「変異ウイルスがこれほどとは」40代女性 肺全体に炎症広がる

熱は高くはなく、自分は大丈夫だと思っていました。
入院するほど悪化するとも思っていませんでした。
でも、現実は違いました。

自宅療養中に急速に容体が悪化して入院。
肺の機能が低下し、人工呼吸器の使用も一時検討されました。

変異ウイルスがこれほどとは…。
埼玉県の40代の女性の証言です。

関節の痛みが3~4日…、感染判明

5月10日。

女性は体調に異変を感じました。

熱はそれほど上がりませんでしたが、関節や筋肉の痛みが続きました。

「“なんだろう”と思っていたんですけど、それが3日も4日も続いて、ただただ痛い…。熱はなかったので、買い物に行くくらいはできそうな感じでした。だけど風呂に入ったあと床に座り込んでしまったり動けなくなることがありました」

検査の結果、感染が判明。

女性には軽い基礎疾患がありました。

ただ、年齢や症状などから重症化のリスクは低いとされ、自宅療養となりました。

「変異ウイルス」と判明 酸素マスク必要なほどに

数日後、事態は一変します。

血液中の酸素の値が急激に低下しました。

重症の手前の「中等症」のレベルでした。

女性は急きょ入院することになりました。

また、詳しい検査の結果、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスへの感染が判明したのです。

入院した時点で酸素マスクで吸入をしなければならないほど悪化していたといいます。

肺全体に炎症広がる

入院直後に撮影された女性の肺のCT画像です。

肺の両側に白い影がうつり、肺全体に炎症が広がっている様子が確認できます。

すぐに抗ウイルス薬などが投与されましたが、肺炎によって肺の機能は低下していきました。

吸入する酸素の量も日に日に増えていきます。

症状は悪化し、一時、人工呼吸器の使用も検討されました。

「変異ウイルスがこれほどの感染力とは」

入院後5日間ほど一進一退の状態が続きましたが、治療の結果、酸素マスクを外すことができるようになりました。

職場の往復や生活用品の買い物くらいでしか外出していない。

マスクも着けて消毒もして、感染対策はとっていた。

変異ウイルスがこれほどの感染力とは。

女性はこう振り返ります。

「なんだかんだ自分は大丈夫かなと思っていたが、全然大丈夫じゃなかった。すんなり治ることはないと思っていたが、入院するまで悪化するとは思わなかった」

医師「手遅れになりかねなかった」

5月下旬。女性はまだ入院中でしたが、症状は改善され、自分の体験を多くの人に知ってもらいたいと医師が代理で質問する形で取材に応じてくれました。
治療にあたった埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭医師は「病院へ搬送する判断が極めて適切で、このタイミングを逸していれば悪化して手遅れになりかねなかった。あと1日、2日搬送が遅ければ間違いなく人工呼吸器になっていた。変異ウイルスでは、40代や50代で必ずしも重篤な持病がなくても重症化してしまうケースがみられます」と話しています。

岡医師によると、この病院では5月25日の時点で患者13人のうち検査中の3人を除く10人が、変異ウイルスに感染していたということです。

岡秀昭医師
「アメリカやイギリス、大阪でも変異ウイルスに置き換わっていったので、首都圏でも同様の状況になることは容易に想像できました。しかし、実際に起きてみるとスピードが早く、5月は1週間ごとに20%、50%、70%、90%と変異ウイルスの患者が占めるようになりました」

次に警戒すべきは“インド型” 感染対策徹底に尽きる

岡医師は、“新たな変異ウイルス”のまん延に警戒を強めています。

岡秀昭医師
「“N501Y”が通常の流行になったので特別視する必要はなくなり、次に警戒すべきなのは、“インド型”だと思います。ウイルスが急速に置き換わるというのは、それだけ脅威的なウイルスだということなので、現場としてはそれが患者の急増、重症者の急増として跳ね返ってくるのが一番怖い。“インド型”が主流になっていくことはもっとも警戒しなければいけないシナリオなので、全力で防いでもらいたい」
「これらのウイルスがさらに変異を起こさないためには、マスクの着用や消毒の徹底、密を避けることなど基本的な感染対策を徹底して感染を拡大させないことに尽きると思います」


(取材:首都圏局 記者 古市駿)