【詳報】ワクチン 来週から高齢者の接種開始へ 準備状況は…?

現在、医療従事者への優先接種が進められている新型コロナウイルスのワクチン。次の段階となる「高齢者への優先接種」が1週間後の今月12日から始まります。

優先接種の対象となるのは今年度中に65歳以上になる人で、来年の4月1日に65歳の誕生日を迎える人も含まれます。人数はおよそ3600万人で日本の人口の3割近くに上ります。

これを前に5日、コールセンターでの予約の受け付けなどさまざまな準備が進められました。

“先着順”で予約受け付け<東京 八王子>

ワクチンの高齢者への接種が東京都内で最も早く始まる八王子市では5日、コールセンターなどで先着順による予約の受け付けが行われました。
八王子市は都内の市町村で高齢者の人口が最も多く世田谷区とともに1週間後の今月12日から接種が始まります。

市に今週末に届く予定の1900回分のワクチンは市役所や商業施設で行う集団接種にあてられ、5日、この初回分についてコールセンターとインターネットサイトで先着順による予約の受け付けが行われました。

このうちコールセンターでは開始時刻の午前9時になるとともに一斉に電話が鳴り始め、1時間半ほどですべての予約が埋まりました。
高齢者への接種をめぐっては最初に配分されるワクチンが少ないため、どのような順番で接種を行うかは自治体によって対応が異なっています。東京23区では世田谷区をはじめとして高齢者施設の入所者から接種を始めるところが多くなっていますが、八王子市は先着順にした理由について、施設には市民でない人もいることから市民を優先するためなどとしています。

ワクチン接種担当の武井博英課長は「4月に接種を受けられるのは対象者全体の約1%にとどまり、予約が取れず不満に思われる市民の方も多いと思いますが、来月以降必ず接種できるので改めて基本的な感染対策を徹底し待っていてほしいです」と話しています。

“高齢者施設の入所者から”<東京 世田谷>

八王子市と同じく高齢者へのワクチン接種を都内で最も早く行う東京 世田谷区は今月12日から区内の7つの特別養護老人ホームで順次、入所者への接種を始めることにしています。
世田谷区は重症化やクラスターが発生する危険性が比較的高い高齢者施設の入所者を最初の対象とし今月12日から区内の7つの特別養護老人ホームで順次、接種を開始します。

接種を担当するのは施設の嘱託医や民間の医師らでつくる訪問チームで、アナフィラキシーなどの副反応にすぐに対応できるよう1つの施設につき複数の医師を配置する考えです。
世田谷区では今月26日の週に配付される予定のおよそ500人分のワクチンについても同様に特別養護老人ホームの入所者を対象に接種を行うことにしています。

一方で区内の65歳以上の高齢者はおよそ18万5000人に上り、区では集団接種などで本格的に高齢者への接種を始められるのはワクチンの供給が増える見込みの来月中旬以降になると想定しています。

最大200万回分近く ワクチン到着<成田空港>

一方、最大で200万回分近くの、これまでで最も多いワクチンが航空機で成田空港に到着しました。
アメリカの製薬大手、ファイザーのワクチンが5日午前10時半、生産工場のあるベルギーから航空機で成田空港に輸送されました。

ファイザーによりますと、ワクチンが日本に輸送されるのはことし2月12日以降今回が11回目で、5日に到着したのは1つの容器から6回分の接種で計算するとこれまでで最も多い198万9000回分に当たるということです。

また全日空では、今回はワクチンの輸送量が多くワクチンを低温の状態で保つドライアイスの量が増えたことから、これまでより大型の航空機を使って輸送にあたったということです。

接種会場 検索可能に<厚労省専用サイト>

厚生労働省の専用サイトでは接種を受けられる医療機関などを検索できるようになりました。
先週、接種を希望する人向けにワクチンの特徴や予約の方法などを紹介する専用サイト「コロナワクチンナビ」が開設され、5日からは接種会場を検索できる機能が追加されました。
住んでいる市町村で検索すると
▽接種を受けられる最寄りの医療機関などの名前や住所に加え
▽予約の空き状況
▽扱っているワクチンの種類などが表示されます。

予約自体は受け付けていないため、自治体や医療機関が決めた手続きにしたがって予約する必要があるということです。

厚生労働省は「ワクチンに関するさまざまな情報も掲載しているので接種を受ける前の情報収集に役立ててほしい」としています。

ワクチンについて厚生労働省は高齢者への接種のあと、基礎疾患のある人などに優先して接種を行う方針です。
(URL)https://v-sys.mhlw.go.jp

都道府県への配送のスケジュールは?

