川上麻衣子さん「強い恐怖と後悔」スタッフも一時危篤状態に

「コロナはただの風邪なんかじゃない、本当に怖いんです」

俳優の川上麻衣子さんは、去年11月に新型コロナウイルスに感染していることが分かり、陰性となったあとにも味覚障害や嗅覚障害などの後遺症に悩まされました。

さらに、自身の感染をきっかけに、ほかの人の命が脅かされ、強い恐怖と後悔にさいなまれたといいます。

同じ経験をしてほしくない。

川上さんからのメッセージです。

「弁当がすごく塩辛くて、変だな…」

民放のドラマ「3年B組金八先生」やNHKの大河ドラマ「秀吉」などに出演し、現在もドラマや舞台で活躍する、俳優の川上麻衣子さん(55)。

去年3月、親交のあった志村けんさんが新型コロナで亡くなったことをきっかけに、感染対策に気を遣ってきました。

そんな生活が続いた11月上旬、撮影のために向かった大阪で体の異変を感じたといいます。

川上麻衣子さん
「撮影が終わる頃にすごく疲れを感じました。あと、お昼に食べたお弁当がすごく塩辛かったんです。その時は『変だな』としか思わなかったのですが、いま振り返ると、コロナによる味覚障害だったんだと思いますね」

発熱や息苦しさ、体の節々に痛み

川上さんは大阪のホテルでその日の晩から発熱し、息苦しさや体の節々の痛みといった症状も出始めました。

さらに翌日、東京の保健所から「ご友人がコロナの陽性と確認されました。濃厚接触者にあたるので外出を控えてほしい」という連絡が。

「自分も感染しているかもしれない」という不安の中、慣れない出張先で検査を受け入れてくれる病院も見つからず、ようやく行き着いた医療機関で検体を数回検査した結果、陽性が確認されたのです。

川上麻衣子さん
「(陽性を告げられて)ぼう然とする感じですよね。実感もないし、これからどうしたらいいだろうというのが分からなかった」

高熱や体の痛みが続く状態で、見知らぬ土地で頼る人もいない状況の中、東京や大阪の保健所と何度もやりとりをした川上さん。

滞在していたホテルから陽性者専用の宿泊施設に移り、合わせて10日間の療養期間を過ごしました。

一緒に食事したスタッフが 一時 危篤状態に

しかし、コロナの恐ろしさはこれで終わりませんでした。

川上さんが発症する前に一緒に食事をした仲のよいスタッフがコロナに感染し、一時は危篤状態になるほど重症化してしまったのです。

幸い一命をとりとめたものの、川上さんは激しく後悔したといいます。

川上麻衣子さん
「一緒に食事をした時にお互いの直箸でつついてしまい、『いけないな』と思ったのを覚えていたんですよ。だから私がコロナと分かった時、すぐ彼女の顔が思い浮かびました。(彼女は)意識が戻るまで1か月くらいかかったんですけど、自分の調子がよくなっても気が気じゃないですし、自分がうつしてしまったという責任もあるし、後悔もある。本当に怖かったです」

長引く後遺症に苦しめられる日々

さらに川上さんを苦しめたのは、長引く後遺症でした。

川上麻衣子さん
「味覚異常が1か月以上あって、本当においしいと思えるまで時間がかかりました。嗅覚も発症から4日目くらいからにおいが全くしなくなって、嗅覚が戻っているのか分からない状態がしばらく続きました。本当の嗅覚に戻っているのか、今でも分かりません」

あとで後悔しないために

自分自身だけでなく、他人にも命の危険を及ぼしうるコロナの恐ろしさ。

同じ経験をする人を1人でも減らしたいという思いから、川上さんはメディアやSNSを通じて自身の経験を発信しています。

川上麻衣子さん
「コロナはただの風邪っていう人もいますが、そんなことは全然ないんです。私は直前まで元気だった人が一気に悪化する様子を見ているので、コロナを軽く見ないほうがいいし、油断は絶対にしないでほしい。特に若い人にとっては一番元気で動きたい時期なので、本当にかわいそうだと思いますが、自分が大丈夫でも誰かの命を奪ってしまうことがありうるので、一緒にもうちょっと我慢をしてほしい。コロナは大切な人ほどうつしてしまう可能性がある病気なんです。あとで後悔しないために、自分も感染しているという前提で行動してほしい。自分で気がつかない時にうつしているというのが、一番怖いんです」


(取材:科学文化部 記者 富田良)