東京2020オリンピック 聖火リレー あす福島県をスタート

1年延期された東京オリンピックの聖火リレーは、25日福島県からスタートします。
コロナ禍におよそ4か月にわたって全国をめぐるイベントが安全に行われるかが、大きな課題となります。

東京オリンピックの聖火リレーは、25日福島県をスタートし、およそ1万人のランナーが121日間をかけ47都道府県を回ります。

最初のスタート地点となる福島県のJヴィレッジでは、午前9時から出発式典が開かれ、新型コロナウイルス対策のため一般の観客は入れずに行われます。

大会組織委員会は新型コロナの対策として、聖火リレーの様子をインターネットのライブ中継で見ることや沿道では密集を避けて観覧することなどを呼びかけています。

また、沿道で生じた密集が解消されない場合はその場所を「スキップ」して次に進むことや、運営スタッフらにクラスターが発生した場合は、公道でのリレーの中止を検討するなど、安全を最優先に実施する方針です。

一方、一部の自治体がリレーの中止や規模の縮小に言及しているほか、各地でランナーの辞退が続くなど新型コロナの影響で異例の状況となっています。

コロナ禍におよそ4か月にわたって全国をめぐるイベントが安全に行われるかが、大会の機運を醸成する上でも大きな課題となります。

聖火リレーとは

オリンピックの聖火リレーは、大会への機運を高めることを目的に、オリンピック発祥の地であるギリシャのオリンピアで太陽光を集めて採った聖火をギリシャ国内や開催国内でリレーによって運ぶ行事で、最後は開会式の行われるオリンピックのメインスタジアムに運び入れられます。

近代オリンピックで最初に聖火リレーが行われたのは1936年ベルリンオリンピックで、当時の組織委員会の事務総長だった人物が発案しました。

それ以降、聖火リレーは、平和や団結といったオリンピック精神を広める重要な役割を担い、開催都市以外でも多くの人たちが参画する大会に欠かせない行事となっています。

福島県をスタートし47都道府県めぐる

東京オリンピックの聖火リレーは、東日本大震災や原発事故からの復興を目指す福島県をスタートし、沖縄県まで南下してから今度は北上する形で47都道府県を巡り、最後は開催都市の東京都で7月9日から23日まで行われます。

ルートでは、
▽岩手県陸前高田市で東日本大震災の津波に流されずに残った「奇跡の一本松」や、
▽5年前の熊本地震で大きな被害を受けた「熊本城」をはじめ、全国で災害からの復興を目指す場所を巡ります。

また、
▽広島県の宮島にある「厳島神社」や
▽「富士山」などの世界遺産、
▽兵庫県の「姫路城」や
▽山口県岩国市の「錦帯橋」などの歴史的な建造物なども聖火リレーに彩りを添えます。

そして、
▽1998年の長野オリンピックで日本勢が活躍した「白馬ジャンプ競技場」や、
▽前回、1964年の東京オリンピックで東洋の魔女として注目されたバレーボール女子が活躍した「駒沢オリンピック公園」など、オリンピックゆかりの地も回ります。

聖火リレーは、
▽開催都市の東京が15日間、
▽東日本大震災の東北の被災3県と、オリンピックの競技会場が複数ある埼玉、千葉、神奈川、静岡の各県が3日間、
▽ほかの道府県は2日間となっています。

課題は新型コロナ対策

今回の聖火リレーでは、新型コロナウイルスの感染を広げないことが大きな課題となっていることから、組織委員会は対策のガイドラインをまとめています。

それによりますと、まず観客の対策として、住んでいる都道府県以外では沿道での応援は控えること、沿道などではマスクを着用し、応援は大声ではなく拍手などで行うこと、そして聖火リレーの様子はインターネットのライブ中継を見ることで、沿道での密集を避けるとしています。

そのうえで、出発式などのセレモニーでは人数制限を行う場合があり、このうち1日の最後の式典の会場は、原則として事前予約制にします。

また、聖火ランナーの対策として、2週間前から当日まで、会食をしないことや密集する場所への外出を避けること、走行時以外はマスクの着用を求めています。

このほか、沿道に多くの観客が密集するおそれのある著名人ランナーについては、密集対策ができる場所を走ることにしています。

一方、都道府県に緊急事態宣言や外出自粛の要請などが出ている場合には、公道でのリレーは見合わせ、1日の最後の式典会場での無観客での点火セレモニーだけにするなど、聖火リレーの実施方法を変更する場合もあるとしています。

