欧州各国 新型コロナ対策の制限緩和の動き 懸念の声も

ヨーロッパでは新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために導入されてきた外出や飲食店の営業の制限などを緩和する動きが相次いでいます。各国政府は人口10万人あたりの新規の感染者数など感染が広がりそうな場合に制限を再び導入する基準を設け、緩和を進めています。

フランス 各種制限を段階的に解除の方針

このうちフランスは3日、自宅から10キロ以内としてきた移動の制限を解除しました。

地方への高速鉄道が発着するパリのモンパルナス駅では多くの人が行き交う姿が見られました。

また今月19日にはおよそ半年ぶりに飲食店の屋外での営業が認められるほか、映画館や博物館なども再開できるようになります。

そして6月9日には海外の観光客の受け入れも再開する予定で、6月末までに制限のほぼすべてを解除する方針です。

一方で、感染状況が悪化した地域には制限の解除を止める「非常ブレーキ」と呼ばれる措置も設けました。

判断の基準となるのが、人口10万人あたりの新規の感染者数が400人を超えた場合や集中治療室がひっ迫しそうな場合などです。

カステックス首相は「もとの暮らしに戻れるという見通しがあるからこそ、警戒を怠ってはいけない。感染拡大が加速した際には素早く対応できる能力が必要だ」と述べていて、感染が広がりそうな場合には制限を再び導入することも辞さない姿勢を示しています。

医療現場からは懸念の声 1日の感染者は平均2万人超

フランス政府の解除の方針に対し、医療現場からは懸念の声が上がっています。

フランスでは1日あたりの新規の感染者数は平均して2万人を超えていて、集中治療室では5000人以上が手当を受けています。

パリ郊外の病院で救急医療部門のトップを務める医師はNHKのインタビューに対し「フランスの状況は依然として極めて危機的だ。解除はマクロン大統領による危険な賭けだ」と指摘しています。

そのうえで「制限の解除はウイルスの感染拡大が高い水準で続くことにつながる。この1年ウイルスとの闘いでぜい弱となっている病院に強い圧力がかかることになる」と話し、先行きに懸念を示しています。

イタリア 半数以上の州で制限緩和

イタリアでは全国の20の州を感染状況に応じて赤、オレンジ、黄、白と4つの区域に色分けして制限の緩和を進めています。

制限が大幅に緩和されるのは黄色の区域で、過去2週間の新規の感染者数が10万人あたり50人から150人、集中治療室の使用率が30%から40%などの地域となっています。

4月26日からは首都ローマや大都市ミラノがある州を含む半数以上となる14の州が黄色の区域に指定され、外出や小売店の営業の制限が緩和されたほか、飲食店も屋外での営業が認められました。

また映画館や劇場なども入場者を収容人数の50%以下とすることなどを条件に営業が再開されました。

一方で、感染状況が悪化して赤やオレンジの区域に指定されると、再び制限が導入されます。

ドイツ 一部の地域で

ドイツでは過去1週間、人口10万人あたりの新規感染者数を基準とし、この数が5日連続で100を下回った地域では制限の緩和も認められています。

州全体で緩和の条件を満たす北部のシュレスウィヒ・ホルシュタイン州はホテルを再開して観光客を受け入れるモデル事業を一部の地域で段階的に始めています。

観光客は到着時に48時間以内に受けた検査の陰性結果を提示したうえで、滞在中も48時間ごとに検査を受けることが求められます。

一方、基準の感染者数が3日連続で100を超えた地域には「非常ブレーキ」と呼ばれる全国一律の規制が適用されます。

夜10時から朝5時までの夜間の外出が原則として禁止され、飲食店では持ち帰りなどを除いて営業ができなくなるほか、観光客向けのホテルの営業も禁止されます。

こうした規制は感染状況に応じて強化されます。

ドイツではイギリスで最初に確認された変異ウイルスが広がり感染の第3波が続いていて、緩和に向けた動きは一部にとどまっています。