ワクチン職域接種が本格化 首相「企業や大学での接種 加速を」

新型コロナウイルスワクチンの職域接種が21日から本格的に始まりました。これを受けて菅総理大臣は、東京都内の接種会場2か所を視察し、企業や大学での接種をさらに加速させたいという考えを示しました。

新型コロナウイルスワクチンの企業や大学などによる職域接種が21日から本格的に始まったのを受けて、菅総理大臣は21日午後、東京都内2か所の接種会場を視察しました。

このうち千代田区の日本郵政グループの本社では、窓口業務を担当している従業員が接種を受ける様子を視察しました。

続いて菅総理大臣は、港区にある「虎ノ門ヒルズ」の接種会場を訪れました。

この会場では、ビルに入るテナントの従業員や、マンションに入居する住民らにも接種を行うということで、菅総理大臣は接種の流れや予約の状況などについて説明を受けました。

このあと菅総理大臣は記者団に対し「接種によって、安心して仕事ができるようになったという話も伺った。企業や大学での接種をさらに加速化させていきたい」と述べました。

そのうえで「若い人、働き盛りの人も、一日も早く接種ができるよう、政府として取り組んでいかなければいけないという思いを新たにした」と述べました。

トヨタ 取引先の社員なども接種対象に

愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の本社では外部との接触の機会が多い警備員などが接種を受けました。今後、自社で職域接種を行うのが難しい取引先の社員にも接種を進めるとしています。

職域接種は21日午後1時半から希望者を対象に豊田市にある本社の体育館で始まりました。

当面は、外部との接触が比較的多い警備員や通勤バスの運転手などが対象だということで、会社の産業医が問診を行ったあと、診療所の看護師が順番に接種を進めていきました。

トヨタは今後、自社の社員に加え、職域接種を行うのが難しい豊田市内の取引先の社員なども接種の対象に含めるとしていて、9月10日までに合わせておよそ8万人が2回の接種を終えることを想定しています。

会場では、接種を効率的に進めるため、車づくりで培ったむだを排除して生産性を高める「トヨタ生産方式」を活用し、レイアウトを工夫するなどしていて、要請があれば、グループ以外の企業などにもノウハウを提供していきたいとしています。

トヨタ自動車の担当者は、「ほかの企業とも一丸となって、1日でも早く安全で安心な暮らしを取り戻せるようにしたい」と話していました。

イオン 接種会場 全国約60か所まで増やす方針

流通大手のイオンは千葉市美浜区にあるショッピングモールで、通常イベントなどに使っているホールを特設会場にして21日から職域接種を始めました。

この会場では社員のほか近隣の店舗やテナントの従業員が接種することになっていて、21日は従業員などが次々と訪れ、問診に続いてワクチン接種を受け用意されたいすに座って経過観察を行っていました。

この会場では一日当たり最大700人の接種が可能で、2か月間程度でおよそ6000人の対象者のうち希望者について2回分の接種を終えたいということです。

50歳のパートの女性は「お客さんとも接する機会が多いので、会社がこういう機会を提供してくれてよかったです」と話していました。

イオングループの接種対象者は本体だけで全国でおよそ50万人に上るということで、今後、接種会場を全国およそ60か所まで増やして対応する方針です。

イオンの渡邉廣之執行役は「ワクチンの接種率を引き上げるために、50万人の従業員の接種を推進することで地域全体の接種率を上げて地域の安心安全に寄与していきたい」と話していました。

楽天 できるだけ早く近隣住民も対象に

職域接種を始めた企業の中には、希望する従業員やその家族への接種を効率的に進めて、できるだけ早く近隣住民に対象を広げようというところもあります。

IT大手の楽天グループは、神戸市が実施している大規模接種の運営にかかわっていて、21日から都内の本社で始まった職域接種でもこのノウハウを生かしています。

受け付けや書類の確認、検温、問診の案内など一連の対応を細かく分け、それぞれに担当者を置いているほか、医師によるオンラインの問診も活用しています。

会社によりますと、待ち時間がなければ受け付けから接種までにかかる時間はおよそ4分で、一日当たり最大5000人の接種が可能だということです。

会社では、希望する従業員やその家族への接種を終えたあとは、できるだけ早く近隣住民の希望者にも対象を広げたいとしています。

楽天グループの百野研太郎 副社長は「当初から希望する近隣住民への接種を想定して1日当たり5000人という規模を目指している。医療従事者の役割を最小にしながら、対応の能力をあげていきたい」と話しています。

官房長官「きょうまでに開始の会場数は266」

加藤官房長官は午後の記者会見で「すでに開始している企業などを含めて、きょうまでに接種が開始される会場数は266会場で、これらの会場での接種予定人数はおよそ263万人と聞いている」と述べました。

また職域接種の申請は「今月18日の午後5時時点で、3479会場から申請があり、接種を予定している人の人数は、およそ1373万人となっている。このうち、大学からの申請は179会場で、接種予定人数は、およそ134万と聞いている」と述べました。