尾身会長「今回の宣言解除 今まで以上に慎重に行うべき」

菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は「緊急事態宣言の解除にあたっては、感染の状況がステージ3に入ってさらにステージ2の方向に安定的に下降傾向がみられることが非常に重要だと思う。特に感染者数よりも医療のひっ迫が改善されていることが重要な要素だ。さらに変異株の影響が極めて重要で、今回の宣言解除を判断するときは今まで以上に慎重に行うべきだと思う」と述べました。

下げ止まったから解除すると必ずリバウンドがおこる

そのうえで、今後の感染状況について「感染者数は少ないのが理想だが宣言を続けたとしても、数が下げ止まりとなる可能性がある。ただ、下げ止まったからといってすぐに解除すると必ずリバウンドがおこる。必要な対策を続けながら、下げ止まったとしても2、3週間はぐっと我慢することでリバウンドまでの時間を稼ぐことができる。解除したあとに『まん延防止等重点措置』をしっかり活用することも重要だ」と述べました。

軽い症状がある人に対する検査 積極的に行う必要

尾身茂会長は変異ウイルスが拡大する中で政府に求められる対策について「広島で行われた大規模なPCR検査では、症状がある人の陽性率が9%に達したのに対し、症状がない人の陽性率は1%にとどまった。また、別の自治体では、けん怠感など体の不調があっても、7%から10%は仕事や勉強で出ていることが分かっている。これらのことから言えるのは病院に行くほどでないくらいの軽い症状がある人に対する検査を積極的に行う必要があるということだ。健康観察アプリと合わせて簡便な抗原検査キットを活用し感染が確認されたら、周辺の無症状の人に対して広範にPCR検査を行って大規模なクラスターの発生を防ぐ、積極的検査を進めてほしい」と述べました。

ワクチン接種が進むまでリバウンド防ぐ対策を

また尾身会長は、西村経済再生担当大臣の会見に同席し「今後、高齢者を中心としたワクチン接種が進むまでの間に感染の大きなリバウンドを防ぐことが非常に重要だ」と述べました。

そのうえで、政府に求める対策として、
▽結果がすぐに分かる抗原検査キットを活用した無症状者を含めた積極的な検査の実施、
▽診療所の役割強化や新型コロナウイルスの感染拡大を災害医療と捉え、国が医療体制確保に積極的に関与すること、
▽大きなリバウンドを防ぐため、ちょうちょなく早期に強い対策を打つこと、
▽高齢者のワクチン接種を迅速に行うこと、
▽変異ウイルスの状況を踏まえた水際対策の強化、
▽適切な感染対策を行っている飲食店の認証制度の強化、
それに
▽若者との対話などコミュニケーションの強化の7つのポイントを挙げました。

尾身会長は緊急事態宣言の延長について「今回の緊急事態宣言は、2回目の宣言より強い対策を大型連休に集中して行うということで人流は下がったが、感染者が減る効果が出るまでには時間がかかる。人の接触は減っているが、変異株の影響もあり、専門家としては短期間では解除が難しいということは織り込み済みだと考えていた。高齢者を中心にワクチンが行き渡るまで、行動変容と感染対策への協力が不可欠だ。もう一歩改善するために国として何を目指し、これから数か月間具体的にどんな対策をするのか、しっかりと示すよう求めたい」と述べました。