【詳しく】感染状況が悪化「まん延防止措置」10都府県に拡大へ

新型コロナウイルス対策をめぐり、政府は、来週20日から、来月11日まで、埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固め、与党側に伝えました。これによって「重点措置」の適用は、東京や大阪などの6都府県から、10都府県に拡大されることになります。
全国での1日の感染確認の発表は14日には4312人と、ことし1月28日以来4000人を超えましたが、15日は、これまでに4571人にのぼっていて、感染状況は悪化の一途をたどっています。

菅総理大臣は15日夕方、埼玉、千葉、神奈川、愛知などで新型コロナウイルスの感染状況が悪化していることを踏まえ、総理大臣官邸で、西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らと今後の対応を協議しました。

この結果、政府は、埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固め、与党側に伝えました。

政府は、感染症の専門家などでつくる「基本的対処方針分科会」を開いて意見を求めたうえで、了承が得られれば、4県への「重点措置」の適用を決定することにしています。

これによって「重点措置」の適用は、東京や大阪などの6都府県から、10都府県に拡大されることになります。

神奈川県の適用 横浜 川崎 相模原の方針

神奈川県は15日夜、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、政府に対し、「まん延防止等重点措置」を適用するよう要請することを決めました。

神奈川県では新規感染者の増加傾向が続き、14日、2回目の緊急事態宣言の解除後、初めて200人を超える205人となったほか、15日はさらに増えて242人となりました。
これを受けて、県は午後6時から対策本部会議を開きました。

この中で、1週間当たりの感染者の数が、3週連続で増加していることや変異株の割合も急増していることなどを確認し、感染拡大の兆候があるとして政府に対し、「まん延防止等重点措置」を適用するよう要請することを決めました。

適用する地域は、東京に隣接し、感染者が多いことなどから、▼横浜市、▼川崎市、▼相模原市とし、この地域の飲食店に対して、営業時間をこれまでより1時間早い午後8時までにすることなどを求める方針です。

また、期間については、1か月程度とすることを国に求めることにしています。県は、このあと速やかに、政府に要請することにしています。

埼玉県の対象 さいたま 川口を軸に検討

埼玉県は15日夜、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、政府に対し「まん延防止等重点措置」を適用するよう、要請することを決めました。
県はすみやかに、政府に要請することにしています。

会議の中で、埼玉県は「変異ウイルスの感染が増えており、今後感染の急拡大が懸念される。これ以上の感染拡大が続けば、通常医療やワクチン接種にも影響を及ぼすおそれがあり、先手先手の対策が必要になってくる」として、「まん延防止等重点措置」を1か月間、適用するよう、政府に要請することを決めました。
会議のあと、埼玉県の大野知事は記者会見を開き、「変異ウイルスの感染が広がりつつあり、爆発的な感染拡大の発生が否定できない状況だ。また、大型の休暇の後には感染者が増加するという経験があり、先手先手の対応が必要という判断に至った」と述べました。

埼玉県は対象の地域を▼さいたま市と▼川口市を軸に検討していて、大型連休が控えていることなどを踏まえ、期間を1か月とするよう求めるということです。県はすみやかに政府に要請することにしています。

千葉県の対象 船橋 市川 松戸 柏 浦安の見通し

千葉県は15日夜、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、政府に対して「まん延防止等重点措置」の適用を要請することを決めました。

千葉県内では、15日、2回目の緊急事態宣言が解除されて以降最も多い144人の感染確認が発表されました。
このため千葉県は急きょ、15日午後8時から対策本部会議を開き熊谷知事が「全国的に見ても感染者が増加しており、今月12日からは東京都においてまん延防止等重点措置が適用されている。経済圏、生活圏を一体とする千葉県としては強い緊張感をもって対応することが必要だ」と述べました。

会議で、千葉県は政府に対し、「まん延防止等重点措置」の適用を要請することを決め、対象の地域は東京都との往来や新規感染者数などを踏まえ、県北西部の▼船橋市と▼市川市、▼松戸市、▼柏市、▼浦安市の合わせて5つの市となる見通しです。

