「腕にしびれが 後遺症か 自分の将来は…」22歳 運動部 大学生

取材で出会った男子大学生は、体格が良く一見健康的な青年でした。

しかし、新型コロナウイルスの後遺症と見られる症状に悩んできたといいます。

「手すりを使わないと階段が降りられない」
「長時間ペンが持てない」

今も腕にしびれが残り、将来への不安を感じています。

持病もなく体力には自信

千葉県内に住む22歳の男子大学生です。

運動部に所属し、筋肉質でがっしりとした体型。

持病もなく、もともと体力には自信がありました。

しかしことし3月、新型コロナに感染しました。

思い当たるのは友人宅での食事

思い当たるのは、緊急事態宣言が出されていた3月中旬の友人2人との食事です。

大学は春休みで、感染対策のため部活も休止していました。

実家への帰省は取りやめ、外出も控えていたといいます。

そんななか「少人数なら大丈夫だろう」と友人の家でおよそ3時間たわいもない話をしながら過ごしました。
大学生
「消毒も結構こまめにしていました。軽くごはんを食べておしゃべりをして。その時はマスクを外していたんですけど。あのころは、その程度と思ってしまった」

数日後 友人の感染判明 自分も変異ウイルスに感染

数日後、一緒に食事をした友人が発症したという連絡が入ります。

友人は変異ウイルスに感染していました。

検査の結果、自分も変異ウイルスに感染していることがわかり、大学病院に入院することになりました。

しかし症状はなく、この時はまだそれほど深刻には考えていませんでした。
大学生
「ニュースでは聞いていたけど、周りでまだ全然かかっている人がいなかったので、まさか自分がかかるかとびっくりしました。さらに変異株で、とても珍しいことになってしまったなと」
その後肺炎を発症し、一時息苦しさに悩まされましたが、およそ2週間で退院しました。

本当に大変なのは退院後 手足に力入らず

退院できたことで安心した男性。

ところが、本当に大変だったのはその後でした。
大学生
「退院の3日後くらいから腕にしびれが出て、その後すぐに腕の力が入らなくなって握力が落ちました。最初は右腕だけだったんですけど、それが左手にいって、足にも広がりました」。

手すりを使わないと階段降りられず

最初は寝違えたのかと思ったぐらいで、すぐ治ると考えていました。

しかし握力は半分以下にまで低下しました。

足にも力が入らず、手すりを使わないと階段を降りることが出来ません。

整形外科や神経内科の医師にも診てもらいましたが明確な病名はつきませんでした。

その後医師からは、同じ様な神経系の症例が海外で報告されているとして、「新型コロナの後遺症とみられる」と伝えられました。

今後症状が良くなるかも見通しが立たず、自分に合う治療薬もありません。

ビタミン剤だけを処方され、経過をみるしかありませんでした。

大学生
「診断がつくとその病気について調べたりして、治るのかどうか今後どうしたらいいのかがよく分かると思います。しかし診断がつかず分からないとなると、そもそも治るのかや悪化するのかも分からない。後遺症としてずっと残っていくのではないかという怖さがありました」

右腕に残るしびれ「常にピリピリしている」

症状は徐々に改善してきましたが感染からおよそ3か月がたった今も右腕のしびれが残っています。

自信を持って取り組んでいた運動部の活動にもまったく参加できていません。

長時間ペンを持って文字を書くとしびれが強くなってきて、勉強にも集中できなくなっています。

大学生
「常にピリピリしている感じがあって、体勢によっては、ちょっと痛いなって思うくらいに腕がしびれます。その時は腕を回したりして、治るのを待つんです。学校以外の時間は、できるだけ疲れないようずっと家にこもっています。コロナにかかっていた時のよ うな隔離生活が、ずっと続いてる感じなんです」

「このままだと進路にも影響…」将来への不安

この症状がいつまで続くのか・・・。

卒業後は大学院に進学し、将来は研究者の道に進みたいと考えていました。

このままだと進路にも影響してしまうかも知れない。

今はただ将来への不安を感じています。

大学生
「当たり前だと思っていた今後の生活が、不自由なものになってしまって、将来は仕事の面とかでも困ってくるし、自分の想像していた将来像が結構、大きく変わってしまう。重症化の可能性が低いと言われる若い人でも、何らかの後遺症が残ってしまい今後の生活が大きく変わってしまう可能性がある。十分な脅威だと思うので、ぜひ同じ世代の人たちに伝えたいです」

診察した医師「後遺症は分からないことが多い」

国の研究班が新型コロナで入院した246人に診断から半年後の症状についてアンケート調査をしたところ、「力が入りづらい(筋力低下)」と答えた人は9%いたということです。
男子大学生を診察した千葉大学病院呼吸器内科の坂尾誠一郎医師はコロナの後遺症については、まだ解明されていないことが多いとしています。
千葉大学病院呼吸器内科 坂尾誠一郎医師
「何が本当に後遺症なのか、コロナに関係があるのかないのかというところもまだ分からないことが多いです。私が外来で診察している患者は例えば味覚障害とか、嗅覚障害とか、だるさとか様々な症状がありますが、日常生活に支障が出るようなケースはそれほど多くありません。ただし、彼の場合は日常生活に影響が出た典型的なケースで『若い世代だから大丈夫』ということは全くないです」
この病院では、呼吸器内科や感染症内科のほか、漢方の専門家なども協力して後遺症とみられる症状を訴える患者のフォローにあたっています。
千葉大学病院呼吸器内科 坂尾誠一郎医師
「後遺症についても、これからまた1年、2年たてば必ず見えてくるところがある。だから分かってきたことをなるべく早め早めに患者さんに伝えてあげるようにすることが、僕らの一番大事な役目だと考えています」


(取材:千葉局 記者 櫻井慎太郎)