菅首相が会見「来月中には一般への接種を開始」

菅総理大臣は、9都道府県の緊急事態宣言を延長すると決めたことを受けて、28日夜、記者会見し、来月中には、高齢者への接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある人を含め、広く一般の人への接種を始める考えを強調しました。
また、東京オリンピック・パラリンピックについて、安全・安心な大会の実現に改めて意欲を示しました。

冒頭、菅総理大臣は、東京や大阪など9都道府県の緊急事態宣言の期限を来月20日まで延長することについて「関西では、感染者数の減少が続いているが大阪と兵庫を中心に病床はひっ迫し、非常に厳しい状況にある。首都圏では、感染者数は横ばいから減少傾向にあるが、東京では依然として『ステージ4』の水準にとどまっている。その他の宣言地域でも高い水準にある。また、全国の重症者数や死亡者数は、高止まりの状況が続いている」と理由を説明しました。

そのうえで「たび重なる延長は、大変心苦しいかぎりだが、これからの3週間は、感染防止とワクチン接種という『二正面作戦』の成果を出すための、極めて大事な期間と考えている。皆様のご理解とご協力を心よりお願いを申し上げる」と述べ、国民に重ねて協力を呼びかけました。

そして、ワクチンについて「十分な量はすでに確保している」と述べ、来月末までに1億回分が供給され、9月までには、さらに1億回分を上回るワクチンが確保できる予定だと説明しました。

そのうえで「来月中には、予約状況などを踏まえ、高齢者への接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある方々も含め、広く一般にも接種を開始する。皆さんの職場や大学でも接種を進めていく」と述べました。

さらに、1日当たりの接種回数について「現在は40万回から50万回だが、6月中旬以降は、打ち手も含めて、100万回に対応できるような体制ができてくると思う。コロナとのたたかいに私自身が先頭に立って、国民がかつての日常を取り戻すことができるように全力で取り組んでいきたい」と述べました。

一方、東京オリンピック・パラリンピックについて「多くの方々から不安や懸念の声があることは承知しており、そうした声をしっかり受け止めて関係者と協力しながら安全、安心の大会に向けて取り組みを進めている」と述べました。

そして、具体策として、日本を訪れる人の数の削減、選手や関係者への検査とワクチンの接種、それに悪質な違反への資格剥奪を含む選手らの徹底した行動管理の3点を挙げ「引き続きIOC=国際オリンピック委員会、IPC=国際パラリンピック委員会、大会組織委員会、東京都が調整を進め、国としてもしっかりと協力して国民の命を守っていく」と強調しました。

また、記者団が観客を入れて開催した場合の感染防止対策を質問したのに対し「わが国では緊急事態宣言下ではあるが、野球やサッカーなど、一定の水準の中で、感染拡大防止をしっかり措置したうえで行っていることも事実だ。政府として、こうした点も十分に、学習しているので、対応することはできるというふうに思う」と述べました。

尾身会長「延長の背景には3つの理由」

菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂 会長は「緊急事態宣言が再延長された背景には3つの理由があると考えている。1つは3回目の宣言ということで人々の協力が得られにくくなってきていること。2つめは当然、変異ウイルスの影響だ。3つめは、私が強調したいことだが、都道府県の中には営業自粛や時短営業、まん延防止等重点措置を検討して実施するまでに少し時間がかかってしまったところがあった。重点措置を出すプロセスが重いプロセスになってしまっているので、簡略化してもらいたい」と話していました。
また尾身会長は「ワクチン接種の割合が緊急事態宣言の解除の条件に加味されるかという点については、接種率そのものによって今のステージの分類を変える必要はないと思う。ただ、接種が進むと解除がしやすくなると考えている。例えば、高齢者がワクチンを接種すれば、重症化予防がかなり期待できるので、感染者がまだ比較的多くても重症者が減ってきて、医療態勢の負荷はかなり取れてくる。解除には医療への負荷をより優先に考慮するので、接種がある程度進めば、今までより解除が早まるということはありえると考えている」と話しています。