾向になっているうえ、感染力が強いと指摘されるインドで確認された変異ウイルス『デルタ株』の増加も報告されていて、少なくともこれから1、2週間は増加が続くと考えておかなければならない。周辺の埼玉県や神奈川県などでも増加が心配される」と指摘しています。

さらにオリンピックを控えた東京での感染状況の見通しについて舘田教授は「今後しばらくは感染者数が減っていく要素が見られない。東京オリンピックの観客数は重点措置が解除された時に上限が1万人という設定になっているが、今の段階では重点措置の期限の来月11日に向けて本当に感染者数が減少していくか非常に難しい状態だ。ワクチンの接種をできるだけ早く進めていきながら、特に夜の人流を抑えるなどの感染対策を徹底することが大事になる。また、海外からたくさんの選手や関係者が入ってくるので水際対策や一定期間の隔離、それに定期的な検査を行ってとにかく感染を持ち込ませない対策が重要だ」と話しています。

東京都 “増加に転じる”

「まん延防止等重点措置」が適用されている10都道府県の、1週間平均での感染者数の傾向について前の週と比較した結果です。

東京都は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.82倍
▽今月17日は0.99倍でしたが
▽24日まででは1.14倍と増加に転じ
1日当たりの新規感染者数はおよそ440人と多くなって来ていて、感染の再拡大が懸念される状況になっています。

千葉県 3週連続で“増加傾向”

千葉県は今月初めまでは3週連続で減少していましたが
▽今月10日までの1週間では前の週の1.03倍
▽今月17日も1.03倍
▽24日まででは1.09倍と3週連続で増加傾向で
1日当たりの新規感染者数はおよそ111人となっています。

埼玉県 “増加に転じる”

埼玉県は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.81倍
▽今月17日は0.77倍と5週連続で減少していましたが
▽24日まででは1.15倍と増加に転じていて
1日当たりの新規感染者数は84人となっています。

神奈川県 6週連続減少も“ほぼ横ばい”

神奈川県は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.98倍
▽今月17日は0.92倍
▽24日まででは0.95倍と6週連続で減少していますが
ほぼ横ばいで、1日当たりの新規感染者数はおよそ181人となっています。

愛知県 5週連続で減少

愛知県は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.65倍
▽今月17日は0.54倍
▽24日まででは0.80倍と5週連続で減少し
1日当たりの新規感染者数はおよそ83人となっています。

大阪府 8週連続減少も“ほぼ横ばい”に

大阪府は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.74倍
▽今月17日は0.68倍
▽24日まででは0.94倍と8週連続で減少しているものの、ほぼ横ばいになってきていて
1日当たりの新規感染者数は98人となっています。

兵庫県 6週連続で減少

兵庫県は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.69倍
▽今月17日は0.58倍
▽24日まででは0.63倍と6週連続で減少していて
1日当たりの新規感染者数はおよそ22人となっています。

京都府 6週連続で減少

京都府は
▽今月10日までの1週間では0.93倍
▽今月17日は0.52倍
▽24日まででは0.61倍と6週連続で減少していて
1日当たりの新規感染者数はおよそ13人となっています。

福岡県 6週連続で減少

福岡県は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.49倍
▽今月17日は0.64倍
▽24日まででは0.82倍と6週連続で減少していて
1日当たりの新規感染者数はおよそ33人となっています。

北海道 4週連続で減少

北海道は
▽今月10日までの1週間では前の週の0.56倍
▽今月17日は0.52倍
▽24日まででは0.51倍と4週連続で減少していて
1日当たりの新規感染者数はおよそ49人となっています。

「緊急事態宣言」沖縄県 3週連続で減少

一方、全国で唯一、緊急事態宣言が出されている沖縄県では先月23日に緊急事態宣言が出されたあとも増加していましたが
▽今月10日までの1週間では前の週の0.71倍
▽今月17日は0.60倍
▽24日まででは0.68倍と3週連続で減少しています。

しかし人口当たりの感染者数は依然、高い水準で、1日当たりの新規感染者数はおよそ76人となっています。

西村経済再生相“早い段階での対応検討”

東京で新型コロナウイルスの感染再拡大の兆候が出ていることについて、西村経済再生担当大臣は直ちに緊急事態宣言を出す状況にはないとする一方、酒類の提供停止などの強い措置も念頭に早い段階で対応を検討していく考えを示しました。

西村経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で「人流が増え感染者が増えてくることを想定していたとは言え、高い警戒感を持って分析を進めている」と述べ、感染者数に加え重症や中等症の患者の推移などの分析を進めていると説明しました。

そのうえで「直ちに緊急事態宣言を出すなどという状況ではないが、必要に応じて酒類の停止なども含めた強い措置を取ることを頭に置きながら進めていきたい。医療の提供体制をより重視して先手先手、早め早めの対応をすることが大事だ」と述べました。

一方、西村大臣は東京 銀座で60代以上の人の流れが増加していると指摘し「ワクチンを接種し安心して出ているのではないかという感じがするが、1回打って安心するのではなく2回打ってから2週間たって効果を持つことを頭に置いて行動してほしい」と呼びかけました。

田村厚労相“夜間の滞留人口増加 より感染拡大なら宣言も”

東京について、田村厚生労働大臣は夜間の滞留人口の増加が続いている可能性が高いと指摘し、さらに感染が拡大する可能性があれば緊急事態宣言を出すことも念頭に厳しい対応が必要だという認識を示しました。

田村厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、東京の状況について「夜間の滞留人口が緊急事態宣言を解除する以前から増えていて、そのまま増加が続いている可能性が高い。感染が増えていくおそれは認識している」と指摘しました。

そのうえで「より感染が拡大する可能性があれば緊急事態宣言を再度発令することも十分に念頭に置いている。まだワクチンの接種が国民全体に行きわたっているわけではないので、感染拡大の可能性はある。厳しい対応を念頭に置いて対策を組まないといけない」と述べました。