GDP 感染拡大で消費にブレーキ 知恵絞る現場

新型コロナウイルスの影響で実質の伸び率がマイナス4.6%となり、リーマンショックが起きた2008年度のマイナス3.6%を超えて、比較可能な1995年度以降で最大の下落となった昨年度のGDP。データでみると、この時期は、2度目の緊急事態宣言が出るなど新型コロナウイルスの感染の再拡大で、消費には再びブレーキがかかっていました。

個人消費

こちらのグラフは個人消費の動きをみる総務省の家計調査。
2人以上の世帯が消費に使った金額の変化がわかります。
2015年を100とした指数で見てみると、去年後半には増加した消費はことし1月から3月には再び低下。2度目の緊急事態宣言で、衣類や娯楽などの消費が大きく落ち込みました。

落ち込むコメ消費 飼料用米への転作進む

外食需要の落ち込みでコメの消費が減り、取引価格が下落する中、山形県酒田市では飼料用米への転作が進んでいます。

最上川が流れる酒田市は稲作が盛んで、業務用として需要が高い「はえぬき」という品種が多く栽培されています。

しかし、新型コロナウイルスの影響で外食需要が落ち込み、農林水産省によりますと、取引価格は、ことし3月には60キロ当たり平均1万4000円と、去年の同じ時期より8%余り下落しました。

こうした中、酒田市にある「庄内みどり農協」の管内では、豚などのエサの原料となる「飼料用米」への転作の動きが広がって、栽培面積は去年より200ヘクタール以上増え、管内の田んぼ全体の11%余りを占めるようになりました。

飼料用米はエサに加工されてすべて市内の畜産業者に供給されることから、農家にとって安定した収益が見込め、畜産業者にとっても品質の高い豚肉の生産に生かされているということです。

庄内みどり農協の渋谷佐一 常務は「主食用米の需要は回復したとは言えず、厳しい状況が続いている。飼料用米は契約が決まっているのでありがたく、連携しながら事業を進めたい」と話していました。

旅行・観光

こちらは国内のホテルや旅館の宿泊者数。
コロナの影響を除くため、2019年と比較しました。
ことしに入ってからも厳しい状態が続いています。

経営縮小しながら売り上げ増につなげた旅館も

観光需要が落ち込む中、経営を縮小しながら売り上げを増やし、黒字化にも成功したという温泉旅館があります。

青森県十和田市の奥入瀬渓流にある清水慶展さん(41)の温泉旅館は、3年前に営業を始めました。宿泊客による“密”を防ぐため、感染が広がり始めた去年3月から、10ある客室は6部屋だけを稼働させることにしました。

清水さんは、火曜から木曜の週3日を休みにしていて、趣味のツーリングを楽しみながら、野菜や魚などの地元の食材を探す時間に充てています。

生産者を訪ねて買い付けた食材を使ったこだわりの料理は次第に評判を呼び、去年、大手旅行サイトで“青森県ナンバー1”の宿泊施設に選ばれました。

部屋数を減らしながら去年の売り上げは前の年から1割以上増え、人件費などを抑えた効果もあり、コロナ禍の去年、初めて黒字化に成功したということです。
清水さんは「無理をせずに身の丈にあった営業で、青森の旅行を楽しむ手助けをしていきたいです」と話していました。

介助サービスのついた旅行で新たな需要掘り起こし

観光需要が大きく落ち込む中、旅行会社の中には介助サービスのついた旅行で高齢者などの需要を掘り起こそうという動きもあります。

山形市にある旅行会社の「山新観光」は新型コロナウイルスの影響でツアーの中止やキャンセルなどが相次ぎ、昨年度の売り上げは前の年度の3割以下に落ち込みました。

厳しい状況が続く中、去年、13人の添乗員全員が「旅行介助士」という民間の資格を取得しました。旅行介助士はツアーのプランを作成するだけでなく、高齢者などのそばに付き添い、体調の確認やトイレの手伝いなどの介助を行います。
ことし2月には、チャーター機で富士山などを眺めるおよそ2時間半のツアーを実施しました。参加者には事前に問診票が配られ、2日間でおよそ160人の高齢者などが参加しました。参加した高齢者は「旅行介助士が優しくしてくれてとても助かりました」と話していました。

今後は、ツアーの参加者にPCR検査のキットを送るなどさらに感染防止策を徹底して、需要の掘り起こしを図ることにしています。
五十嵐桂子 課長は「“介助”によって今まで旅行に行けなかった人が旅行に行けるようになる。ビジネスチャンスと捉えて取り組んでいきたい」と話しています。

企業活動

一方、生産は回復傾向が続いています。
企業の生産活動を示す「鉱工業生産指数」は去年5月に77.2まで低下しましたが、自動車の生産の増加などでことし3月には97.7とコロナ前の水準にほぼ戻りました。
経済産業省は「生産は持ち直している」と判断しています。

新しい分野に取り組む自動車部品メーカーも

新しい領域に踏み出した自動車部品メーカーもあります。

東京 青梅市にある従業員およそ150人の「武州工業」は、自動車のエアコンやラジエーターに使うパイプなどを製造しています。新型コロナウイルスの影響で去年6月には、売り上げが例年の3割程度に落ち込み、その後、8割程度まで戻りましたが、自動車の輸出の伸び悩みで回復は頭打ちだということです。

作業を効率化するため、従業員が目で行っていた検品作業を、AI=人工知能を活用して自動で行う装置の導入を進めています。

一方で、自動車の分野だけでは今後の成長は見込めないと考え、ペダルを踏むと消毒液が出るスタンドを開発し、ネットで直販する取り組みを去年の夏から始めました。頑丈さをアピールする動画も公開し、1台およそ1万7000円のスタンドが公共施設や病院などにこれまでに1800台が売れたということです。

さらに、市場の拡大を見込んで半導体製造装置の部品の製造に乗り出すことも検討しています。

林英夫 会長は「自動車業界で需要がどんどん拡大していく感じはしないし、新型コロナで生活スタイルも変わってきたので、今までと同じことをやっていってもダメだと思う。コロナ禍で新しいことに取り組むチャンスが増えてきたと考え、自分たちの力を生かせる仕事を探していきたい」と話していました。

輸出

輸出も増えています。
欧米向けの自動車などの輸出が増えたことで輸出額はことし3月、2年ぶりに7兆円を超えました。
こうした指標などをもとにことし1月から3月のGDPは集計されて発表されます。