東京都 “大型連休直前の感染者1日650人に” 専門家分析

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析評価する「モニタリング会議」が開かれ、今の増加のペースが続くと1日あたりの新規陽性者が大型連休の直前にはおよそ650人になるとする分析が示されました。

専門家は、「増加比がさらに上昇すると爆発的に増加し、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される」と強い危機感を示し、ただちに対策を講じる必要があると指摘しました。

1日の会議で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況は新規陽性者数の7日間平均が▼3月24日時点のおよそ300人から▼31日時点はおよそ349人となり、前の週からの増加比は117%で上昇したと報告しました。

そして「緊急事態宣言が解除されて主要な駅や繁華街、花見の名所などで多くの人出があったことから、急激な感染拡大への厳重な警戒が必要だ」と指摘しました。

さらに、今の増加比が継続すると、1日あたりの新規陽性者が▼2週間後には1.37倍のおよそ480人▼大型連休直前の4週間後には1.87倍のおよそ650人になると分析しました。

専門家は「増加比がさらに上昇すると、新規陽性者数は爆発的に増加し、第3波を超えるような経過をたどることが危惧される。変異ウイルスにより急増する可能性がある」と強い危機感を示しました。

そのうえで、取り組みの成果が現れるのはおおむね2週間後だとして、ただちに対策を講じる必要があると指摘しました。

一方、医療提供体制は、入院患者が先月31日時点で1466人となり、先週の1371人から増加傾向だと分析したうえで「今後の推計に基づくと、体制のひっ迫が憂慮される。重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者を減らすことが重要だ」と強調しました。

都内 変異ウイルス検査 18%に拡大

東京都内の新型コロナウイルスの新規陽性者のうち変異したウイルスに感染しているかどうかを調べる検査の割合は7ポイントほど増えて18.7%になりました。

都内では、都の健康安全研究センターと民間の検査機関1社で変異ウイルスの検査をしてきましたが、都によりますと3月22日から新たに民間の検査機関1社の協力が得られたということです。

3つの機関で検査ができる体制になった結果、都内全体の変異ウイルスの検査の割合は▼3月21日までの1週間に11.5%だったのが▼28日までの1週間では7ポイントほど増えて18.7%に拡大しました。

3月28日までの1週間の新規陽性者のうちおよそ3%にあたる14人が変異ウイルスによる感染だということです。

小池知事 「大阪のような状況 起こってもおかしくない」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は、「特に関西では東京より3週間早く緊急事態宣言が解除され、今、このような状況になっている。東京でも今の大阪のような状況がいつ起こってもおかしくない」と述べ、強い危機感を示しました。

また、小池知事は、感染の広がりの予兆となるクラスターを早期に捉えるための検査体制の拡充に向けて、▼高齢者施設での定期的な検査を行うチームと、▼繁華街などでモニタリング検査を行うチームを1日、新たに立ち上げたことを明らかにしました。

専門家 「“まん延防止措置” は医療機関の準備を見越して」

モニタリング会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、記者団から、都内で「まん延防止等重点措置」が必要となるタイミングについて質問されたのに対し、「私見だが、判断基準としてあるのは、ちゃんと医療が持つのかということだ。医療が構えられていないところに大きな波がくれば全部かぶってしまう。医療機関が十分に準備できるタイミングを見越すというのは、ひとつの考え方ではないか」と述べました。
1日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、31日時点の7日間平均が349.4人と前の週からおよそ49人増加し、依然として高い値が続いています。

専門家は、急激な感染拡大への厳重な警戒が必要だとしたうえで、「流行の主体が従来の株から変異株に移る可能性もあり、変異株の動向の的確な把握が重要だ」と述べ強い危機感を示しました。

3月29日までの1週間に感染が確認された人を年代別の割合でみると、▼20代が最も多く23.9%、次いで▼30代が14.3%、▼40代が14.2%、▼50代が12.8%、▼70代が9.2%、▼60代が8.2%、▼80代が6.5%、▼10代が5.4%、▼10歳未満が2.8%、▼90代以上が2.7%でした。

このうち20代の割合は前回の21.5%から2.4ポイント増え、専門家は「目立って上昇した」と分析しています。

65歳以上の高齢者は536人で、前の週より101人増加しましたが、新規陽性者に占める割合は21.9%でほぼ横ばいでした。

感染経路がわかっている人のうち▼家庭内での感染が46.1%で最も多く、次いで▼病院や高齢者施設などの施設内が25.2%でした。

80代以上の69.4%が施設内での感染でした。

このほか、▼職場は前の週より2.7ポイント増えて11.7%、▼会食は変わらず5.1%でした。

専門家は「施設内での感染がおよそ5ポイント低くなった一方で、職場内での感染が増えている。職場、会食など多岐にわたる場面で感染例が発生している」と分析しています。

また、「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路がわからない人の7日間平均は、きのう時点で179.3人で、前の週よりおよそ35人増えました。

専門家は「感染経路がわからない人の割合が20代で60%、30代と40代でも50%を超える高い値となっている。依然として保健所での疫学調査による接触歴の把握が難しい状況が続いている。その結果、感染経路のわからない人の割合が高い値で推移している可能性がある」と指摘しています。

また、3月29日までの1週間の新規陽性者のうち20%あまりの490人は無症状で、専門家は「無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がっている可能性がある」として感染源となるリスクがあることに留意する必要があると指摘しました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は31日時点で4.0%と先週の3.7%からわずかに上昇しました。

入院患者は31日の時点で1466人で、3月24日の時点より95人増えていて、専門家は「増加傾向にあり、通常医療への影響を考慮したうえで、各医療機関に病床の転用を要請する必要がある。現在の医療提供体制では変異ウイルスによる急激な感染の再拡大には対応できなくなる危険性がある」と指摘しました。

また、都の基準で集計した31日時点の重症患者は3月24日の時点より3人増えて45人となり、専門家は「重症患者の新たな発生も続き、横ばいで推移している」と分析しました。

そのうえで、人工呼吸器またはエクモの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者などが154人いることを明らかにし「依然として多いため重症患者の増加が危惧される」と危機感を示しました。

3月29日までの1週間では94人が亡くなったと都に報告があり、前の週の54人から大幅に増えました。

亡くなった94人のうち9割近くにあたる82人が70代以上の高齢者でした。