大阪 重症病床の運用率90%超 募る危機感

大阪で新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、重症病床の運用率が7日の時点で90%を超えました。重症患者の治療を行っている病院では、このままでは患者があふれかえる可能性が高いと危機感を募らせています。

大阪 東大阪市にある府立中河内救命救急センターでは、新型コロナの重症患者用の病床を8床確保し、これまでに122人の治療に当たってきました。

この病院は、3月中旬にはいったん患者がいなくなりましたが、3月28日から受け入れ要請が毎日続き、4月6日には8床すべてが埋まって満床の状態が続いています。

府立中河内救命救急センターの山村仁所長は「1日に必ず1人、2人と毎日来るような形で、1週間弱で8床あるベッドが埋まってしまったというのが実感だ。ペースとしては非常に早いと感じている。重症病床が、かなり近いうちに足りなくなる可能性が非常に高い」と危機感を示しました。
病院によりますと、第3波ではほとんど見られなかった40代や50代の重症患者の受け入れが増えてきているということで、山村所長は「第3波は高齢者が多く、平均年齢が70歳近かったが、今回は比較的若い世代に感染が広がっていて、なおかつ、糖尿病や肥満などの基礎疾患がない人が重症化している。以前よりも幅広い年齢層で、重症化するリスクが出てきたと感じている」と指摘しています。

さらに今回は、患者の入院期間が第3波に比べて平均して3日から4日、延びているということです。

原因は、新型コロナウイルスに対する抗体がどれだけあるかを示す値が、なかなか上がらないことにあるといいます。

抗体の値が15を超えるとウイルスを排出しなくなり、患者に感染力がないことを示すと考えられていますが、第4波では値が低いままの患者が多いため、人工呼吸器を外すことができず治療が長引いているということです。

山村所長は「3月以降に来た患者は抗体の値が非常に低く、ウイルスが体の中にいる期間が第3波に比べて長いと考えられる。前よりも治療が難しく、明らかに3日から4日以上入院期間が延びている。今いる患者が退院できないと、新たに受け入れることができない」として、さらなる病床のひっ迫につながると懸念を示しています。

この病院には変異ウイルスかどうか調べる装置がないため、入院している患者が変異ウイルスに感染しているか確かめられていませんが、今回の患者にみられる特徴から、山村所長は「われわれが治療をしている症例の多くは変異株、少なくとも従来とは違った特徴を持つウイルスではないかと考えている」と述べ、変異ウイルスが広がっているのではないかという実感を示しました。

この病院では、さらに多くの新型コロナの患者の治療ができるよう、新たに陰圧装置などを備えた病室を整備しました。

しかし、医師が11人しかおらず、看護師も足りない今の状況では新たに病床を稼働させるのは難しいとしています。
山村所長は「看護師や医師が明らかに足りないというのが大きな原因になっている。さらに、この病院では同時に救急診療もしているが、救急の症例数は決して減っていない。救急診療をしながら新型コロナの病床を増やすのはなかなか難しい。ただ、コロナの重症病床がかなりひっ迫する中では、救急の患者と新型コロナの患者の数の状況を見ながら、病床をうまくコントロールしていくしかない」と話しています。