新型コロナ影響長期化 支援団体に20~40代からの相談増加

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、NPOなどでつくる支援グループは、これまでは比較的少なかった20代から40代の相談が増加し、状況は深刻化しているとして、生活再建に向けた支援が重要だと訴えています。

NPOなどでつくる支援グループ「新型コロナ災害緊急アクション」は、3回目の緊急事態宣言による影響が広がっているとして、大型連休中の今月3日と5日、東京 千代田区で食料の配布や生活相談を行いました。

2日間で、仕事を失ったり収入が大幅に減ったりして生活に困窮している人など延べ650人が訪れ、支援を受けました。

支援グループによりますと、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、これまでは比較的少なかった20代から40代の相談が増えているということです。

非正規雇用で働く人が契約を更新されない「雇い止め」で仕事を失ったり、失業の期間が長期化し貯蓄がなくなるなど追い詰められたりするケースが目立つということです。

社会福祉協議会が窓口となり当面の生活費を借りることができる国の「緊急小口資金」や「総合支援資金」などを利用していますが、「これ以上、支援制度を使うことは難しく、どうすればいいかわからない」という相談も多いということです。

一方、支援団体もスタッフや資金の不足により、活動ができなくなったり縮小せざるをえないケースも出てきているということです。

支援グループ「新型コロナ災害緊急アクション」の佐々木大志郎さんは「新型コロナウイルスの影響が長期化する中、民間の支援団体ができるサポートも限界がきていると感じている。国は実態に合わせた支援を改めて検討すべきだ」と話しています。

3回目の緊急事態宣言「さらに追い詰められる」

3回目の緊急事態宣言による影響で仕事ができなくなり、経済的にさらに追い詰められる人が出ています。

東京都に住む八木倫明さん(63)はフリーランスの演奏家として、劇場や文化ホールなどでコンサートを開いています。

南米の縦笛「ケーナ」の奏者で、新型コロナウイルスの感染拡大前はみずからコンサートを開いたり、依頼された演奏会に参加したりして、1年間に合わせておよそ50回の演奏を行っていました。

しかし緊急事態宣言が相次いで出されたことで、多くのコンサートが延期や中止を余儀なくされ、この1年間で開催できたのはこれまでの半分以下にとどまりました。

今月30日にも都内で演奏会を企画していましたが、3回目の緊急事態宣言の期間が延長されたため開くことはできず、2か月後に改めて開催することにしています。

また、これまでは座席が数百あるホールでのコンサートも頻繁に開いていました。

しかし去年の感染拡大以降は、レストランなどを会場にした10人程度の小規模なものが多くなりました。

感染拡大前は演奏による収入は年間およそ120万円ありましたが、大幅に減少しました。

年金などで1か月に10万円余りの収入はありますが、生活費や家賃などに使うとお金は残りません。

1日の食事の回数を減らすなど生活費を切り詰めていますが、30万円ほどあった貯金を取り崩して暮らしていて、今はおよそ10万円しか残っていません。

国の持続化給付金を69万円受けたほか、社会福祉協議会が窓口となっている貸し付け金「緊急小口資金」で20万円を借りましたが、以前のようにコンサートを開くことができず、収入は減少したままです。

八木さんは感染拡大の影響が長引くと生活が立ちゆかなくなると考えていて、今月に入り、パートの仕事を探しているほか、社会福祉協議会に相談をして、別の貸し付け金を借りることも検討することにしています。

八木さんは「確実に返済できるめどが全くない状況で、安易に借金もできません。ただ、このままの状況が続くと、さらに追い詰められてしまいます。国には給付金の支給などの支援を検討してほしい」と話していました。

相談の実態は

労働組合や弁護士、NPOなどでつくる支援グループは去年4月から先月まで2か月ごとに全国一斉の電話相談会を開いていて、相談の件数や内容などをまとめました。

それによりますと、去年の6月は1217件、10月は782件、12月は522件、ことしは2月は716件、先月は669件の相談が寄せられました。

相談を通じて収入を把握できた人のうち、月収10万円以下と答えた人の割合は、6月は58.5%(189人)でしたが、12月は68.9%(122人)、2月は66.5%(179人)、先月は66.8%(133人)となっています。

所持金について答えた人のうち、1万円以下だった人の割合は、6月は22.7%(37人)、8月は31.2%(29人)、10月は51.3%(115人)、12月は59.6%(99人)、2月は50%(104人)、先月は51.4%(94人)となっています。

支援グループによりますと、先月行った電話相談では「国の貸し付け制度はこれ以上利用できない状況で、ほかに利用できる制度はないか」とか「会社から次に緊急事態宣言が出されると解雇せざるをえないと言われていて、どうしたらいいのかわからない」などの相談が寄せられたということです。

支援グループ「コロナ災害を乗り越えるいのちとくらしを守るなんでも電話相談会実行委員会」は「3度目の緊急事態宣言の影響で、状況はさらに深刻化しているとみられ、国には生活保護などの制度について一層の周知を行うよう求めていきたい」としています。

支援制度の現状は

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、厚生労働省などは支援制度の活用を呼びかけています。

当面の生活費を借りることができる国の「緊急小口資金」と「総合支援資金」は、新型コロナウイルスの影響による失業や休業で収入が減少した人も対象とするなどの特例措置が行われています。

この特例措置は申請の期限が来月末までとなっています。

「緊急小口資金」は20万円を上限に、「総合支援資金」は2人以上の世帯の場合、1か月20万円を上限に、3か月間借りることができ、合わせて最大80万円が上限となっています。

2つの制度とも無利子ですが、あくまで貸し付け、いわゆる「借金」をすることになります。

支援団体によりますと、この制度を利用した人からは「利用したが返済できるか心配だ」「すでに多額のお金を借りていて、他に利用できる制度はないか」などの相談が寄せられているということです。

国の「住居確保給付金」は仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度で、支給期間は原則3か月、最長で12か月となっています。

いったん支給を終えた人が生活に困窮した場合は、3か月間、再び支給を受けられますが、その受け付けの期限は来月末までとなっています。

また「持続化給付金」は中小企業などに最大200万円、個人事業主の場合に最大100万円を支給するものです。

経済産業省によりますと、支給を受けることができるのは1事業者1回で、申請の受け付けは終えているということです。