大阪 飲食店「見回り隊」スタート “市職員会食” 陳謝の中で

新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が5日から適用された大阪。大阪府と大阪市は、職員や民間への委託による「見回り隊」を作り、約4万軒の飲食店を対象に感染対策が徹底されているかを確認する取り組みを始めました。

一方、対策の徹底を呼びかける側の「大阪市」では、市の職員が5人以上で会食し新型コロナに相次いで感染していたことが明らかになり、「大阪市」も職員の意識が問われる中でのスタートとなりました。

「見回り隊」初日は梅田の飲食店中心に

大阪市は4月5日から1か月間、「まん延防止等重点措置」が適用されます。

市内の飲食店などには▽営業時間の夜8時までの短縮や▽マスク会食の徹底▽アクリル板や二酸化炭素の濃度を測定するセンサーの設置などが求められています。

大阪府と大阪市の職員でつくる「見回り隊」は、初日の5日、大阪・梅田の飲食店を中心に巡回しました。

このうちJR大阪駅前の商業ビル内の居酒屋では、店長から聞き取りをしてすでに実施している感染防止策を確認しました。

そのうえで、マスク会食の徹底やアクリル板の設置など大阪府の要請内容に関するチェックリストを手渡し、協力を呼びかけました。

店長の竿山丈士さんは、「呼びかけを受けて、二酸化炭素の濃度を測定するセンサーを導入しました。一方、アクリル板はどこも売り切れで、取り寄せているところです。酒類の提供が午後7時までで経営はかなり苦しいですが、感染防止のためしかたがありません。いただいたチェックリストをもとに対策を徹底したいです」と話していました。

「見回り隊」対象は約4万軒

大阪府と大阪市の職員およそ40人でつくる「見回り隊」は、実際に大阪市内のすべての飲食店を回って、要請が守られているかどうか確認することにしています。

大阪府と大阪市によりますと、対象となる飲食店はおよそ4万軒で、府と市は今後、民間にも委託して態勢を強化することにしています。

アクリル板が届かず休業する店も

大阪市内の飲食店ではアクリル板の設置が追いつかず、営業を見合わせる店舗も出ています。

大阪・ミナミにある日本料理店では府の要請を守ろうと4日、アクリル板をインターネットで急きょ、購入しました。

しかし、商品はまだ届いておらず、このままでは営業できないと判断したと言います。
店ではアクリル板をテーブル席の仕切りに使ったり、カウンター席に置いたりして営業を再開したいと考えていますが、府から対策の具体的な内容が示されておらず、要請を満たしているかどうか不安に感じているといいます。

また、府から要請されている二酸化炭素の濃度を測定するセンサーも購入したいと考えていますが、ネットで探しても売り切ればかりで、入手のめどは立っていないということです。

日本料理店「新浅草」の店主、大森達哉さんは「要請はできるだけ守りたいが、アクリル板やCO2センサーの設置を急に求められてもすぐにはそろわない。どこまで対策すればいいのか、具体的に示してほしい」と話していました。

「アクリル板入手できない場合 座席間隔1m以上に」

新型コロナの「まん延防止等重点措置」の適用を受けて、大阪府は府民や事業者からの問い合わせに応じるため、専用のコールセンターを設けて問い合わせに応じています。

飲食店の関係者から寄せられる問い合わせが多く、このうち、アクリル板が入手できないという相談に対して、府の担当者は、その場合、感染防止のため、少なくとも座席の間隔を1メートル以上あけるようアドバイスしていました。

また客へのマスク会食の呼びかけ方については、府のホームページにあるポスター画像を活用してほしいと応じていました。

責任者の大阪府災害対策課の遠藤洋一参事は「皆さんの不安を少しでも解消したいと思っており、気軽に相談してほしい」と話していました。

専用コールセンターの番号は06-4397-3268で、平日の午前9時半から午後5時半まで受け付けています。

CO2センサーは問い合わせ急増で増産

大阪府が市内の飲食店などに二酸化炭素の濃度を測る機器の設置を要請したこともあり、メーカーは増産体制をとっています。

機器を生産する京都市伏見区に本社がある電子機器メーカー「NKE」は、二酸化炭素の濃度が外付けのモニターに表示され、設定した数値以上になると警報音や本体のランプで通知される縦と横それぞれ12センチほどの機器を生産しています。

去年6月から生産を始め、これまで月に平均で30台近くを出荷してきましたが、機器への注目が高まったことで、ここ半月だけでも150台が出荷されました。

さらに大阪府の要請を受けて、問い合わせが急増しているということです。

「NKE」営業部の明石直人グループリーダーは、「二酸化炭素の濃度は、飲食店の安心の目安になると思うので、製品を供給することで対策に貢献したい」と話していました。

吉村知事「対策徹底の店舗 ステッカーなどで認証」

大阪府の吉村知事は記者団に対し「マスク会食の義務化のほか、アクリル板の設置、換気の徹底なども飲食店にはお願いしたい」と改めて呼びかけました。

そのうえで、「きょうから『見回り隊』を編成して、数万の飲食店を個別にチェックする」と述べ、要請が大阪市内のすべての飲食店で守られているか確認し、対策を徹底している店舗にはステッカーを発行するといった認証制度を創設する考えを示しました。

見回る側の「大阪市」も職員の意識問われる

一方、見回る側の「大阪市」も、職員の意識が問われています。

先月、大阪市の職員が5人以上で会食し新型コロナウイルスに相次いで感染していたことがわかり、松井市長は5日「4人以下での会食をお願いする立場なのに言語道断だ」として陳謝するとともに、全職員から聞き取り調査する考えを示しました。

大阪市では、先月26日に、▽高齢施設課の職員9人が焼き肉店で送別会を開いてこのうち2人が新型コロナウイルスに感染したほか、▽河川・渡船管理事務所と津守工営所の職員合わせて5人が居酒屋で会食しこのうち3人が感染していたことがわかりました。

これについて大阪市の松井市長は記者団に対し、「4人以下でのマスク会食をお願いする立場でありながら、ルールを逸脱した会食をしたことが判明した。言語道断であり、心からおわび申し上げる」と陳謝しました。

そのうえで松井市長は、「全庁をあげた調査をして、意識改革を徹底する」と述べ、大阪市のすべての職員を対象に同様の宴会や飲み会をしていないか聞き取り調査を行い、再発防止を徹底する考えを示しました。

また、職員らが飲食店などを見回りすることについては「対策について詳しい説明書を作っており、直接、店を訪ねて、丁寧に説明していく」と述べました。

また、再び緊急事態宣言の要請が求められる状況になることはないかと記者団から問われ、松井市長は「2週間の結果次第だ。2週間の結果をみて、感染が増加基調であれば、吉村知事もそういう判断をするのではないか」と述べました。