ファイザーなどが開発したワクチンは1週間後の今月12日から65歳以上の高齢者およそ3600万人を対象に接種が始まります。各地への配送のスケジュールです。
厚生労働省は今週から順次、都道府県にワクチンを配送する方針で、まず今週中に
▽東京と神奈川、大阪に3900回分ずつ
▽そのほかの道府県に1950回分ずつを供給します。

来週(4月12日~)と再来週(19日~)には、それぞれ
▽東京、神奈川、大阪に1万9500回分ずつ
▽そのほかに9750回分ずつを供給します。

また、4月26日の週には
▽すべての市町村に975回分ずつを配送する計画です。

接種が始まる当初は国が用意した注射器の構造上、1つの容器から採取できるワクチンの量は5回分になる見込みで、厚生労働省は来月中には6回分を採取できる注射器に切り替えたいとしています。

ことし6月末までには対象の高齢者全員に2回ずつ接種できる量を供給できる見通しだということです。

全国知事会 政府に緊急提言

全国知事会などは政府に対し医師や看護師の少ない地域に人材を派遣することを求める緊急提言を行いました。
高齢者へのワクチンの優先接種が始まるのを前に、国と地方3団体の協議の場が開かれ、この中で全国知事会を代表し鳥取県の平井知事は「スピーディーにワクチン接種を実現していくためにも人材が必要で手を差し伸べてほしい」と述べたうえで、知事会や全国市長会など地方3団体による緊急提言を山本厚生労働副大臣らに提出しました。

緊急提言では離島や中山間地などで医療従事者の確保が課題となっているとして
▽潜在看護師の掘り起こしや関係団体に人材の派遣を働きかけることのほか
▽退職した医師を組織化して医師不足の地域に派遣することなどを求めています。

ワクチン接種までの流れは?

ワクチンの接種は市町村など自治体から自宅に郵送されるクーポン、接種券を持参すると無料で受けられます。手順や流れ、手続きについて現段階の見込みをまとめています。
●クーポンを受け取ったあと電話などで予約します。接種会場となるのは▽医療機関▽公民館や体育館などです。

●集団接種の会場では、まず受付でクーポンを提示し運転免許証や保険証などで本人確認が行われます。

●次に健康状態やこれまでにかかった病気などを問診票に記入し、接種が可能かどうかを判断する医師による「予診」があります。ここまで問題がなければワクチンの接種を受けられます。
接種を終えた人は日付などが記された「接種済証」を受け取ります。「接種済証」には、どのワクチンを接種したかなどの情報が記載されていて2回目の接種を受ける際に必要になるということです。

●注意が必要なのは接種が終わってもすぐに帰宅できるわけではないということです。厚生労働省は接種後30分以上その場で経過観察を行うよう求めていて、接種を終えた人たちは会場に設けられた専用のスペースで待機することになっています。
厚生労働省が先月26日に開いた専門家部会で医療機関から「アナフィラキシーの疑いがある」と報告された事例を分析した結果、およそ1万2300回に1件の割合でアナフィラキシーに該当したことが明らかにされています。厚生労働省はアナフィラキシーが起きた場合は速やかに医療機関に搬送できるよう、自治体などに体制の整備を求めることにしています。

ワクチン接種は“腕を下ろして”

ワクチンの接種方法について内科医などで作る学会では腕を下ろして接種するよう動画を公開しています。
この動画は内科医や小児科医などで作る「日本プライマリ・ケア連合学会」がワクチンの接種方法を医療従事者向けに解説するためことし2月にインターネット上で公開しました。

学会によりますと動画では当初、注射をする際に「接種する側の手を腰に当てる」などと解説していましたが、動画を見た医師からこの方法では腕の神経を傷つけるおそれがあるのではという指摘があり、ワクチンで行われる「筋肉注射」では腕を下ろした状態で接種する方が安全だとして動画を撮影し直し改めて公開しています。