職域接種 申請企業にワクチンなど到着 各地で準備進む

新型コロナウイルスのワクチンの職域接種が6月21日から本格的に始まるのを前に、申請した企業には政府が手配したワクチンや保管のための冷凍庫が届き始めています。

このうち、来週21日から接種を始める予定の東京・港区の大手商社には15日午前、1200回分のワクチンが保冷バッグに入った状態で届きました。

ワクチンは産業医が受け取り、状態を確認したあと、医務室の中の鍵のかかるスペースに用意された専用の冷凍庫に保管していました。
接種は東京と大阪の2か所で、正社員やグループ会社の社員、それに警備や清掃を行う委託先の社員など、合わせて7500人に行われます。

伊藤忠商事の岡藤正広会長は「きょうを待っていた。21日からできるかぎり早く多くの人に接種して、明るい未来にしたい」と話していました。

高橋佑平ワクチンチームリーダーは「出向者や業務委託で働く人を含めて希望者が確実に接種を受けられるようにするとともに、接種を受けない人が不利益を受けないよう注意していきたい」と話していました。

外食企業でも準備進む

接客対応をする従業員が多い外食企業でも接種に向けた準備が進んでいます。

焼き肉や居酒屋のチェーンをおよそ2500店舗展開する企業は、本社がある横浜市に2か所の会場を設け、来週21日からワクチンの職域接種を始める計画です。

会場の1つとなる本社の会議室では、接種当日の流れを想定して受付や待機場所となる場所にイスや机が並べられ、準備が進められています。

この会社では、東京やその周辺の3県で働く社員と家族のほか、各店舗のパート・アルバイトの従業員のうち、希望する6000人に2回ずつ接種する予定で、8月上旬には終えたいとしています。

1つの会場に医師と看護師を合わせて最大10人ほどを配置しますが、会社の産業医は常勤ではないため医師などを企業や病院に紹介する民間のサービスを利用して、必要な人材を確保したい考えです。

コロワイド広報室の高橋敬一郎室長は「従業員に安心して働いてもらうとともに、利用客にも安全・安心に食事をしてもらいたいと考え、準備を進めている。今後は関西や東海などにも対象地域を拡大したい」と話していました。

医療人材を紹介する会社には連日多くの問い合わせ

新型コロナワクチンの職域接種がさまざまな業種に広がる中で課題となっているのが、接種の担い手となる医師や看護師の確保です。医療人材を紹介する会社には連日、多くの問い合わせが寄せられています。

就職や転職の情報サイトを運営している東京の会社では、全国の医師を登録して各地の医療機関などに紹介していて、新型コロナウイルスのワクチン接種ではこれまで自治体に医師を紹介してきました。

そして6月からは、職域接種を希望する企業を対象にした専用のページもつくり、会社によりますと毎日100件ほどの問い合わせが入っているということです。

また、ワクチン接種に関連する専門チームも担当者を従来の2倍に増やし、対応を強化しているということです。

「エムスリーキャリア」で新型コロナワクチン対策支援プロジェクトを担当する田島智子さんは「会員の医師からも新型コロナに関連する業務の関心は高い。ワクチン接種の担い手の確保は社会的な問題にもなっているので、会社としても役に立てるよう取り組みたい」と話していました。

トヨタ自動車 「トヨタ生産方式」活用し約8万人の職域接種へ

またトヨタ自動車は、新型コロナウイルスワクチンの職域接種について、愛知県豊田市の本社で6月21日から実施するほか、工場や東京本社、それに名古屋オフィスなどでは、7月12日から接種を始めることを決めました。

対象となるのは、トヨタの社員だけでなく、自社で職域接種を行うのが難しい豊田市内に拠点を置く取引先の社員も含めるということで、合わせておよそ8万人への接種を想定しているとしています。

接種はトヨタの産業医や看護師が担当し、会場では、車づくりで培った、むだを排除して生産性を高める「トヨタ生産方式」を活用して最短のルートで接種を終えられるようレイアウトを工夫するなど効率的な接種を進めていくとしています。

トヨタは「職域接種が困難な仕入れ先にも接種機会を提供することで、自治体のワクチン接種の加速をサポートしていきたい」としています。

河野規制改革担当相「積極的に展開して」

河野規制改革担当大臣は、東京 港区のソフトバンクグループが設けた接種会場を視察したあと、記者団に対し「職域と近隣住民、そして医療従事者に打っていただくというモデルが立ち上がり、大変うれしく思っている。近隣住民まで広げてもらうと、効率やスピードアップの観点からもありがたく、積極的に展開してもらいたい」と述べました。

そのうえで「高齢者に比べ、若い世代は『積極的に打ちたい』という割合が低いので、いろいろなことを考えていかなければならない。野球の試合を安全に見られるということは、若者のインセンティブになると思うので期待したい」と述べました。