変異ウイルス 重症化リスク1.40倍 報告書まとめる 国立感染研

感染力が強い変異した新型コロナウイルスに感染したケースについて、国立感染症研究所が分析したところ、届け出があったときに重症であるリスクは、従来のウイルスなどと比べて1.40倍だったとする報告書をまとめました。
この結果だけで重症化リスクを正確に評価するのは難しいとしていますが「現時点では、重症度が高くなっていることを想定して対策を取る必要がある」としています。

国立感染症研究所は、今月6日までのおよそ3か月間に国内で報告された20万7000人余りのデータをもとに、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスの重症化リスクを解析しました。

この間、PCR検査などでこの変異ウイルスへの感染が確認されたのは1万5000人余り、このうち、重い肺炎や多臓器不全など、重症だったのは475人で、届け出があったときに重症であるリスクを分析すると、従来のウイルスなどと比べて1.40倍高く、さらに40歳から64歳では1.66倍だったとしています。

研究所は、従来のウイルスの場合、データが入力されないケースなどもあり、この結果だけで重症化リスクを正確に評価するのは難しいとしていますが「現時点では、重症度が高くなっていることを想定して対策や治療を行う必要がある」としています。

鈴木基感染症疫学センター長は「特に40代から50代でリスクが高い傾向が見られ、従来株とは異なる特徴が現れたと考えている」と話しています。

また、インドで確認された変異ウイルスについて、国立感染症研究所は、日本国内でも大半を占めるようになった変異ウイルスと同程度に感染力が高い可能性を考慮し、拡大を防ぐ対策が求められるとして、12日付けで「懸念される変異株」に位置づけました。

全国各地で9割前後 変異ウイルスに置き換ったと推定

感染力の強い変異した新型コロナウイルスが各地でどれくらい広がっているか国立感染症研究所が今月上旬までのデータを基に推定したところ、全国各地で9割前後が変異ウイルスに置き換わっていると見られるとする分析結果をまとめました。

国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は11日行われた専門家会合で、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスについて、民間の検査会社で検出された結果をもとに地域ごとの広がりを推計したデータを示しました。

それによりますと、国内で最も早く変異ウイルスが広がった大阪府と兵庫県、京都府では、3月から先月にかけて急速に広がり、先月初めに7割あまりになったあと、現在ではほぼすべてが変異ウイルスに置き換わったと推定しています。

また、東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県や北海道や愛知県、福岡県、沖縄県でも先月中旬ごろから急速に置き換わりが進んでおよそ9割となり、これまで比較的変異ウイルスの感染が少なかった宮城県でもすでに9割近くが置き換わったとみられるとしています。

鈴木センター長は「明らかに感染力が強く対策にさらに長い時間をかけないと、感染者数が減少していかない。全国でほぼ変異株に置き換わったいま、前回の緊急事態宣言のときと同じような感覚で対策の効果を期待しても、なかなか効果が現れない」と話しています。