組織委員会はこうした事前のガイドラインに加え、コロナによって事態が起きた場合の対応方針を公表しています。

それによりますと、沿道で「密集」と判断する基準を、多くの観客が肩が触れ合う程度などと定め、スタッフや広報車が移動や分散を呼びかけるなどしても解消されない場合には、その場所を「スキップ」して次に進むなどとしています。

また、運営スタッフなどに感染者が確認された場合の対応では、感染規模と影響度を小、中、大の3段階に分け、感染者や濃厚接触者が1、2人程度の「小」では、配置を換えるなどして通常どおり運営を行い、代わりの要員が難しいなどの「中」では縮小案を検討、感染者の集団=クラスターが発生した場合の「大」では公道のリレーは中止を検討するとしています。

また、各都道府県でクラスターが発生した場合は、ルートの一部で「スキップ」を検討するなどとしています。

ランナー辞退する著名人も

聖火ランナーは各都道府県やスポンサー企業などが公募や推薦で選んでいます。

ランナーには芸能やスポーツ界などさまざまな分野で活躍する人が起用され、最初の福島県では、2011年のサッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表「なでしこジャパン」の当時のメンバーのほか、NHKの連続テレビ小説「エール」で主人公の母親役を演じた俳優の菊池桃子さん、2006年公開の映画「フラガール」に出演したお笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃんなどが走ります。

このほか各都道府県の発表によりますと、岐阜県ではシドニーオリンピックの女子マラソンの金メダリスト、高橋尚子さん、愛知県ではノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩さんや俳優の松井玲奈さんなどが走る予定です。

一方、各地でランナーの辞退も相次ぎ、愛知県で走る予定だったお笑いコンビ、「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが組織委員会の森前会長の発言などを受けて辞退したほか、組織委員会をめぐる一連の事態で、福島県の50代の男性や、長崎県の20代の女性も辞退しました。

またスケジュールの都合などで著名人ランナーが辞退するケースも多く、各地の自治体によりますと、石川県で俳優の常盤貴子さん、福井県で歌手の五木ひろしさん、栃木県でラグビーワールドカップで活躍した田村優選手などが辞退しています。

これについて組織委員会は、およそ600人いる著名人ランナーの密集対策の検討や走る場所の調整などに長く時間がかかったため、走行日時や場所の内定通知が2月下旬になってしまったと説明したうえで、「直前の連絡となったことで、スケジュールの都合がつかず、辞退された皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪しています。

コロナ禍でともされ続けた聖火

東京オリンピックの聖火は、新型コロナウイルスの感染が拡大した去年3月以降、その影響を大きく受けながらもともされ続け、今に至っています。

去年3月12日、ギリシャのオリンピアでの採火式は、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長が「新型コロナはパンデミックと言える」と宣言した翌日の出来事でした。

式典は、感染が広がらないように観客を入れずに行われ、採火式の直後に始まった聖火リレーではアテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずきさんも日本から参加しました。

世界中で感染が広がり続け、聖火リレーはもちろん、4か月後に迫った大会を開催できるのか、そうした懸念が強くなった中、組織委員会の当時の森会長は、聖火を日本に持ってこないと大会が中止になりかねないと判断しました。

3月19日、ギリシャ側から日本側へ聖火の引き継ぎが行われ、特別輸送機に乗せられた聖火は、翌20日、宮城県の航空自衛隊松島基地に到着しました。

その後、世界的な感染拡大を受けて3月24日、当時の安倍総理大臣とIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が会談し、東京大会の1年の延期が決まりました。聖火リレーが始まる2日前の決定でした。

1年の時を待つことになった聖火は都内で保管され、去年7月23日、延期後の開幕1年前に合わせたセレモニーでは競泳の池江璃花子選手によって久しぶりに披露されました。

新型コロナが収束せず、大会の開催に疑問の声が絶えない中、聖火はともされ続けました。

NHK インターネットのライブ中継を121日間 毎日実施

今回の聖火リレーでNHKはパソコンやスマートフォンでリレーの様子を見ることができるインターネットのライブ中継を121日間、毎日実施します。

NHKの東京オリンピック特設サイトにアクセスし、聖火リレーの項目を選べば、ライブ映像を見ることが可能です。

このライブ中継で、必ずしも聖火ランナー全員をご紹介できるわけではありません。

(NHKオリンピック聖火リレーHP)
https://sports.nhk.or.jp/olympic/torch/