東京・大阪など7都道府県「まん延防止等重点措置」移行を了承

新型コロナウイルス対策で、10都道府県に出されている緊急事態宣言について、専門家でつくる分科会は、沖縄を除く9都道府県で解除し、このうち東京や大阪など7都道府県は、まん延防止等重点措置に移行することを了承しました。
また、重点措置の適用地域の飲食店について、感染対策の徹底を前提として酒類の提供は午後7時まで可能とする一方、知事の判断で提供を停止できるなどとする方針も認めました。

新型コロナウイルス対策をめぐり、感染症などの専門家でつくる政府の「基本的対処方針分科会」が開かれ、西村経済再生担当大臣らが出席しました。

この中で、西村大臣は、10都道府県に出されている緊急事態宣言について、沖縄を除く9都道府県は期限の今月20日で解除し、このうち、北海道、東京、愛知、大阪、兵庫、京都、福岡の7都道府県は、来月11日までの期間、「まん延防止等重点措置」に移行させる方針を諮りました。

そして、重点措置に移行する7都道府県について「各指標は、おおむね『ステージ3』相当以下となってきており、医療提供体制も負荷の軽減が見られる。しかし、足元で人出が増加傾向にあり、変異株も想定してリバウンドを防ぐ必要がある。引き続き強い措置を継続する必要がある」と説明しました。

一方、沖縄については、医療提供体制が依然としてひっ迫していることから、宣言の期間を来月11日まで延長するとしています。

また、「まん延防止等重点措置」が適用されている5県のうち、岐阜と三重は期限の今月20日で解除する一方、埼玉、千葉、神奈川の3県は来月11日まで期間を延長する方針も諮りました。

さらに、重点措置の適用地域の飲食店に対し、午後8時までの営業短縮を引き続き要請したうえで、感染対策の徹底を前提として酒類の提供は午後7時まで可能とし、感染状況に応じて知事の判断で酒類の提供を停止できるなどとする方針も諮りました。

西村大臣は「今後も感染状況に応じて、必要になれば、緊急事態宣言や『まん延防止等重点措置』を機動的に講じていくことで、必ず来るだろうと言われているリバウンドを大きな流行にしないよう徹底した取り組みを進めていきたい」と述べました。

一方、田村厚生労働大臣は「東京のきのうの新規感染者数は、前の週と比べて増えている状況で、若年層は増加の兆しが見えてきている。非常に心配なところであり、しっかりと留意していかないといけない」と述べました。

分科会では、政府の方針について議論が行われ、了承されました。

政府は午後、こうした方針を事前に国会に報告し、質疑を行ったうえで対策本部を開いて、決定することにしています。

そして、17日午後7時をめどに、菅総理大臣が記者会見し、宣言の解除の理由などを説明し、引き続き国民に協力を呼びかけることにしています。

尾身会長「東京都の解除 3つの条件をお願いした」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は会合のあと、報道陣の取材に応じ、緊急事態宣言について政府が示した方針を了承したと述べました。

そのうえで「宣言が解除される東京都の対策について、かなり議論があった。東京はすでに感染が下げ止まりか、少しずつ増加しつつあり、3つの条件を示して政府にも納得してもらった。1点目は、解除後の再拡大を防ぐためにワクチン接種をはじめ、しっかり予算をつけて、検査の充実など専門家が提言した必要な対策を全部打ってくれということ。2点目は、それでも感染が再拡大する兆候が見られた場合には、ちゅうちょせず強い対策を速やかに打つこと。3点目は、政府がこれから数か月間、感染状況をどのような状態にしたいのか、どんなことをしなければならないのかという大きなビジョンを示すこと。この3つを条件としてお願いした」と述べました。

日本医師会 釜萢理事「東京都 ギリギリまで考え判断」

日本医師会の釜萢敏常任理事は、分科会のあと記者団に対し「東京の緊急事態宣言を延長したほうがよいと思っていたが、延長に伴うデメリットも把握して、ギリギリまで考えたうえで最終的に判断をした」と述べました。

