攻める姿勢でつかんだ光 佐藤翔馬 男子200m平泳ぎ

「負けたらそれまで。すごく残酷」
競泳の日本選手権。東京オリンピックの代表内定を逃した渡辺一平選手は、ぼう然とした様子でそう口にしました。
長い時間をかけて積み上げたものどうしがぶつかり、明と暗に分かれてしまう一発勝負の舞台。わずか2分あまりで勝負が決まった男子200メートル平泳ぎは、佐藤翔馬選手に光がさしました。

“違和感”

佐藤選手は実は前日の準決勝から調子が悪かったといいます。
全体3位の通過でしたが、指導する西条健二コーチはある違和感を感じていました。

”コンディションは万全で技術的にも問題はないのに、勢いが感じられない”

同じ違和感を競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチも感じていました。「大丈夫か?」と心配されるほどだったといいます。

「攻めろ」

西条コーチも気になりホテルで深夜まで佐藤選手の泳ぎの映像を見返しましたが、違和感の正体は分かりませんでした。

決勝当日の朝、たまたまプールサイドで松元克央選手を指導する鈴木陽二コーチからこんな声をかけられたといいます。

「松元もそうだった。予選と準決勝はうまく余力を残そうとすごく守りに入っていた。そんなときは必ず攻めさせろ」

この2か月間、佐藤選手と毎日3食をともにしていた西条コーチには心当たりがありました。それがプレッシャーに耐えきれず佐藤選手がたびたび見せた「代表選考会が早く終わってほしい」という弱気な姿でした。

案の定、決勝の日も不安を口にする佐藤選手に西条コーチは「攻めろ」と伝えました。佐藤選手の目の色が変わりました。
迎えた決勝。
序盤、渡辺選手が抜け出す展開になりますが、佐藤選手は強気な姿勢で自分の泳ぎを貫きました。

「序盤は冷静に後半、ペースを上げる」

想定したプランどおりにレースを進めます。
そして、日本記録でオリンピックの切符を手にしました。
レース後家族や西条コーチの支えに感謝のことばを口にした佐藤選手の様子を見ながら、西条コーチも「平井先生の声かけや、鈴木先生の教えがなければ、ここにはいなかった。オリンピックでは日本のチームの一員として戦っていく」と佐藤選手とともに世界へ挑む決意を新たにしていました。