箱根の老舗旅館 100年前に描かれた巨大ふすま絵修復へ

新型コロナウイルスの影響で多くの旅館やホテルが苦境に立たされるなか、神奈川県箱根町の老舗温泉旅館ではコロナ禍に負けまいと、およそ100年前に描かれた巨大なふすま絵の修復に取りかかることを決めました。このふすま絵は、関東大震災後の復興の時期に合わせて描かれた作品だということです。

箱根町の老舗温泉旅館「元湯 環翠楼」は大正時代に建てられた4階建ての木造建築で、旅館のなかでは年代物のアンティークも至るところで見られるとあって「泊まれる博物館」として国内外の観光客から人気を博してきたといいます。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や、2度の緊急事態宣言の影響で、ことしの客足は例年の半分ほどに落ち込み赤字が続いているということです。

そうしたなか、コロナ禍に負けず前向きに取り組んでいこうと、旅館が3月から新たに始めたのが、巨大なふすま絵を修復するプロジェクトです。

大広間の壁2面に広がるふすま絵は、大正時代に日本画家、仙田菱畝によって描かれたものです。
およそ100年の時を経て、破れや色落ちが目立ってきたため修復によって以前の姿に戻そうと考えたのです。

関東大震災で半壊した建物を建て直した際に作られた作品で、白く咲いた梅の木と、群れになった鵜が飛んでいる様子が描かれています。

修復作業は専門の業者に頼んで行うことから、旅館ではクラウドファンディングも活用して資金を募っていて、感染拡大が落ち着いた時には、修復されたふすま絵を見てもらおうと、お礼の品として食事や宿泊などを用意しています。

以前、宿泊したことがある人たちがファンドに参加していて「大変な時期ですが頑張ってください」などと応援のコメントが寄せられているということです。

「元湯 環翠楼」の梅村哲さんは「関東大震災後に、いま一度頑張ろうと描かれたふすま絵を直すことで、コロナ渦の苦しい時ではありますが、また多くの人に見てもらえるように頑張っていきたい」と話していました。