金沢学院大 “実習前バイトしない”誓約書 一部学生に求める

新型コロナウイルスの感染が広がる中、管理栄養士の養成課程がある金沢市の大学が学生に対し、実習前からの一定期間アルバイトを行わないなどとする「誓約書」の提出を求めていたことが分かりました。学生の一部からは生活や就職活動に影響が出たという声があがっていて、大学側は「実習先の病院などから感染対策の徹底を求められたことを受けての対応だったが、今後は誓約書の提出という形はとらず、理解を求めていきたい」としています。

誓約書の提出を求めていたのは金沢市にある「金沢学院大学」です。

NHKが独自に入手した誓約書によりますと、管理栄養士の養成課程がある「健康栄養学科」の学生に対し、新型コロナウイルスの感染対策のため、学外での実習の2週間前からアルバイトをしないことや県外に出ないことなど6項目について誓約し、署名を求めています。

誓約書は去年秋から実習の参加者に提出が求められ、教員が回収し、実習先の病院などに送られていたということです。

提出しない場合は実習に参加できないことになっていたということです。

複数の学生は「アルバイトのシフトに入れなくなり、辞めざるをえなくなった」とか「県外での就職活動は見合わせている」などと話し、生活や就職活動に影響が出たと証言しています。

大学は、NHKの取材に対し「実習を受け入れる病院などから感染対策の徹底を求められたことを受けての対応だった」と述べたうえで「対策の呼びかけは続けるが、学生の問題には丁寧に対応したい。今後は誓約書の提出という形はとらずに、実習の受け入れ先に理解を求めていきたい」としています。

学生「教員の前で“今すぐ印鑑を押して”」

取材に応じた金沢学院大学の職員は「管理栄養士の実習では、病院や高齢者施設に出向くこともあるので、行動の制限自体、しかたがない部分がある」としたうえで「誓約書を出さないと実習に行けず、管理栄養士の受験資格がもらえなくなるので、学生からは誓約書は強制的なものだと受け止められている。東京や県外で就職活動をしたいという学生も多いが、県外に出ると自宅待機になってしまうため、ためらっている学生もいる」と学内の状況を証言しました。
また、誓約書を提出したという学生は「誓約書は、教員の前で“今すぐチェックを入れ、印鑑を押して”と言われ書かされました。参考書や教材はアルバイト代で買っていたし、やりたいことを制限され、苦しいと感じています。県外での就職活動も諦めています。感染防止のために学生を管理しなければならない大学の事情も分かりますが、1人1人に向き合って対応してほしい」と話しています。

専門家「学生の目線での配慮が必要」

憲法学が専門で、コロナ禍の「自粛」や自由の制限について研究している、京都大学法学研究科の曽我部真裕教授は、大学が誓約書を求めることについて「感染予防のために必要な一定の合意を求めること自体はおかしくないが、大学との関係では学生の立場がどうしても弱くなる。事実上の強制力があって、断る選択肢は基本的にないのではないか。同意して署名したからよいということではなく、学生の目線での配慮が必要だ」としています。

感染拡大に伴う大学の「誓約書」めぐっては

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「誓約書」をめぐっては、三重大学でも、緊急事態宣言の対象地域から通う学生らに「会食はしない」などの項目にチェックを入れる誓約書の提出を求め、学生などから「やりすぎではないか」といった声もあがっていました。

ことしの春まで愛知県の実家で暮らしながらオンラインで講義を受講し、今は津市に移り住んでいる、三重大学の2年生の女子学生は、大学が緊急事態宣言が出されている地域から通う学生に誓約書の提出を求めたことについて「住んでいるところが違うという理由で、つらい思いをしている子がいるんじゃないかと思います。学生は信頼されていないのかなと感じました」と話していました。