また、期間は来週の今月20日から来月11日までで、対象の地域で飲食店に対して営業時間をこれまでより1時間早い午後8時までにするよう求めるほか、見回り調査も実施する方針です。

東京都 小池知事「連携の態勢・環境が整った」

東京都の小池知事は都庁で記者団に対し、「きょうのモニタリング会議でも話し合ったように、1都3県は面でつながっているので、通勤する方などに都と県の境を越えないようお願いした。その効果を出すためにも連携していくことができる態勢・環境が整ったと思う」と述べました。

愛知県の対象 名古屋を指定の方針

愛知県の大村知事は、名古屋市を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大し、第4波に入ったという認識を示し、15日午後6時すぎ、愛知県に「まん延防止等重点措置」を適用するよう政府に要請しました。

愛知県内では14日の感染者数が216人で、ことし1月28日以来200人を超えましたが、15日は218人とそれよりさらに多くなり、2日連続で200人を超えました。

愛知県の大村知事は15日午後の記者会見で、「特に名古屋市で新規陽性者数が感染拡大期とされるステージ3に入るなど感染が急速に拡大していて、第4波に入った」という認識を示しました。
そのうえで、午後6時すぎに愛知県を『まん延防止等重点措置』の対象とするよう、政府に文書で要請したということです。

措置の対象となる地域について、大村知事は、名古屋市を指定し、市内のすべての飲食店に対し営業時間を午後8時までに短縮するよう要請を行う方針です。

また、名古屋市以外の地域の飲食店に対しても営業時間を午後9時までとするよう要請することにしています。
大村知事は「『まん延防止等重点措置』来週の週明けから来月11日までの適用になると思う。大型連休を挟んである程度強い措置で一気に抑え込んで行きたいということで、要請することにした」と述べました。

兵庫県 対象に伊丹など6市町を追加へ

また、兵庫県は15日、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、県内での感染の急拡大を受けて、現在、神戸市など4つの市が対象となっている「まん延防止等重点措置」の地域に、新たに伊丹市や宝塚市、明石市など6つの市と町を加える方針を決めました。

兵庫県内では、新型コロナの新規の感染者が、14日は1日としては過去最多の507人、15日は過去2番目の493人の感染が確認されるなど感染の急拡大が続いています。
こうした状況を受け、兵庫県は15日午後、対策本部会議を開き、井戸知事は「入院すべき人が自宅待機を強いられており、医療が危機的状況だ」と述べ、危機感を示しました。
そして、「まん延防止等重点措置」の対象地域について、神戸市など4つの市に加えて、▼伊丹市、▼宝塚市、▼川西市、▼三田市、▼猪名川町、▼明石市の6つの市と町を、来週22日から新たに加える方針を決めました。

期限は、神戸市などと同じく来月5日までとしています。

県は対象地域の飲食店に対し、営業時間を夜8時まで、酒類の提供は夜7時までとするよう要請する方針で、応じた事業者には協力金が支払われます。

また、加古川市や姫路市など8つの市と町の飲食店などに出している、夜9時までの営業時間の短縮要請については、来月5日まで延長することを決めました。

さらに、会議では、県立学校の部活動について、今月19日から来月5日までの期間、県外での活動は実施しないことや、県内で活動する場合も必要最小限の人数で感染防止策を徹底して行うよう、各学校に求めることも決めました。

感染力強い「変異ウイルス」 割合急増が背景に

感染力が強い、変異した新型コロナウイルスの割合が急増していることが「まん延防止等重点措置」の適用拡大の背景にあります。

イギリスで最初に確認された「N501Y」という変異のあるウイルスは、国立感染症研究所の分析で、感染の広がりやすさを示す「実効再生産数」が従来のウイルスより平均で1.32倍高く、これまでのウイルスから急速に置き換わっているとみられています。

