東京 2週間後の新規陽性者 2000人と推計 変異ウイルス流行で

東京都の「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、都内のほぼすべての感染が変異ウイルスに入れ代わると、2週間後に新規陽性者数は2000人を、入院患者数はこれまでにない6000人を超えるという推計を示したうえで、変異ウイルスに流行の主体が移りつつあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要だと呼びかけました。

会議のなかで専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

感染状況は、新規陽性者数の7日間平均が、▼先週の4月14日時点はおよそ475人、
▼21日時点はおよそ644人で、増加比が先週の120%から135%となり、高い水準のまま上昇傾向が続いていると説明しました。

そして、増加比が135%で継続すると、1日当たりの新規陽性者が▼大型連休明けの2週間後には1.82倍のおよそ1170人に、▼4週間後には3.32倍のおよそ2140人になると分析しました。

また、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスに感染した人の割合は、▼4月4日までの1週間は16.5%でしたが、▼4月11日までの1週間は28.5%となって上昇していると説明しました。

さらに、都内のほぼすべての感染が「N501Y」の変異があるウイルスに入れ代わったとして単純に試算=試みの計算をすると、2週間後に新規陽性者数は2000人を、入院患者数は6000人を超えるという推計を示しました。

入院患者数がこれまでで最も多かったのはことし1月12日時点の3427人で、6000人を超えるとした今回の推計はそれを大幅に上回ることになります。

専門家は、都内でも従来のウイルスから変異したウイルスに流行の主体が移りつつあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要だと呼びかけました。

一方、医療提供体制について、専門家は「感染がこのまま拡大すると通常の医療への影響がより深刻となることが予測される。変異ウイルスの重症化率は従来のウイルスより高いとの報告もあり、新規陽性者の増加を止め、変異ウイルスによる重症患者の発生を防ぐ必要がある」と強調しました。

小池知事 「もはや一刻の猶予もない」

モニタリング会議のあと小池知事は「重点措置が始まってから10日間経過しているが、人流の十分な抑制には残念ながら至っていないのが現状だ。新規陽性者の増加スピードが上がっている。大型連休という特別な期間がこれからやってくるが、人流を抑制する重要な機会だ。より強い対策を今やっておくことが必要で、関西圏の状況を見てももはや一刻の猶予もない」と述べました。

そのうえで、緊急事態宣言のもとで行う措置については「国と密に話をしながら、専門家の意見も聞きながら効果のある対策にしていきたい。変異ウイルスの猛威がより強いということで、これまでどおりでは抑え込めないという認識のもとさまざまな協議をしている。どうやって人の流れや人と人との接触を減らしていくのかいま詰めているところだ」と述べました。

専門家「入院患者6000に増える」

モニタリング会議のあと東京都医師会の猪口正孝副会長は「今の新規陽性者の増加比では4週間後の入院患者は2000人を超えると考えられる。そして『N501Y』の変異があるウイルスに置き換わると、入院患者は2週間後には6000人に増える。変異ウイルスによる患者が急増し、医療提供体制は相当危機的な状況になり、ひっ迫していくと考えている。これに備えて、今、準備をしているところだ」と述べました。
22日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、21日時点の7日間平均が643.9人となり、前の週からおよそ168人増加しました。

また、都内で「N501Y」の変異があるウイルスの割合は、今月11日までの1週間では28.5%で前の週より12ポイント増加しています。

専門家は「『N501Y』の変異があるウイルスは感染力が強いことから全国的に広がりを見せていて、従来のウイルスから変異ウイルスに流行の主体が移りつつあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要だ」として強い危機感を示しました。

今月19日までの1週間に新型コロナウイルスの感染が確認された人を年代別の割合でみると
▽20代が最も多く29.0%
▽30代が19.6%
▽40代が16.2%
▽50代が11.1%
▽10代が7.0%
▽60代が5.6%
▽70代が4.1%
▽10歳未満が3.2%
▽80代が3.1%
▽90代以上が1.1%でした。

専門家は、20代から40代の割合が高い傾向が続いているとしたうえで「第3波では若年層の感染者数の増加から始まり、重症化しやすい高齢者層への感染が広がった。また、若年層から他の世代へ感染が拡大する危険だけでなく若年であっても、後遺症が長引くリスクや変異ウイルスによって重症化する懸念もある。あらゆる世代が感染リスクの当事者である意識を持つよう啓発する必要がある」と指摘しています。

