日銀 黒田総裁 “企業の資金繰りに厳しさ 金融面から支える”

日銀の黒田総裁は15日に開いた全国の支店長会議で「企業の資金繰りに厳しさがみられる」と指摘し、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、資金繰り支援策などを通じて業績が悪化している企業を金融面から支えていく考えを示しました。

オンライン方式で開かれた日銀の支店長会議で、黒田総裁は日本経済の先行きについて、「外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調をたどるとみられる」と述べました。

その一方で、東京や大阪などに「まん延防止等重点措置」が適用されていることも踏まえ、「感染症への警戒感が続く中で、改善のペースは緩やかなものにとどまると考えられる」としました。

そのうえで黒田総裁は、「金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている」と指摘し、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、資金繰り支援策などを通じて業績が悪化している企業を金融面から支えていく考えを示しました。

日銀大阪支店長「旅行需要なくなるなど影響拡大」

日銀は、関西の景気の現状について「依然として厳しい状態にあるが全体として持ち直している」として、前回・3か月前の判断を据え置きました。

オンラインで記者会見した日銀大阪支店の高口博英支店長は「輸出や生産は緩やかな増加を続け、設備投資も底堅さを増している。ただ、飲食、宿泊、運輸などのサービス消費は『まん延防止等重点措置』などの影響で厳しさを増している。特に宿泊・運輸は、期待していた大型連休の旅行需要がなくなるなど影響が拡大している」と述べました。

名古屋 札幌 福岡 各支店長の反応は

愛知県の大村知事が新型コロナウイルス対策で「まん延防止等重点措置」の適用を要請する考えを示していることについて、日銀名古屋支店の林新一郎支店長は「どのような措置が講じられるかまだ分からないが、何かしらの形で対面サービスの領域に影響が及んでくることは避けがたい部分があるのではないか。個々の企業の事業形態によって程度差があるため、そういう点も細かくみていく必要がある」と述べました。

北海道の景気判断を引き下げたことについて、日銀札幌支店の石井正信支店長は「新型コロナの影響の大きさは極めて不確実性が高く、下振れリスクの方が大きい点に引き続き留意が必要だ。特に個人消費では、外食や旅行などの対面型サービスを中心に、下押し圧力の強い状態が続くことが懸念される」と述べました。

日銀福岡支店の冨田淳支店長は「感染再拡大による先行きの不透明感は依然として根強い状況だ。企業の資金繰りも含めて、引き続ききめ細かく点検していきたい。半導体の供給制約に対する懸念は強まってきているとみられ、ルネサスエレクトロニクスの火災の影響が具体的にどのように出るかしっかり見ていきたい」と述べました。