視覚障害ある人の4割「ソーシャルディスタンスわかりづらい」

視覚に障害のある人たちのおよそ4割が「ソーシャルディスタンスがわかりづらい」と感じるなど、コロナ禍の新しい暮らしに戸惑いを感じているという調査結果がまとまりました。

この調査は、盲導犬の普及活動を行う日本盲導犬協会がことし2月末までのおよそ1か月間、盲導犬のユーザーで視覚障害のあるおよそ230人を対象に行い、外出したときの不安や困りごとについて聞き取りを行いました。

それによりますと、複数回答の結果「ソーシャルディスタンスがわかりづらい」が41%と最も多く「周囲にサポートを頼みづらい」が22%、「商品などを触るため周囲の目が気になる」が21%などとなりました。

また「声かけや周囲のサポートが減った」も18%となっていて、感染対策が求められる中、新しい生活様式に戸惑いを感じていることが浮き彫りになりました。

日本盲導犬協会視覚障害サポート部の金井政紀管理長は「新しい生活様式が求められる中で、視覚障害者には声かけなど周囲のサポートが必要です。『消毒液もう少し左ですよ』や『並ぶ位置もう一歩前ですよ』というちょっとした声かけが大変助かります」と話しています。

人出や声かけ減で横断歩道が不安

新型コロナウイルスの感染拡大以降は周囲の声かけが減り、外出のときには命の危険を感じる機会が増えたという人もいます。
都内で暮らす山本誠さん(53)は中学生のときに視力を失い、12年前から盲導犬と共に生活をしています。

ふだんの買い物では店に入ってもアルコール消毒液の場所が分かりにくいうえ、レジの前に並ぶときには前の人との距離感がつかめず戸惑うことが多くなったといいます。

山本さんがいちばん不安なのは横断歩道を渡るときです。

信号機が音が出るものでないと渡るタイミングが分からないからです。

犬は色を感じる目の細胞が人と比べて非常に少なく、信号の色を見分けるのは難しいと言います。
そこで山本さんは車の音や人の足音などを頼りに渡るかどうかを判断しています。

それでも感染の拡大前は信号待ちをする人が渡るタイミングを教えてくれるなど、不安は感じることはあまりありませんでした。

ところが感染拡大以降は人出も減ったうえ、声をかけてくれる人が少なくなったといいます。

横断歩道を渡ろうとしたところ近くで急ブレーキを踏む音が聞こえて慌てて歩道に戻るなど、命の危険を感じることがあったということです。

山本さんは「うかつに渡ろうとしてまだ赤だったとか、ヒヤッとすることがあります。以前のように『大丈夫ですか?』や『青ですよ』などと気軽に声をかけてもらえると安心します」と話しています。