また「『酒類の提供を控えていることの効果は十分認められる』という原則に立ちつつも、いつまでも続けられるものではないので、時間を区切って解除して、経過を見ながら徐々に、なるべくよい方向に持っていくことで合意された」と述べました。

一方で、東京大会の観客の在り方について「プロ野球やJリーグの規模とまったく違う。大きな会場が東京の中にいくつもあり、同時に開催されるほか、国民の関心も非常に高いので、通常のイベントと同等に論じることはできない」と述べました。

舘田教授 「兆候はっきり見えたら ちゅうちょなく」

東邦大学の舘田一博教授は分科会のあと記者団に対し「東京はリバウンドの兆候が見えつつあり、早晩リバウンドが起こる可能性が高いという認識を共有している。リバウンドの兆候がはっきり見えたら、ちゅうちょなく緊急事態宣言を出すことも含めて考えないといけない」と述べました。

また、東京大会の観客の在り方について「Jリーグやプロ野球などの大規模イベントとは全然次元が違う。尾身会長を中心に提言がなされるので、それを見て組織委員会などが考えてくれると思う」と述べました。

経済専門の竹森委員「実験的に解除し 徹底的な対策」

経済の専門家として分科会の委員を務める、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの竹森俊平理事長は記者団に対し「対策の長期化で飲食店からかなり不満が出ているのと同時に、感染対策に努力している店とそうでない店の差が設けられていないことが不公平だという議論があった」と述べました。

また「緊急事態宣言を解除すればリバウンドする可能性は高くなるが、いわば実験的に解除をすることで、何をしなければならないかが明確になり、そこに徹底的な対策をとればよいのではないか」と述べました。

西村経済再生相「リバウンドの兆しあれば機動的に対応」

西村経済再生担当大臣は、分科会のあと記者団に対し「分科会の後半は、ほとんどが東京の緊急事態宣言を解除できるのかどうかについて議論が行われた。医療はひっ迫が見られず改善しているということだが、足元の人流が増え、新規陽性者数の減少傾向も鈍化し、リバウンドも予想されるという議論があり、しっかり対処していくことを確認した」と述べました。

そのうえで「さまざまな対策を継続、強化していくことと、リバウンドの兆しがあれば、大きなリバウンドにしないために、緊急事態宣言の措置も機動的に対応していくということで、了解をいただいた」と述べました。

田村厚労相「感染者増えれば緊急事態宣言も念頭に了承」

田村厚生労働大臣は、分科会のあと記者団に対し「東京は、新規感染者数が前の週と比べて増えており、心配の声が多かった。一方で緊急事態宣言の期間が長くなっているので、いったん解除し『まん延防止等重点措置』による対策をしっかりと浸透させ、なんとか踏みとどまることが必要だ。感染者数が増えることがあれば、緊急事態措置を適用することも念頭に置くことで、了承をいただいた」と述べました。

そのうえで田村大臣は、記者団が東京オリンピック・パラリンピックの開催中も感染が拡大すれば「緊急事態宣言」を出す可能性はあるのか質問したのに対し「きょうはオリンピックの議論にはならなかったが、国民の健康や命が大切であり、当然、いついかなる時でも必要があれば、緊急事態措置も含めて対応することになる」と述べました。

沖縄の緊急事態宣言延長 玉城知事「判断は妥当」

政府が沖縄県に出している緊急事態宣言の期間を来月11日まで延長する方針について、沖縄県の玉城知事は17日朝、県庁で記者団に対し「現在の沖縄県の医療体制がひっ迫している状況や、県が警戒レベルを判断する7つの指標のうち4つが最も高い第4段階にあることを考えると、この判断は妥当だ」と述べました。

また、沖縄県が2週間の延長を要請したのに対し、3週間延長される方針となったことについては「おそらく政府の分科会の専門家から、沖縄県の医療体制の回復にはそれぐらいの期間が必要ではないかという判断があったのではないか」と述べました。