WHO 中国 シノファーム製のワクチンを緊急使用のリストに追加

WHO=世界保健機関は、中国国有の製薬会社シノファームの新型コロナウイルスのワクチンを緊急使用のリストに加え、シノファームに対し国際的な分配の枠組みへの協力を求めました。

WHOのテドロス事務局長は7日、中国国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表しました。

リストには、これまでにアメリカのファイザーなど欧米の製薬会社などが開発したワクチンが加えられていますが、欧米以外では初めてです。

これにより、シノファームのワクチンは、WHOなどが主導する国際的な分配の枠組み「COVAXファシリティ」を通じて各国に供給できることになり、WHOはシノファームに対しCOVAXへの協力を求めました。

COVAXは、来月までに分配する予定のワクチンの7割余りをインドで製造されるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンに頼っていますが、インド国内の感染状況の悪化を背景に供給が大幅に遅れています。

WHOとしては、シノファームのワクチンのリストへの追加で、途上国へのワクチンの分配を加速させたい考えです。

COVAXの厳しい現状

WHO=世界保健機関などが主導するワクチンを公平に分配する枠組み「COVAXファシリティ」はことし2月、来月までに世界145の国と地域に3億回分を超えるワクチンを分配する計画を発表しました。

しかし、COVAXが7日までに分配できたワクチンは、121の国と地域に対して5400万回分余りで、分配は当初の計画よりも大幅に遅れています。

COVAXでは、来月までに分配する予定のワクチンの7割余りをインドの工場で製造されるアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンに頼っていますが、インドでの感染状況の悪化を背景に、COVAXへの供給は滞っています。

遅れを取り戻そうと、COVAXは今月3日、アメリカの製薬会社モデルナから5億回分のワクチンの供給を受ける契約をしたと発表しましたが、供給が始まるのはことしの後半の見通しです。

WHOとしては、COVAXで分配できるワクチンの種類を増やそうと、世界各地で開発されたワクチンについて、緊急使用のリストに加えることができないか、有効性や安全性の審査を進めています。

シノファーム製のワクチンとは

今回、WHOが緊急使用のリストに加えた新型コロナウイルスのワクチンは、中国国有の製薬会社シノファームが開発したワクチンのうち傘下にある北京の研究所が開発したものです。

このワクチンは、感染する能力を失わせたウイルスを使う「不活化ワクチン」というタイプで、中国政府は去年12月に安全性や有効性の基準に達したとして、中国国内での使用を承認しています。

WHOに助言する諮問委員会は、複数の国で行われた第3段階の臨床試験の結果、このワクチンの有効性について、78.1%だったとするデータをホームページ上に公表しています。

また接種した場合、接種した部分への痛みや頭痛、けん怠感といった副反応が起きることがあるものの、ほとんどが軽度から中等度だとしています。

中国メディアによりますと、このワクチンは2度から8度という温度で保管できるため、輸送や保管も容易で途上国も導入しやすく、すでに45の国や地域で使用が認められているということです。

中国ではこのワクチンのほか、シノファームの別の研究所が開発したワクチンや製薬会社のシノバックが開発したワクチンなどが承認され、大規模な接種が行われていて、6日までの国内の接種回数は、延べおよそ3億回に上っているとしています。