テレワーク 実施後取りやめた企業も 継続させるポイントは

3回目の緊急事態宣言が出されて1か月がたちました。政府が「出勤者数の7割削減」を呼びかける中、テレワークが広がっていますが、一度は実施したものの、今は取りやめたという企業も多いことがわかりました。

民間の調査会社、東京商工リサーチが、ことし3月上旬に全国の9800社余りを対象に行った調査では、在宅勤務やテレワークについて「現在、実施している」と答えた企業は3754社、率にして38%で、この2か月前のことし1月に実施した同じ調査より3ポイント増加していました。

会社の規模別にみると、資本金が1億円以上の企業では69%だったのに対し、1億円未満の企業は33%で、規模の大きな企業で実施率が高くなっています。

ただ「新型コロナウイルスの感染が拡大して以降に実施したが、現在は取りやめた」と答えた企業が17%にあたる1725社にのぼり、在宅勤務やテレワークの継続に課題があることもうかがえます。

こうした課題について、パソナ総合研究所が去年10月、在宅勤務を経験した1000人余りに複数回答でたずねたところ、業務上の課題として、半数近い48%が「チームのコミュニケーション機会の確保」を挙げ、最も多くなりました。

また、家庭内の課題については「インターネット環境の改善」が同じく半数近い47%でした。

「チームデー」設けてテレワーク継続

テレワークならではの課題を克服し、今後も続けていくために独自のルールを取り入れる動きもあります。

商用車メーカーの三菱ふそうトラック・バスは、ことし1月から生産ラインで勤務する人を除き、平日5日間のうち出勤していいのは2日までで、残りはすべてテレワークとすることを就業規則に盛り込みました。

事務系の社員だけでなくエンジニアも対象にしています。

ただ多くの社員から「テレワークでは上司や同僚どうしのコミュニケーションがうまくとれない」といった意見が寄せられました。

そこで会社では、部署ごとにメンバー全員がそろって出社し、顔を合わせて仕事をする日「チームデー」を設けるという新しいルールも導入しました。

仕事で気付いたことやわからないことなどを上司や同僚どうしで話し合う「リアル」のコミュニケーションをあえてつくることでテレワークを効率的に進めようというねらいです。

5月下旬には新しいバスを開発する部署のチームデーが設けられました。

東京都に緊急事態宣言が出ていることもあって、この日はオンラインでの開催となりましたが、10人余りのエンジニアが参加し、地方から異動してきたばかりの社員が「部品開発の全体状況を把握するソフトウエアの扱い方が分からない」とたずね、別の社員が教える場面もありました。

開発本部の伊藤貴之バス開発部長は「自宅で仕事をしてもパソコンでできるので機能的には問題はないが、私自身も在宅勤務でふとした時に孤独感を感じるときもある。『チームデー』では、ざっくばらんに全員と会話ができるよう心がけています」と話していました。

また、人事本部の河地レナ本部長は「『やってもいいですよ』と言われるより、『やらないとダメです』と言われるほうがいかにうまくやれるか考える。意識改革を起こすためにはときには強制力も必要だ」と話しています。

テレワークの社員「少し難しさを感じている」

バス開発部のチームデーに参加したエンジニアの福島吉宏さん(56)は、先月、単身赴任先の富山県から本社に異動となり、横浜市の自宅でテレワークをしています。

IT企業に勤めている長女もテレワークをしていて、お互い企業秘密につながる機微な情報を取り扱っているため、福島さんはタンスなどをしまってある収納スペースで、長女はリビングと別々の場所でテレワークをしています。

福島さんは就業規則に従って会社に出勤するのは週2回までです。通勤に往復1時間半以上、かかっていたため、負担が少なくなったのはメリットだと感じています。

一方、異動したばかりで新しい部署のソフトウエアやシステムの扱い方をできるだけ早く覚えたいと感じていますが、テレワークではなかなか追いつかないと言います。

福島さんは「顔を合わせていれば気軽に質問をすることもできるが、オンラインだと少しためらう部分がありスムーズに仕事の進行をする上では少し難しさを感じている」と話していました。

テレワーク継続 3つのポイントとは?

テレワークの実情に詳しいパソナの湯田健一郎リンクワークスタイル推進統括は、テレワークを続けるためのポイントを3つ挙げています。

1つ目は『できるところから』です。
湯田さんは「できる人、できる部門、できる時間から行い、できた人の事例を会社の中で広めていくといい。テレワークをずっとしている大手企業でも一気にやれたわけではなく、トライの積み重ねでできるようになった。少しずつトライすることが中小企業でも進めやすくなる心構えだ」と指摘します。

2つ目は『最新のツールを組み合わせる』です。
湯田さんは「スケジュールを管理するアプリでチームのメンバーの業務を見える化するなど無料で使える便利なツールがたくさんある。各自治体にあるテレワーク推進の部署ではツールを比較することができるほか、相談にも応じている」としています。

3つ目は『仕事以外の会話の機会を意識的に増やす』です。
湯田さんは「ある企業では午後3時になると一緒に体操をして体を動かすなどして、一体感をつくる工夫をしている。こうした取り組みの中でお互いが率直に話しあえるきっかけを増やしていくことが重要だ」と指摘しています。