【詳報】3道県に“宣言” 当初の政府の方針変更 その背景は

14日開かれた基本的対処方針分科会では、群馬県や広島県など5県に「まん延防止等重点措置」を適用し、北海道の緊急事態宣言は見送るとしていた当初の政府の方針が変更され、北海道、岡山、広島の3道県を対象に、16日から緊急事態宣言が出されることになりました。出席者に取材すると、政府の諮問内容が初めて変更された背景には、3道県の感染や医療の状況に対する専門家の強い危機感があったことが分かりました。

14日午前7時から開かれた会合では冒頭で、群馬、石川、岡山、広島、熊本の5つの県を「重点措置」の対象に追加するという政府の方針が諮問されました。

出席者の1人によりますと、政府の方針について異論が相次ぎ、特に北海道、岡山、広島については
▽感染者数が急激に増加していること、
▽医療ひっ迫の度合いが極めて高いこと、
▽感染状況や医療体制の指標がおおむね「ステージ4」の段階にあること、
の3つの点から、ほぼすべての専門家が緊急事態宣言を出すべきだという意見を述べたということです。

具体的には、
▽多くの指標がステージ4に該当している現状で、行うべき対策は重点措置ではなく緊急事態宣言ではないかとか、
▽この状況で緊急事態宣言を出さないと、これまで宣言を出してきた判断と整合性がなく説明できない、
▽対策の効果を見るためにもう1週間待てるような状況ではないといった意見が出たとしています。

これに対して、内閣官房の担当者からは3道県の知事の意向を聞いたうえで、政府としては緊急事態宣言ではなく重点措置で対応したいとする説明が行われました。

具体的に岡山県や広島県では、感染者は地域の中心部に固まって見られ、ほかの地域に広がるような状況ではないことや、いま見ているデータは県独自の対策を行う前の状況を示していて、重点措置のもとで強い対策を行えば宮城県のように状況を改善できる余地があること、それに北海道では、酒類の提供を終日行わないよう飲食店に要請する対策や、道独自の医療非常事態宣言を出して対応すると確認したなどといった説明だったということです。

さらに議論が続き、専門家からは各地域の医療ひっ迫の状況は想像以上に厳しいといった指摘も出される中、午前9時ごろ、閣議への出席のため、一時退席していた西村経済再生担当大臣が会場に戻りました。

すると、西村大臣は当初の諮問を取り消して北海道、岡山、広島に緊急事態宣言を出すとする方針を改めて諮問することを表明したということです。新たな諮問に対しては専門家から反対意見はなく、全会一致で了承されました。

会合のあと、出席した専門家からは「会合では実質的に意見を政府とぶつけ合うことができた」とか「一度出した判断を政府に考え直してもらったことは初めてでよかったと思う」など対応を評価する意見が出されていました。

分科会 尾身会長「強い思い判断に反映」

分科会の尾身茂会長は会合のあと、NHKの取材に対して「ほとんどの専門家が北海道、岡山、広島に緊急事態宣言が必要だという認識で一致していて、政府と意見が異なってもしっかりと発信をすることが今まで以上に必要だという思いはあった。分科会に臨むにあたって、最悪の場合は、諮問を差し戻して政府に再検討をお願いし、あすもう一度分科会を開くというシナリオも頭にあった。政府には専門家の強い思いを判断に反映してもらったということだと思う」と話しました。

分科会 舘田教授「地域限定では抑制困難」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「北海道は札幌市を起点に感染が広がるリスクが高い地域だ。去年2月には札幌市で開かれた『さっぽろ雪まつり』から道内各地に感染が広がったとみられるケースもある。きのうも700人を超える感染者が出ていて地域に限った対策では拡大を抑えるのが難しいのではないかという意見が複数の専門家から出された」と話しています。

また、岡山県と広島県については「いずれも数週間にわたって感染が拡大し続けていて、最近は急激な感染者数の増加が見られている。また、新規感染者数だけでなく複数の指標でステージ4に相当するような数値となっている。地域を限定した対策だけでは感染拡大を抑えていくのが難しく、宣言を出して強く抑えることが必要な時期だという意見で一致した」と話しています。

宣言追加3道県 連休中も拡大

新たに緊急事態宣言の対象になることが決まった3つの道県では、大型連休中も感染拡大の傾向が続いていて、13日の時点で、前の週からおよそ2倍のペースで増加しているところもあります。

NHKは各地の自治体で発表された感染者数を元に、1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較してまとめました。

<北海道>

このうち北海道は先月初めまでは感染者数は減少傾向でしたが、その後、徐々に感染者数が増え始め、大型連休に入る前の先月22日までの1週間の平均はおよそ110人で前の週の1.36倍となっていました。

その後、先月29日は1.49倍、大型連休を含んだ6日までの1週間平均も前の週の1.35倍と高い水準で推移し、13日は2.09倍と急激に増加しました。

1週間平均の新規感染者数は1日当たりおよそ460人となっています。

<岡山県>

岡山県は、先月に入ってから感染拡大の傾向が見え始め、先月22日までの1週間平均は1日当たりおよそ45人で前の週の1.32倍となっていました。

先月29日は1.54倍、連休をはさんだ6日も1.33倍と増加のペースは十分には落ちず13日までの1週間平均はおよそ160人でその前の週の1.70倍と再び増加のペースが上がっています。

<広島県>

広島県も、先月初めから感染拡大の傾向が見え始め、先月22日までの1週間平均は1日当たり30人余りで前の週の1.99倍となっていました。

その後、先月29日までの1週間では前の週の1.57倍、6日は1.66倍と連休を含んだ1週間も増加のペースは下がらず、13日までの1週間平均は1日当たりおよそ180人で、前の週の2.17倍と急速に感染者数が増えています。