東京 新規陽性者 高い値で推移 重症患者減少見られず厳重警戒

東京都のモニタリング会議で、専門家は、都内の新規陽性者は十分に下がりきらないまま変異ウイルスの影響もあり、高い値で推移していると指摘しました。また、重症の患者の減少が見られず、今後、増加の予兆を見逃さないよう、厳重に警戒する必要があるとしています。

会議のなかで専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、2日時点でおよそ485人で、およそ588人だった1週間前・先月26日時点の83%に減少していると説明しています。

ただ、新規陽性者は十分に下がりきらないまま、感染力の強い変異ウイルスの影響もあり高い値で推移しているほか、日中も夜間も人出が増えているとして、懸念を示しました。

そのうえで、感染の再拡大を招かないよう、人の流れを抑えるとともに、基本的な感染防止対策を徹底する必要があると指摘しました。

一方、いずれも2日時点で、入院患者は1932人、重症の患者は73人と依然として高い値で推移しているとして、新規陽性者の増加による医療提供体制のひっ迫が危惧されると説明しました。

特に、重症の患者は、第3波のピーク前の去年12月下旬とほぼ同じで、新規陽性者が減少傾向にある一方、依然として減少が見られないと指摘しました。

そのうえで、人工呼吸器などの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者が多く、重症患者の増加が危惧されるとして、予兆を見逃さないよう厳重に警戒する必要があるとしています。

専門家「繁華街で人出の増加続き夜間は顕著」

モニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内の主要繁華街では大型連休明けから人出の増加が続き、特に、感染拡大との関連が強い夜間は顕著だと指摘しました。

西田センター長によりますと、銀座や新宿・歌舞伎町、渋谷など都内7つの繁華街の人出は、3回目の緊急事態宣言が出されたことし4月25日を起点に、2週目の先月8日までは減少が見られました。

しかし、5週目の先月29日まででは、3週連続で増加しています。

5週目の人出は、2週目と比べて夜間は25%、昼間は19%増加しました。

また、去年4月からの1回目の緊急事態宣言時の最低値と比べると、夜間は2.41倍、昼間は2.30倍となっています。

西田センター長は、感染拡大との関連が強い夜間、特に午後8時以降の増加が顕著だとして、「新規陽性者の減少傾向が、人出の増加によって少しずつ鈍くなってきているように見える。リバウンドの可能性が高くなってきていると思われる」と指摘しました。

そのうえで、夜の繁華街周辺のマスク着用率は低いとして、夜間の人出の増加を食い止める重要な局面だとしています。

分析1【感染状況】「下げ止まりの傾向 対策徹底を」

4日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は、2日時点の7日間平均が485.1人となり、1週間前・5月26日時点の587.7人よりおよそ102人減少しました。

増加比はおよそ83%で、前回とほぼ同じでした。

専門家は依然として高い値で推移していると分析したうえで、「去年12月中旬とほぼ同じ数で、その3週間後に第3波のピークを迎えた。増加比が80%台で下げ止まっていて、感染力の高い変異ウイルスの影響をふまえると、新規陽性者を徹底的に減らす必要がある」と指摘しました。

5月31日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▼20代が最も多く27.1%、次いで
▼30代が20.8%、
▼40代が16.0%、
▼50代が11.9%、
▼10代が6.2%、
▼60代が6.0%、
▼70代が4.5%、
▼10歳未満が3.8%、
▼80代が2.8%、
▼90代以上が0.9%でした。

20代から40代をあわせると全体のおよそ64%、20代だけだとおよそ27%を占めています。

65歳以上の高齢者は、今週は405人で前の週より97人減りましたが、割合は10.9%でほぼ横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち
▼同居する人からの感染が50.7%と最も多く、次いで
▼高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が16.3%、
▼職場が15.8%、
▼会食が5.1%でした。

専門家は「職場と施設での感染の割合が再び上昇した。職場、施設、会食など多岐にわたる場面で発生していて、感染に気付かずにウイルスが持ち込まれている恐れがある」として警戒を呼びかけました。

また、施設内での感染事例では病院や有料老人ホームなどのほか保育園や大学の運動部、寮などでもクラスターの発生が複数、報告されているということです。

5月31日までの1週間の新規陽性者3721人のうち、17.9%にあたる665人は無症状でした。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は2日時点で286.7人で、前の週から69人減りました。

増加比も2日時点で80.6%で2.5ポイント低下しました。

ただ、専門家は「低下傾向がおよそ3週間続いていたが下げ止まりが見られる。第2波や第3波のあと増加比が80%前後で下げ止まっていて、第3波では緩やかな上昇傾向のあと急激に再拡大した」と述べ、懸念を示しました。

そのうえで「再拡大を回避するためにはさらに増加比を低下させる必要がある。人流や人と人との接触の機会を減少させ、感染防止対策を徹底することが必要だ」呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合はおよそ59%と前の週とほぼ同じで、年代別では20代から60代で50%を超えています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路のわからない人とその割合も高い値で推移している可能性がある」と指摘しています。

分析2 【医療提供体制】「重症患者は減少の兆し見られず」

検査の陽性率の7日間平均は、2日時点で5.3%となり、前の週・5月26日時点と比べて0.2ポイント低下しました。

専門家は「横ばい」だと分析しています。

また、入院患者は2日時点で1932人と、先月26日時点と比べて250人減少しましたが、同じ期間に重症患者は3人増えています。

専門家は、「新規陽性者数が減少傾向にある一方、重症患者数は依然として減少の兆しが見られない。医療機関は絶え間なく対応に追われ負担が長期化している」と述べました。

入院患者を年代別でみると、60代以下が全体のおよそ64%を占めています。

最も多いのは70代、ついで50代で、いずれもおよそ17%です。

都の基準で集計した2日時点の重症患者は、5月26日時点より3人増えて73人でした。

重症患者を年代別に見ると、
▼70代が最も多く23人、ついで、
▼60代が18人、
▼50代が12人、
▼80代が9人、
▼40代が6人、
▼90代が3人
▼10代と▼30代がそれぞれ1人でした。

男女別では、男性が56人、女性が17人となっています。

重症患者に占める年代別の割合は、70代がおよそ32%を占め最多となりましたが、60代以下の割合も依然として高く、およそ52%にのぼっています。

専門家は、「肥満や喫煙歴のある人は若年であっても重症化リスクが高い」としてあらゆる世代でリスクがあることを啓発する必要があると訴えています。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は2日時点で287人で、先週の時点から4人増えました。

また、2日時点で陽性となった人の療養状況を5月26日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は219人減って1176人、
▽都が確保したホテルなどで療養している人は64人減って988人、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は281人減って590人でした。

「療養が必要な人」全体の数はおととい時点で4686人と814人減りましたが、専門家は、「依然として高い水準で推移している。今後の大幅な感染拡大に備え、入院医療に加えて、宿泊療養および自宅療養の体制の充実・強化が求められる」としています。

また、5月31日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した38人が亡くなりました。

前の週より21人減りました。

死亡した人のうち、31人が70代以上でした。