コロナ患者増加に募る“危機感” 川崎市の病院

新型コロナウイルスの中等症の患者を受け入れている川崎市の病院では、一時、2人にまで減った入院患者が先週末には16人まで増加したことから、26日から病床と看護師を増やす対応をとりました。病院は医療提供体制がひっ迫してきていると危機感を募らせています。

“どの科も満床状態続く”

川崎市多摩区の市立多摩病院では、いわゆる第3波のことし1月、最も多い時で新型コロナウイルスの患者が21人入院していましたが、今月7日には2人まで減りました。

しかし、その後、患者が増え始め、先週21日には16人になり、すぐに使えるように用意していたベッドは満床になりました。

週末に退院した患者がいたため、26日の時点の入院患者は13人となりましたが、新たな感染者の増加傾向が続く間は入院する人が増えることが予想されるとして、ベッドをさらに4床増やすとともに、看護師も5人増員することを決めました。

病棟では、26日も担当する医師や看護師が入院中の患者の薬の投与や容体の確認に追われていたほか、新たな患者の受け入れを求める連絡を受けて、ベッドの調整などの準備を進めていました。

川崎市立多摩病院の菊地初実看護師長は「第4波では病床が埋まるのがこれまでよりも早く、重症化する患者が多いように感じています。通常の診療に使っていたベッドをコロナ専用にしているため、その分の患者をほかの科で受け入れざるをえず、どの科も満床状態が続いていてスタッフはかなり大変です。今の看護体制では立ちゆかなくなると思うので、かなり難しい対応を迫られています」と話していました。

減少傾向が一転 2週間後8倍に

川崎市の市立多摩病院は、去年3月以降、新型コロナウイルスの中等症患者を延べ2200人以上受け入れてきました。

いわゆる第3波の際、最も多い1月7日には21人が入院していましたが、その後、回復して退院したり新たな入院が減ったりしたため、今月7日には2人にまで減りました。

しかし、その日を境に減少傾向が一転し、2週間後の今月21日には8倍に当たる16人に急増しました。

市立多摩病院の菊地初実看護師長は「あっという間に病床が埋まってしまった感じで、第3波より患者の増加スピードが早いと思います。いわゆる第4波に入ってからすでに2人が亡くなっていて、重症化する人も多くなっている印象です」と危機感を募らせています。

ベッド数増 すぐに対応するのは難しい

川崎市の市立多摩病院では、脳神経内科や泌尿器科などとして使っていた2つの病棟を新型コロナウイルス専用に切り替え、合わせて最大32床のベッドで感染した患者に対応できるようにしています。

しかし、看護師や医師の数や配置の関係などから、通常、すぐに使えるのは半分の16床だということです。

使えるベッド数を増やすには、ほかの診療科からの応援で看護師を増員する必要がありますが、それぞれの科で看護師の勤務シフトが組まれているため、すぐに対応するのは難しいということです。

医療従事者の精神的な負担も課題

川崎市の市立多摩病院では、新型コロナウイルスへの対応を続ける中、1年以上にわたって医療従事者にのしかかる精神的な負担も課題になっています。

この1年間でコロナ専用病棟で勤務していた看護師が3人退職し、現在、働いている看護師も、なかなかリラックスする時間が持てないといいます。

ことし2月に別の病棟からコロナ専用病棟に移った3年目の看護師の亀井智香さん(24)は「こういうところで働いているので、感染リスクが高まる人の多い場所には行かないです。実家は都内にありますが、都県をまたいで帰ることもしていません。コロナに対応するため勉強をし直す必要があったり、防護服を着たりすることは、肉体的にも精神的にも疲れますが患者のために力を尽くしたい」と話していました。

病院は、医療提供体制のひっ迫に直結する、看護師の離職を食い止めるための模索も続けています。