〈関西2府1県 現時点で全体の80%と推定〉
国立感染症研究所が変異ウイルスを調べる検査の結果などをもとに、新たに示した4月13日時点での推定では、大阪府と兵庫県、京都府の2府1県ではことし2月から変異ウイルスが急増し始め、3月中には半数以上が変異ウイルスに置き換わったとみられています。
その後、4月初めの時点では全体のおよそ75%、現時点ではすでに80%を占めていると推定され、この状況が続くと5月中にはほぼすべてが変異ウイルスに置き換わるとみられています。

〈首都圏の1都3県 5月初めには80から90%と推定〉
また、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県では、3月中旬以降、このタイプの変異ウイルスが増え始め、4月初めの時点ではおよそ10%でしたが、急速に増えつつあり、この状況が続くと5月初めには80%から90%が変異ウイルスに置き換わると推定しています。

また、愛知、岐阜、三重、静岡の4県や、沖縄県でも5月初めには大半が変異ウイルスになると推定しています。

イギリスでは去年10月以降、同じタイプの変異ウイルスが急増し、ことし2月から3月ごろにはほぼすべてが置き換わったとみられていて、日本国内でも同様のことが起きるおそれがあります。
国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は「このままのペースでいけば、国内でも5月前半には大半がN501Yの変異があるウイルスになると推測される。ただ、人の流れの変化など対策の効果は考慮していないので、対策によっては今後データが変わってくる可能性はある」と話しています。

感染急増の福岡県 今後の状況を見極め適用要請を検討

一方、県内での新たな感染者数が14日に150人を超え、緊急事態宣言が出されていた、ことし1月30日以来の高い水準となった福岡県。
15日も新たに109人の感染が確認されていて、服部知事は15日の記者会見で「まん延防止等重点措置」について、今後の状況を見極めて検討していく考えを示しました。
この中で、服部知事は「極めて緊張感を持って受け止めている。病床は直ちにひっ迫する状況にないが、感染経路不明の割合が5割を超えており、変異株を含め強い警戒感を持って状況を注視している」と述べました。
そして「まん延防止等重点措置」の適用要請について、感染や病床の状況を見極めて検討していく考えを示しました。

また、専用病床が30余り増えて802床になったことを明らかにし、来月中に少なくとも1000床に増やす方針を強調しました。

全国で4571人の感染確認

全国での1日の感染確認の発表は14日には4312人と、ことし1月28日以来4000人を超えましたが、15日は、これまでに4571人にのぼっていて、感染状況は悪化の一途をたどっています。

また、15日の死亡の発表は▼東京都で9人、▼北海道で5人、▼大阪府で4人、▼千葉県で2人、▼奈良県で2人、▼山形県で2人、▼福岡県で2人、▼長野県で2人、▼兵庫県で1人、▼埼玉県で1人、▼徳島県で1人、▼愛知県で1人、▼福井県で1人、▼群馬県で1人、の合わせて34人にのぼりました。

尾身会長「変異株の影響に直面 国や自治体は迅速な判断を」

新型コロナウイルス対策の政府の分科会の尾身茂会長は、現在の感染状況や医療の状況について「大阪府のデータを見ると、重点措置の適用以降、夜間の人流が減少傾向にあり、いずれ新規感染者の数は下がってくる可能性がある。ただ、それには時間がかかるしいま、重症者が増加し、医療は相当ひっ迫していて深刻な負荷がかかっている状況だ。一方で東京都のデータでは重点措置の適用以降、あまり夜間の人流が減少していない。東京でも早晩、関西と同じような事態になる可能性があり、強い警戒が必要だ」と指摘しました。

そのうえで、尾身会長は「現在は広範囲に感染源が存在し、多様な場所で感染が起こりやすくなっている。すでに多くの人が協力してくれているが一部で対策がいまだ不十分な部分がある。変異株の影響という新たな事態に直面している現実を受け止め、国や自治体には迅速な判断を行ってもらい、市民の皆さんには接触機会の削減のための行動変容により協力をお願いしたい」と呼びかけました。