厚生労働省の専門家会合 緊急事態宣言の効果などを分析

来週に迫った緊急事態宣言の期限を前に、新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれました。全国で重症者や亡くなる人の数の急速な増加が続き、4月中旬以降、大阪だけでなく、東京でも20代から50代で重症化する人の割合が高くなっているとしており、感染力が高い変異ウイルスへの置き換わりが進む中で、大型連休の後も強い対策が改めて必要だとしています。

専門家会合では、
▽緊急事態宣言が出されている東京や大阪などでの人出の変化や感染者数の推移などのほか、
▽危機的な状況が続く関西の医療体制などを中心に分析が行われました。

この中で、感染状況について、依然として感染者数は全国で増加傾向で、重症者や亡くなる人の数の急速な増加が続き、4月中旬以降は大阪だけでなく、東京でも重症者に占める20代から50代の比較的若い世代の割合が高くなっているとしています。

このうち、感染状況が最も深刻な関西では、繁華街の人出が大幅に減少している一方、感染者数が多いまま、横ばいが継続するという予測もあるとして、少なくとも今月中旬までは注視することが必要としています。

医療体制については、大阪府や兵庫県で救急搬送が困難になるケースが増え、一般の医療を制限せざるをえない危機的な状況になっているほか、自宅や施設で療養している患者の症状が悪化した際の対応も困難になっているとして、新規感染者数を減少させることが必要だと強調しました。

また、首都圏については、特に東京都で緊急事態宣言後に繁華街などでの人出の減少が見られたものの、感染者数が減少に向かわず、大型連休のあとも新たな感染者の増加が継続する可能性があるとしています。

医療体制については、自宅や施設で療養する患者や入院調整中の人が増加し、負荷が増大することが懸念されると指摘しています。

他の地域でも、
▽福岡県では、感染者数や重症者数が大きく増加し、関西と同様の感染拡大につながる可能性もあり、速やかな対応が必要としたほか、
▽北海道でも、札幌市を中心に重症者が増加して入院患者数は年末年始の第3波を超えたと指摘し、大型連休のあとも新たな感染者数の急速な増加が続くことが予想されるとして、感染抑制につなげるための強い対策をちゅうちょなく行うべきだと強調しています。

また、専門家会合は、緊急事態宣言の対象地域などで感染力の強い変異ウイルスへの置き換わりが進む中、まん延防止等重点措置の効果が一定の範囲にとどまったことを踏まえ、大型連休のあとでも強い対策が改めて必要だと強調しました。

さらに、不織布のマスクの着用や密閉、密集、密接のいわゆる「3密」が重なる場面だけでなく、2つや1つだけが当てはまる環境でも感染リスクがあることについて、改めて周知することが必要だとしています。

これらに加えて、専門家会合はワクチン接種について重症者や感染者の数が抑制されることが期待されるとして、国と自治体が連携して可能なかぎり速やかに多くの人に接種を進めるよう求めました。

田村厚労相「感染者数 まだ十分に下がっていないかも」

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭「東京と京阪神に緊急事態宣言を出してから12日が経過したが、検査件数を考えると、感染者数はまだ十分に下がっていないかもしれない。緊急事態宣言により、東京や大阪の人の流れは、特に夜間の繁華街では、去年の4月、5月に近いような形で減っているという数字も出ているので、感染者数がどうなっていくのかも含めて、専門的な意見をいただきたい」と述べました。

また、医療提供体制について「関西圏を中心に非常に厳しい状況だ。東京でおよそ6割、全国的にも5割くらいが、変異ウイルスに置き換わってきているのではないかということで、非常に感染のスピードが速い。また、重症患者の数は、遅れて増えてくるので、まだピークを過ぎていない状況だと思っており、できるかぎりの支援をしたい」と述べました。

緊急事態宣言 判断のポイントは

東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に出されている緊急事態宣言をめぐって、政府は、関西の3府県は延長する方向で検討を進めていて、東京についても、小池知事が「解除できる状況にない」という意向を示していることなどを踏まえて判断する方針です。

宣言を延長する場合は、来週11日までとなっている期限の延長幅が焦点で、小池知事は今月31日までの延長を求める意向を示しています。

一方、今回の宣言で政府は、酒やカラオケを提供する飲食店などに加え、百貨店やショッピングセンターなどの大規模な施設に休業を要請しているほか、イベントやスポーツは原則、無観客とするよう求めています。

政府内では、強い対策のまま宣言を延長すれば経済に深刻な影響が出かねないという指摘もあり、延長する場合でも対策の一部を緩和するかどうかが焦点となります。

脇田座長「効果が出るまで3週間程度は必要」

厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は、会合のあとの記者会見で「緊急事態宣言が出されている地域について、大阪では医療提供体制や公衆衛生体制が厳しい状況が、今後もしばらく続くおそれがあると報告があった。東京などでも医療への負荷が懸念されている。新たな対策がとられた場合は、効果が出るまでに最低、2週間程度は必要で、さらに評価のために1週間、合わせて3週間程度は必要になると考えている」と話しました。

また、北海道や福岡など感染者が急増する地域があることについて、脇田座長は「これまで、分科会では感染状況がステージ3で、まん延防止等重点措置、ステージ4で緊急事態宣言相当だという提言を出してきたが、大都市圏では変異株の影響で、その効果が見えにくくなっている。これまでよりも早いタイミングで対策を打つべきだという意見があった。具体的にどういうタイミングで手を打つべきか、大阪や東京の状況などを踏まえて条件をしっかりと検討する必要がある」と話しました。

また、インドで確認された新しい変異ウイルスについては「今月1日からはインドからの入国者を3日間停留させるなど水際対策を強化しているが、リスクを減らすことはできても完全に防ぐのは難しい。14日間の停留や入国者数の制限などの対策で、さらにリスクは下げられる。この変異ウイルスがどの程度のリスクかは、まだデータが十分に示されていないが、日本でも対策の強化が必要だという議論があった」と話していました。