キャンセルなどで余ったワクチンどうする? 知恵絞る自治体も

新型コロナウイルスのワクチン接種が行われるなか、急な予約のキャンセルなどで余ったワクチンの廃棄を防ごうと、各自治体は対策に知恵を絞っています。

新型コロナウイルスのワクチンは専用の冷凍庫で保管され、開封するとすぐに使い切る必要があります。
6日から75歳以上の高齢者を対象に、13の会場で接種を行っている東京目黒区では、全体の1割に当たるおよそ6000人に対して1回目の接種を終えましたが、急な予約のキャンセルなどで、これまでに20回分ほどのワクチンが余ったということです。

余ったワクチンは、医師や看護師など接種券を持つ医療従事者に接種しましたが、今後、接種が本格化し、夜間に余りが出た場合などにどうするか課題だということです。

このため目黒区は、接種券は持っていないものの、会場で誘導に当たるおよそ130人の民間企業のスタッフに回すことも検討しています。
新型コロナ予防接種課の吉田武広課長は「接種会場は医療現場とほぼ同じ環境で、スタッフにもワクチンを接種すべきだと考えている。国の方針が明確でなく、運用に当たって難しい面もあるが、柔軟に対応し、ワクチンの有効活用に向け取り組んでいきたい」と話しています。

また、東京都内で最も早く高齢者へのワクチン接種が始まった八王子市では、ワクチンが余り、ほかに接種券を持っている人がいない場合、会場の受け付けのスタッフなど希望する人に接種することにしています。

接種が始まった先月12日にキャンセルが出て、2回分のワクチンが余り廃棄することになったため、運用を見直しました。

一方、今月22日から集団接種が始まる練馬区では、ワクチンが余ると、翌日以降に予約している高齢者などと連絡を取り接種してもらうほか、付き添いで来た人も対象とすることにしています。
このほか、新潟県三条市はワクチンの廃棄を防ぐため、余ったワクチンを、事前に登録した市内の小中学校の教職員や保育士などに優先的に接種することを決めるなど、各地の自治体で独自の取り組みが進められています。

有効活用のためには…

ワクチンを廃棄することなく有効に使うためには何が必要なのか。
新潟大学大学院医歯学総合研究科の齋藤昭彦教授は「接種が急がれるなか、1人でも多くの人にワクチンが行き渡るためには、決してむだがあってはならない。高齢者に対する優先接種に加えて、今後、ワクチンが大量に入ってきた時に備え、自治体は医療従事者にとどまらず、社会や暮らしを支えるエッセンシャルワーカーなど、優先度が高い人たちもリスト化し、連絡できる体制などを整備しておくことが重要だ。国が自治体に判断を委ねている以上、各自治体は独自の工夫を凝らす必要がある」と指摘しています。

そのうえで「接種をスムーズに行うため、余ったワクチンを自治体の長や職員らに回すことも選択肢としてはあり得る。ただ、身内を優先したと受け止められるおそれもあるので、各自治体はきちんと説明を果たしていかなければならない」と話しています。

厚生労働省 「住民に説明がつく形で自治体ごとに判断を」

新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は、優先接種の対象となる範囲を自治体に示しています。

この中で「予防接種の会場で接種業務に従事し、感染者と頻繁に接する可能性があると自治体などが判断した人は、医療従事者に準じて優先接種の対象にできる」と定めています。

ただし、対象となるのは直接、接種会場で予診や接種などを行う人で、単に接種を受ける人の送迎や会場の設営を行う人などは含まれません。

このほか、保健所や宿泊療養施設で感染対策の業務を担当する人も対象になるということです。

一方、突然のキャンセルや体調不良でワクチンが余った場合は、近くの医療機関の医療従事者や接種券を持つ別の高齢者などに声をかけるよう求めています。

それでも接種を受ける人が見つからない場合は、廃棄せず、自治体の職員に接種することも含めて、現場で臨機応変に対応してほしいとしています。

厚生労働省は「基本的にはルールに従って接種を進めてもらいたいが、例外的なケースがあれば、住民に説明がつく形で誰に接種を行うかを自治体ごとに判断してもらいたい。ただ、全員が接種を受けられる量を確保していて必ず順番は回ってくるので安心してほしい」としています。