ことしの「骨太の方針」原案 感染症への対応 より強力な体制で

政府の経済財政諮問会議でことしの「骨太の方針」の原案が示されました。新型コロナウイルスを踏まえた感染症への対応として、緊急時はより強力な体制や司令塔のもとで対策を推進するとしています。

それによりますと、新型コロナウイルスを踏まえた感染症への対応として緊急時はより強力な体制や司令塔のもとで対策を推進し、治療薬やワクチンの速やかな実用化や接種体制の確保に向けて実効性のある対策を講じられるよう法的措置を検討するとしています。
また、「こども庁」を念頭に子どもに関するさまざまな課題に対応できる行政組織を創設するため、早急に検討に着手することや多様な働き方の実現に向けて希望すれば週に3日休める「選択的週休3日制」の導入を促し普及を図るとしています。
一方、財政健全化をめぐっては2025年度に国と地方を合わせた『基礎的財政収支』を黒字化するとした目標を堅持するとしながらも、今年度内に新型コロナウイルスの経済財政への影響を検証し、結果を踏まえて目標年度を再確認するとしています。

会議で、菅総理大臣は「新型コロナ対策に最優先で取り組みながら特にグリーン、デジタル、地方、子どもの4つの課題に重点的な投資を行い、長年の課題に答えを出し力強い成長を目指す」と述べました。

政府は原案をもとに与党と調整を行い来週、閣議で決定する方針です。

財政健全化目標堅持も達成は険しく

「骨太の方針」の原案には財政健全化目標を堅持することが盛り込まれましたが、新型コロナウイルスの影響で財政が急速に悪化するなか目標達成の道筋は一段と険しくなっています。

政府の財政健全化目標は政策に充てる経費を国債などに頼らず、税収などでどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支」を国と地方を合わせて2025年度に黒字化することを掲げています。

しかし、新型コロナウイルスへの対応で歳出が急激に膨らみ、税収が落ち込んだことで財政が急速に悪化し、目標達成の道筋は一段と険しくなっています。

内閣府がことし1月に示した最新の試算では、今年度が実質で年間4%程度、来年度は3.6%程度など高めの経済成長が続く想定でも2025年度の「基礎的財政収支」は7兆3000億円の赤字で、黒字化の実現は目標より4年遅い2029年度にずれ込むとしています。

このため今の目標を達成するには、新型コロナを早期に収束させて経済を成長軌道に戻し税収を増やしていくことに加え、歳出を抑える抜本的な対策に踏み込むことなどが避けられない状況にあります。

一方「骨太の方針」の原案では今年度内に新型コロナウイルスの経済財政への影響の検証を行い、その結果を踏まえ目標年度を再確認するとしています。

検証結果によっては2025年度に「基礎的財政収支」を黒字化するという目標の達成時期が先延ばしとなる可能性もあり、その行方が焦点となります。

西村経済再生相「分析や検証を経て方向性を出していきたい」

西村経済再生担当大臣は記者会見で「骨太の方針」の原案に盛り込まれた感染症に対応するための強力な体制や司令塔について「どうやって感染症を抑えていくのか考えていかなければならないし、今回、病床や医療人材の確保についてもさまざまな経験をした。今はまだ緊急事態宣言のもとで各省が全力で対応しているところなので、今後さまざまな分析や検証を経て方向性を出していきたい」と述べました。

また「骨太の方針」の原案に2025年度に国と地方を合わせた「基礎的財政収支」を黒字化するという財政健全化目標の堅持が明記されたことについて、西村経済再生担当大臣は記者会見で「2025年度はいわゆる『団塊の世代』がすべて75歳以上となり、財政健全化や社会保障改革にとって節目となる年だ。将来世代の不安を取り除くためにも、それまでに財政健全化の道筋を確かなものにする必要があり、目標は堅持すべきと考えている」と述べました。

そのうえで基礎的財政収支を黒字化する目標年度を今年度中に「再確認する」としたことについて、西村大臣は「新型コロナによる今後の状況をしっかり分析、検証したうえで目標年度について再確認していきたい」と述べました。