重点措置 酒類提供午後7時まで可能も 知事の判断分かれる

緊急事態宣言の解除に伴い、政府は、新型コロナウイルス対策の基本的対処方針を変更し、まん延防止等重点措置に移行した地域では、一定の要件を満たした飲食店で酒類の提供を午後7時まで可能とした一方、地域の感染状況に応じ、知事の判断で制限することを可能とする方針などを盛り込んでいます。

これを受けて、それぞれの知事が検討を進めていますが、地域によっては酒類の提供を認める一方で、「判断のしようがない」といった声も上がっています。

政府「知事の判断でさらに制限も」

政府が変更した新型コロナウイルス対策の基本的対処方針の変更案では、緊急事態宣言が解除される地域でも、感染対策の緩和は段階的に行い、必要な対策は「ステージ2相当」以下となるまで継続するとしています。

そのうえで、まん延防止等重点措置の適用地域の飲食店に対し、午後8時までの営業短縮を引き続き要請するほか、酒類の提供については、一定の要件を満たした飲食店で午後7時まで可能としています。

一方で、要件を満たさない店舗には酒類を提供しないよう要請することや、地域の感染状況に応じ、知事の判断でさらに制限できるとし、要請に応じている店舗との公平性を保つことができるよう、特別措置法に基づく命令や過料など適切な運用を図るよう求めています。

また、営業時間の短縮要請に応じた事業者への協力金を迅速に支給するため、都道府県の体制を強化するとしています。

さらに、飲食店などで感染者と接触した場合に追跡できるようにするため、政府がQRコードの活用を検討するとしています。

東京都 小池知事「都の措置決定はあすに繰り延べ」

東京都の小池知事は、今月21日から始まる東京都のまん延防止等重点措置について、「国の基本的対処方針の詳細な部分がまだ不明なところもある。事業者の皆さんの段取りを考えると本当はきょうにもさまざま都としての措置を決めておきたかったが、あすに繰り延べさせていただいた」と述べ、18日に公表したいという考えを示しました。

そして、「こういう中でも事業者の皆さんがいろんな工夫をしながら、圧倒的多数のお店の方々が歯を食いしばって要請にご協力いただいている。状況がこれまでと変わって改善している部分もあるので、それらを加味しながら感染のリバウンドをできるだけ抑えつつ、ご協力、ご理解を得られるような対策を講じていきたい」と述べました。
今回、政府は、酒類の提供は午後7時まで可能とする一方で、感染状況に応じて知事の判断で提供を停止できるとしました。これは裏を返せば、国よりも強い措置、つまり都が独自に全面的な酒の提供自粛を求めた場合、批判は都が一身にうけることを意味します。そのため、どういう要請なら協力が得られるのか、難しい判断を迫られています。

都は、今の緊急事態宣言で酒を提供する飲食店への休業要請に踏み切り、感染の抑え込みに効果があったと分析しています。このため、重点措置でも酒の提供自粛を求めたいという意向を幹部は持っていました。来月開幕するオリンピックを前に再拡大は何としても避けたいからです。

一方で、飲食店に対する要請は、時短も含めると半年以上に及び、強い不満の声が寄せられています。できるだけ理解を得ながら、効果も上げられる策はなにか。都は、18日に措置内容を公表したい考えです。

大阪 吉村知事「判断のしようがない」

大阪府の吉村知事は、政府が大阪への緊急事態宣言を解除し、まん延防止等重点措置への移行を決定した場合は、ただちに府の対策本部会議を開いて、酒類を提供する飲食店への休業要請などの取り扱いなど今月21日以降の措置を決定する考えでしたが、府は17日の開催を見送り、18日に会議を開くことを決めました。

これについて記者会見で「きょうの夕方に会議を開催する予定だったが、酒類を提供する飲食店の取り扱いで、国の基本的対処方針の中身が明確になっていないところがある。判断のしようがないというのが正直なところだ」と述べました。

そのうえで「感染対策を徹底している店については、お酒の提供を認めていくのが筋ではないかと思っている。一方で、感染をもう一度再拡大させてはいけないという思いもある。その板挟みの中で、知事として最後判断していく」と述べました。

