1人ランチでも感染?変異ウイルスどうしたら…

1人ランチでも感染?変異ウイルスどうしたら…
新型コロナの感染が急拡大した要因の1つと見られている変異ウイルス。

ネット上では不安の声が急増しています。

感染力はどのくらい強いの?
どんな症状が出るの?

わからないことが多い変異ウイルスについて、感染した人や患者を診た医師に話を聞きました。
(ネットワーク報道部 井手上洋子 谷井実穂子 斉藤直哉)

SNSでも関心高まる変異ウイルス

新型コロナの変異ウイルスの感染者が日本国内で初めて確認されたのは去年12月末。

それ以降、ネット上には不安を訴える投稿が増え続けています。

ツイッターでは4月だけで「変異ウイルス」や「変異株」に言及した投稿がリツイートを含めておよそ200万件に上っています。
「インド株まん延したら日本終わる」
「子どもたちが感染したらって考えると本当に怖い」
特にここ数週間はインドで感染が爆発的に広がっていることが不安の高まりにつながっているようです。

感染者が語る症状とは

変異ウイルスはいったいどんな症状があるのか。
感染したという神戸市に住む50代の前半の男性に話を聞きました。
男性
「高熱がずっと続いたうえに、すごくのどが渇いたりのどに痛みが出たりしてどうなるのか不安でした」
男性はことし3月末、友人が新型コロナウイルスに感染して濃厚接触者となり、その後の検査でイギリスで最初に見つかった変異ウイルスに感染していることがわかりました。

男性を苦しめたのは高熱と激しい腰の痛み。

感染が判明した直後から40度近い熱が1週間以上も続きました。

また腰の痛みは眠っていてもたびたび起きてしまうほどだったそうです。
さらに医療機関で治療が受けられなかったことが男性を追い詰めました。

感染が分かった当時、神戸市では新型コロナの患者が急増し、専用病床の使用率が8割を超えるなど医療体制はひっ迫していました。
男性は入院を希望しましたが自宅療養となり、保健所に「病院で診てもらいたい」と何度訴えても「調整します」と言われるだけで受診の日は決まらなかったといいます。
男性
「当時は変異株についての情報がほとんどなく、40度近い熱が出ているのに病院に入れず、薬ももらえずもうおしまいだと思いました」
結局、家にあった解熱剤を飲んで耐え続け、感染が分かってから2週間ほどたった4月上旬になってようやく熱は下がりました。

PCR検査でも陰性となりましたが、いまでも、けん怠感や腰の痛み、のどの違和感が続いているということです。
男性
「感染してつらかった経験がいまでもトラウマのようになっていて、抗体ができているはずなのにまたうつされたり誰かにうつしてしまったりと考えてしまうと外出するのも仕事に行くのも怖いです。保健所の人から変異株は感染力が強いと聞いているのでほかの人もウイルスを広げないよう手洗いや不織布のマスクなどを徹底してほしいと心から思います」

医師も変化を実感 リモートワークでも感染…

医師
「最近では感染対策はばっちりと思っていたような人も陽性になっています」
こう語るのは、東京都内でクリニックを経営する内科の医師です。

感染が確認される人に大きな変化が起きているといいます。
医師
「これまでは頻繁に会食をした人など感染対策が十分でなかったと思われる人が陽性になることが多かったのですが、最近では『どこで感染したのか全く心当たりがない』という人の感染が目立ちます」
例えば、リモートワークで出勤は一切しておらず外出は1人でランチをしにカフェに出かけただけ。
店内でも、ほかの客とは距離をとって座っていたのに感染したという人もいたそうです。

この医師のクリニックでは感染が疑われる人には積極的にPCR検査を行っていて、ことし2月ごろから陽性となる人が右肩上がりで増加。
変異ウイルスかどうかを調べる詳しい検査はすべての患者で行われているわけではありませんが、保健所から医師のもとに変異ウイルスだったと連絡が来ることが相次ぐようになっているそうです。
医師
「空気中を漂う飛沫から感染したのかはっきりとした原因はわかりませんが、対策を徹底していても人と密にならなくても、感染している人がいます」
さらに若い世代でも重症化するケースがあったといいます。
医師
「30代の男性が重症化して急きょ入院したケースもありました。あと50代前半の男性が、受診の予約をしたのになかなか来ないので、心配になってクリニックの外の様子を見に行ったら、道端で倒れていたということもありました」

変異ウイルスが7割超、主流に

日本では、新型コロナの感染が確認された人の一部に、変異ウイルスかどうかのスクリーニング検査が行われています。
そのデータを見ると、この2か月ほどで感染者に占める変異ウイルスの割合が従来のウイルスよりも多くなっていることが分かります。

5月2日までの1週間の速報値では、全国の新規感染者のうち73%が変異ウイルスに感染していました。
変異ウイルスへの感染者割合が高い主な地域
▽兵庫県 88%
▽福岡県 84%
▽大阪府 83%
▽北海道 78%
▽愛知県 77%
▽東京都 64%
変異ウイルスは、日本国内でもすでに主流になっているのです。

ただ、厚生労働省によりますと、スクリーニング検査で調べているのはイギリスと南アフリカでそれぞれ最初に見つかったものやブラジルで広がった変異ウイルスだけ。

感染が爆発的に拡大しているインドで広がっている変異ウイルスについては、この検査では、わからないということです。

インドの変異ウイルスは新たな脅威?

日本でもすでに確認されているインドの変異ウイルスは、新たな脅威となりうるのでしょうか。
濱田 特任教授
「インドで猛威をふるっているウイルスが“インド型”の変異ウイルスなのか“イギリス型”なのか、はっきりしたことは分かっていません。また感染力が強いということは言えると思いますが、その重症度については分かっていません。ただし今、日本で広がっているイギリス型の変異ウイルスはこれまでに比べて鼻やのどにくっつきやすく体に入ってきやすい。若い世代でも重症化することがわかってきています。感染は、ひと事と思わずに自分にも起こりうると自覚してほしい」

私たちにできることは

今回の取材では、対策をしていても感染したケースがあることが分かりました。

1人でランチをしただけでも感染するかもしれないと思うと、どう対策すればいいのか途方に暮れてしまいます。

私たちにできることはあるのでしょうか。
濱田 特任教授
「さまざまなことを自粛する生活が続いて疲れてしまったという人もいると思いますが、感染しないためにはマスク着用や手洗いなどこれまで言われている対策をとにかく心掛けてほしい。例えばマスクを外す食事の際は食べることに専念してしゃべらない。外食ではアクリル板が用意されている場所を選び、ほかの人と適度な距離を保つ。重要なのは基本的な対策の徹底です」