全国のワクチン接種システム 完全に復旧 クラウドサービス会社

インターネット上のクラウドで顧客管理など、さまざまなサービスを提供するアメリカの「Salesforce」のシステムに障害が発生し、このシステムを使う日本の厚生労働省のワクチン接種の管理システムなどに影響が出た問題で、セールスフォース・ドットコムは完全に復旧したと発表しました。

セールスフォース・ドットコムによりますと、日本時間のけさ6時すぎ、社内の技術担当チームがインターネット上のクラウドで提供している複数のサービスで、障害が発生していることを確認しました。

このクラウドサービスは、世界中の企業や行政機関などで利用されていて、日本でも厚生労働省の新型コロナワクチンの管理システムや自治体の予約システムなどで、不具合が出るなどの影響が出ました。

会社によりますと、日本時間の午前11時20分にすべて復旧したということです。

原因はシステムの緊急修正プログラムを動かした際に、ソフトウェアの問題を引き起こしDNSと呼ばれる、インターネットのドメインなどを管理するシステムに障害が起きたためということです。

セールスフォース・ドットコムの日本法人は「サービスをご利用の皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」とコメントしています。

専門家「事故に備え 情報共有を図る体制必要」

今回トラブルが発生した「Salesforce」のシステムは、セールスフォース・ドットコムがクラウド上に作ったソフトウエアのサービスを企業や自治体などの利用者が相乗りして使うものです。

企業や自治体がソフトウエアを導入する場合、従来は、専門の業者に委託して開発からテストまで時間をかけて行い独自のものを採用することが多かったのに対して、クラウド上にあらかじめ用意されたソフトウエアがすぐに使えることから利用が増えていて、ソフトウエア・アズ・ア・サービスと呼ばれています。

デジタル政策に詳しい、ジャパン・デジタル・デザインの楠正憲さんは「ワクチン管理やワクチン予約のシステムは、コロナ禍で短期間に作る必要性があり、できあがった仕組みの上で、構築することは合理的な判断だ」としています。

そのいっぽうで楠さんは「一般的に、クラウドに集約してサービスを運用するからこそ、優秀なエンジニアが安定して運用できるメリットがあるが、一つのトラブルが非常に大きな影響を及ぼすという側面もある。今後、利用の拡大でこうしたケースは増えていくと考えられる」と指摘しています。

そのうえで対策として、セールスフォース・ドットコムのようなソフトウエアの提供側は「多くのシステムを支えるようになっている責任を意識し、まずは何よりも事故を起こさないことが重要だが、起きた場合には、何が起きているのかを関係者などに速やかに報告し、情報共有を図る体制を取るなど影響を最小限に抑える仕組みを整えておくことが必要だ」としています。

また、ソフトウエアを利用する自治体などは「トラブルが起きたときにどう住民に周知するかをあらかじめ決めたり、クラウドが復旧してもシステムがすぐに動くか事前に検証したりしておくなどトラブルを想定した準備が大切だ」と話していました。