府では、飲食店などへの措置の検討を急いだうえで、18日の対策本部会議で方針を正式に決定することにしています。

京都府 西脇知事 詳細な条件をまだ提示されていない

京都府の西脇知事は対象地域については、京都市を中心に検討していることを明らかにした上で、地域内の飲食店には、午後8時までの時短を要請することを基本線にしたいという考えを示しました。

京都に出されている緊急事態宣言について、政府は、今月20日の期限で解除した上で来月11日までの期間、まん延防止等重点措置に移行させることを決めました。

これを受けて京都府の西脇知事は、17日夕方、記者団に対し「感染者数はいわゆる『第3波』より下がりきっていない上、インドで広がる変異ウイルスも検出されている。国の方針に沿って効果的な対策を講じたい」と述べました。

そして、重点措置の対象地域については、京都市を中心に検討していることを明らかにした上で、地域内の飲食店には午後8時までの時短を要請することを基本線にしたいという考えを示しました。

一方、酒類の提供については、国から詳細な条件をまだ提示されていないとして、検討を急ぐ考えを示しました。

また、重点措置の対象地域以外の飲食店への対応については「感染防止に向けて何らかの措置が必要で、どの程度の措置をどのくらいの期間続けるか検討したい」と述べました。

京都府は、17日の開催を見送った対策本部会議を18日午後に開いて、新たな措置を決定することにしています。

福岡県 酒類の提供認める措置

福岡県は17日対策本部会議を開き、来週21日から県民や事業者に要請する新たな措置を決定しました。

具体的には、飲食店が多い福岡市、北九州市、久留米市に重点措置を適用します。

そして、3つの市では、飲食店に休業要請は行わないものの、営業時間を引き続き午後8時までに短縮するよう要請します。

一方で、感染対策を徹底し、県から「感染防止宣言ステッカー」の発行を受けている飲食店には午後7時まで酒類の提供を認めるとしています。

3つの市以外の飲食店には営業時間を午後9時までに酒類の提供は午後8時までにするよう要請します。

また、3つの市では百貨店など、大規模施設に対して営業時間を午後8時までに短縮するよう要請します。

一方、県民には、引き続き不要不急の外出自粛や、県境をまたぐ移動は控えるよう求めるとしています。

愛知県でも

愛知県の大村知事は17日の県議会で、重点措置に移行した場合に県内で講じる感染防止対策を説明しました。

それによりますと、重点措置の対象地域にある飲食店に対しては、営業時間を引き続き午後8時までに短縮するよう要請する一方、現在は自粛を求めている酒の提供を午後7時まで認める考えを示しました。

また、重点措置の対象地域以外にある県内の飲食店にも、営業時間を午後9時までに短縮するよう要請するとしています。

愛知県は、こうした対策の内容や重点措置の対象地域について、18日正式に決定することにしています。

「おしぼり」納入業者 製造増やす

東京などで緊急事態宣言が解除され、まん延防止等重点措置に移行する方針となったのを受け、都内などの飲食店に布の「おしぼり」を納入している業者は、製造量を増やしています。

しかし、酒類の提供の状況によっては売り上げがあまり戻らないのではないかと懸念しています。

東京23区や神奈川県内のおよそ1200の飲食店に布の「おしぼり」を納入している東京・大田区にある従業員およそ40人の企業では、休業している飲食店の営業再開を見込んで15日から製造を3割増やしています。

17日は自社の工場から送られてきたおしぼりを整理したり、飲食店からの電話を受けたりして納入の準備を進めていました。

「おしぼり」の売り上げはふだんのおよそ3割まで落ち込んでいるということで売り上げの回復を期待していますが、酒類の提供に関して、政府の方針には知事の判断で制限が可能とすることが盛り込まれるなど、先行きが見通せないことから売り上げがあまり戻らないのではという懸念もあるということです。

「弘明舎」の小泉平治郎社長は「前回の再延長の際には準備はしたものの、お客さんからキャンセルが相次いで大変だったので今回もギリギリまで見極めたいとは思います。ただ、酒類の提供がどうなるかわからないので不安もあります」と話していました。