65歳以上の高齢者は436人で、前の週から121人増加した一方で、新規陽性者に占める割合は10.7%でほぼ横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち同居する人からの感染が最も多く、50.9%でした。

次いで▽病院や高齢者施設などの施設での感染が前の週から4.8ポイント増えて15.9%、▽職場での感染は14.2%▽会食は7.5%でした。

20代では会食での感染が13.9%とほかの世代と比べても高くなっています。

また、施設内の感染の割合も増えていて、専門家は「高齢者への波及に警戒が必要である」と指摘しています。

「感染の広がりを反映する指標」とされる感染経路がわからない人の7日間平均は、21日時点で376.7人で、前の週からおよそ93人増えました。

また、感染経路がわからない人の増加比も3月中旬から継続して100%を超えています。

21日の時点では133%と前の週から10ポイント増えました。

専門家は「増加比がさらに上昇すると爆発的に感染が拡大し、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される」としています。

また、今月19日までの1週間の新規陽性者4060人のうち、18.2%にあたる739人は無症状で、専門家は「無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がっている可能性があり、感染機会があった無症状者を含めた集中的なPCR検査などの体制強化が引き続き求められる」と指摘しました。

医療提供体制「大型連休からひっ迫を危惧」

検査の「陽性率」は22日時点で5.7%となり、先週の5.1%から上昇しました。

入院患者は、21日の時点で1606人となり、1424人だった1週間前・今月14日の時点と比べて182人増えました。

専門家は「今後の感染状況の推計や変異株の影響などを考慮すると大型連休から医療提供体制がひっ迫することが危惧される」と指摘しました。

また、都の基準で集計した21日時点の重症患者は、今月14日の時点より7人増えて48人でした。

専門家は「変異株によって従来株よりも若い世代の重症化リスクが高まることも懸念される」と指摘しています。

人工呼吸器やエクモの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は21日時点で192人で、今月14日の時点の168人から24人増えていて、専門家は「重症患者の増加が危惧される」と危機感を示しました。

そして「今後、新型コロナウイルスに感染した患者用に病床を転用することで、通常の医療への影響がより深刻になることが予測される」としています。

このほか、今月14日時点と比べて
▽自宅で療養している人は21日時点で402人増えて1222人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は21日時点で262人増えて1320人
▽医療機関に入院するかホテルや自宅で療養するか調整中の人は320人増えて1166人で、入院患者の項目もあわせると「療養が必要な人」のすべての項目で増加しました。

「療養が必要な人」全体の数は21日時点で5314人と、14日時点から1166人増えていて、専門家は「増加の勢いが早まっている」としています。

また、今月19日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した43人が亡くなりました。

前の週より18人増えていて、亡くなった43人のうち38人が70代以上でした。

専門家「爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要」

感染力が強い「N501Y」の変異がある新型コロナウイルスの割合は、都内では直近1週間で3割近くを占め、2週間前からおよそ25ポイント増えました。

専門家は「変異ウイルスに流行の主体が移りつつあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要だ」と指摘しています。

都内では都の「健康安全研究センター」と民間の検査機関などで「N501Y」の変異があるウイルスかどうかの検査を行っています。

今月11日までの1週間に、都内で新たに確認された陽性者の3割余りに当たる1133件の検体を調べた結果「N501Y」の変異があるウイルスは、28.5%に当たる323件から見つかりました。

この割合は、2週間前の1週間と比べて25ポイント、前の週と比べて12ポイント、それぞれ増えています。

都の専門家は「都内でも従来のウイルスから変異ウイルスに流行の主体が移りつつあり、爆発的な感染拡大への厳重な警戒が必要である」と指摘しています。

変異ウイルスが9割に

東京都の「健康安全研究センター」に集められた検体を、変異があるウイルスか従来のウイルスか分析した結果、今月18日までの1週間では9割が変異のあるウイルスでした。

変異ウイルスのうち感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスは32.8%、「N501Y」の変異はないものの、免疫の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があるウイルスが56.5%となっています。

モニタリング会議の中で専門家は「変異があるウイルスが全体の9割を占め、従来のウイルスから置き換わっている。大阪では、感染力の強い『N501Y』が2週間でおよそ8割を占めるまで上昇している。都内でも引き続き警戒して動向を注視する必要がある」としています。