全国知事会 各知事から変異ウイルス拡大を危惧する声相次ぐ

緊急事態宣言の延長などを受けて、全国知事会の会合が開かれ、知事からは変異ウイルスの拡大を危惧する声が相次ぎました。知事会は、簡単に再拡大しないレベルにまで感染を抑えることなどを求める緊急提言をまとめました。

緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大が決まったことなどを受けて、全国知事会はオンラインで会合を開き、47都道府県すべての知事が参加しました。

この中で、東京都の小池知事は「新たな局面を迎え、感染爆発の危機と隣り合わせの状況だという認識が必要だ。大規模施設などへの休業要請の協力金は、国からは従来より大幅に下回る補助率が示されたが、このままでは協力金の支給は不可能となって休業要請の実効性にも支障をきたしかねない状況だ」と述べました。

大阪府の吉村知事は「変異ウイルスの極めて強い感染拡大力を目の当たりにしており、従来のウイルスとは違うという認識は絶対に必要だ。状況を大きく転換するにはワクチンしかなく、都道府県も接種の主体となれるようにするなど柔軟な対応が必要だ」と述べました。

また、宣言の対象地域に加わることになった愛知県の大村知事は「春休みと大型連休で人の移動が相当出ていて、今の感染拡大につながっている。国にもいろんな媒体を使って都道府県をまたぐ移動は極力控えることを強く働きかけてほしい」と述べました。

このほかの知事からも変異ウイルスの拡大を危惧する声が相次ぎ、全国に緊急事態宣言を出すよう求める声や「まん延防止等重点措置」は国との協議に時間がかかるなど使い勝手が悪いという指摘が出されました。

そして会合では、国への緊急提言をまとめ、
▽簡単に再拡大しないレベルにまで感染者数を減少させるための徹底的な措置を実施することや、
▽ワクチン接種の加速化に向け、医療従事者の確保へのあらゆる支援を行うこと、
それに、
▽感染拡大によって深刻な影響を受けている全国の事業者に対し、地域によって差が生じないように支援を行うことなどを求めています。

東京 小池知事「国が責任を持って財源措置を」

東京都の小池知事は全国知事会の会合にオンラインで参加し、都内は新型コロナウイルスの感染爆発の危機と隣り合わせの状況だという認識を示したうえで、今月31日まで延長された緊急事態宣言の期間中、徹底して人の流れを抑え込みたいという考えを示しました。

この中で小池知事は、都内の新型コロナウイルスの感染状況について「厳しいたたかいが続いている。流行の主体が感染力が強い変異ウイルスに置き換わっている新たな局面で感染爆発の危機と隣り合わせの状況だ」という認識を示しました。

そのうえで今月31日まで延長された緊急事態宣言の期間中、大型商業施設への休業要請などを通じて、徹底して人の流れを抑え込みたいという考えを示しました。

また休業要請に応じた施設への協力金の支給にあたり、国から都への財政支援が従来より大幅に引き下げられると指摘したうえで「協力金の支給が難しくなって、休業要請の実効性に支障を来しかねない。国が責任を持って財源措置を行い、これまでと同じ負担割合にするよう早急な見直しを強く求める」と述べました。

神奈川 黒岩知事「変異株 大きな影響か」

神奈川県の黒岩知事は、県内の新型コロナウイルスの感染者数が9日に、3月に緊急事態宣言が解除されたあと、最も多くなったことについて「変異株が大きな影響を与えている可能性がある」として、感染防止対策の徹底を改めて訴えたいと話しました。

神奈川県内の新たな感染者の数は、この週末に2日続けて300人を超え、9日は338人と、3月に緊急事態宣言が解除された後、もっとも多くなりました。

これについて黒岩知事は「まん延防止等重点措置の適用から2週間たち、効果を期待したが、逆に増えてしまった。変異ウイルスが大きな影響を与えている可能性があるので緊張感を持って推移を見守るとともに、基本的な感染防止対策の徹底を呼びかけていきたい」と述べました。

県によりますと、先月26日から今月2日までの1週間に陽性が確認された1646人のうち、617人について検査した結果、59.3%にあたる366人が「N501Y」の変異があるウイルスだったということです。県内で変異ウイルスの割合が50%を超えたのは、これが初めてです。

また黒岩知事は、各自治体で行われているワクチンの接種について「総理が7月中にすべての高齢者の接種を行うと明言しているので、なんとしても実現するため、市町村と一体となって取り組みたい」と話していました。

千葉 熊谷知事「水際対策の強化を」

「まん延防止等重点措置」の適用が今月末まで延長された千葉県の熊谷知事は、全国知事会の新型コロナウイルス緊急対策本部の会合で、県内の現状について「感染者数がじりじりと増加している。県全体の病床稼働率は32.2%だが、東京に近い県北西部の地域の病床稼働率は40%を超えてかなり上昇が進み、厳しい状況となっている」と述べ危機感を示しました。

また県内に成田空港があることを受け、熊谷知事は「世界各国で新たな変異株が確認されている状況などを踏まえ、入国制限の緩和の時期を国には慎重に判断していただき特に変異株の流行している国や地域からの入国について、より強い制限措置とするなど国としての水際対策の強化を強くお願いしたい」と述べました。

埼玉 大野知事「都内移動で大規模接種 現実的でない」

埼玉県の大野知事は10日に開かれた全国知事会のテレビ会議で国が東京と大阪で設置する新型コロナウイルスのワクチンの大規模な接種会場について「東京の会場は関東1都3県の高齢者が接種対象となっているが、現在東京都には緊急事態宣言が発令されていて感染リスクの高い高齢者に都内に移動していただくことは現実的とは思えない」と述べました。

そのうえで「国が各都道府県に大規模な接種会場を設けることが望ましいが、困難な場合は、各都道府県がそれぞれ接種会場を設けることが有効な手段となる。都道府県がワクチンの接種会場を運営できるよう制度を改めてほしい」と述べました。