新型コロナ重症者増加で… 東大病院がICUの運用を試算

新型コロナウイルスの重症患者が増える中、東京大学医学部附属病院が院内のICU=集中治療室の運用をシミュレーションしたところ、重症患者の受け入れを現在の最大10人からさらに4人増やすと、心筋梗塞や臓器移植など、新型コロナ以外で高度な治療が必要な患者の受け入れをおよそ3割減らす必要があることが分かりました。

東京大学医学部附属病院には、救急用のICUと一般の高度医療に対応するための2つのICUの合わせて3つのICUがあり、新型コロナの重症患者は救急用のICUの10床で対応してきました。

病院では、流行の第4波を迎え、重症患者が全国で増加していることから、院内の医療提供体制についてシミュレーションを行いました。

その結果、救急用のICUが満床となり、ほかの2つのICUでそれぞれ2人ずつ新型コロナの重症患者を受け入れた場合、必要な医療スタッフが増えることなどから、一般の患者を合わせて12人減らす必要があることが分かりました。
1か月当たりでは、心筋梗塞やくも膜下出血、臓器移植などの患者の受け入れを従来の129人から84人に、およそ35%減らす計算になるということです。
東京大学医学部附属病院救命救急センター・ERの土井研人准教授は「東大病院の役割としてコロナであってもコロナ以外であっても重症患者は引き受けることが求められていると思う。最大限、引き受けたいと思っているが、感染者数はなんとか減らしてほしい」と話しています。

大型連休後から重症者増加

東京大学医学部附属病院では、去年3月から先月までのおよそ1年間で、救急用のICUに合わせて100人余りの新型コロナウイルスの重症患者を受け入れてきました。

東大病院の救急用ICUは10床を個室で運用していて、新型コロナの重症患者を受け入れても感染対策ができることから、通常の救急患者も平行して受け入れることができるということです。

院内には、ほかにも心臓病の治療や臓器移植などの高度な治療に対応するICUが2つあり、それぞれ16床と18床のベッドがありますが、新型コロナの重症者を受け入れると人工呼吸器やECMO=人工心肺装置などの治療によい多くの医療スタッフが必要となることから、通常の患者の受け入れを減らすしかなくなるということです。

東大病院では、大型連休前後から新型コロナの重症患者の数が増え始め、最近は7人から8人ほどが入院していて、先週の時点ではこのうち2人がECMOの治療を受けているほか、新型コロナとは別の病気でECMOの治療を受けている患者も4人いるということです。

3つの大学病院と周辺医療機関が連携

新型コロナウイルスの重症患者をより多く受け入れるためには、回復に向かう患者にほかの病院に転院してもらい、重症者用の病症をあける必要がありますが、転院先が見つからないことが全国的な課題となっています。

そこで東京大学医学部附属病院と東京医科歯科大学医学部附属病院、それに日本医科大学付属病院の3つの大学病院は、共同で周辺の23か所の医療機関と連携して一括して転院先を探す「後方支援医療機関連携コンソーシアム」という取り組みを行っています。

地域の医療機関は、何人の患者を受け入れることができるかをオンライン上でシステムに登録していて、3つの大学病院で重症の状態から回復した患者が出た場合、事務局となっている東大病院の看護師が転院できる医療機関を探します。

これまでは病棟の医師が直接、転院先を探していましたが、事務局を設けて専門的に転院先を探すことで現場のスタッフの負担軽減につながるということです。

調整を担当するのは経験豊富な看護師で、例えば高齢の患者の場合、家族の状況や、介護が必要かどうかなど、受け入れ側の医療機関に必要な情報を的確に伝えることで転院後の治療の流れや治療の目標が分かりやすくなり、受け入れがスムーズに進むということです。

3つの大学病院では、これまでに20人余りの患者がこの仕組みで転院したということです。

調整を担当する東大病院・新型コロナ対策本部の山本千恵美看護師は「4月から調整の依頼が増え、5月に入ってからは毎日、依頼があるが、一両日中には転院先を決めることができている。自分自身も看護師なので、受け入れ側の病院が必要な情報を過不足なく伝えられるよう意識している」と話しています。