地価にもコロナの影響… 外国人旅行者激減の地域で大きな下落

全国の土地の価格動向を示すことしの「地価公示」は新型コロナウイルスの影響による需要の落ち込みで住宅地や商業地などを含めたすべての調査地点の平均が6年ぶりに下落に転じました。
商業地で特に下落率の大きい土地は、外国人観光客に人気の、あのエリアにありました。

「地価公示」は国土交通省が1月1日時点で調査した土地の価格で、全国のおよそ2万6000地点が対象です。

それによりますと全国の住宅地や商業地、工業地などを合わせたすべての調査地点の価格の平均は去年を0.5%下回り、6年ぶりに下落に転じました。

用途別では、
▽「住宅地」が全国平均でマイナス0.4%と5年ぶりに下落しました。
東京 大阪 名古屋の「三大都市圏」は平均でマイナス0.6%
三大都市圏を除いた「地方圏」は平均でマイナス0.3%でした。

新型コロナの影響による雇用の悪化や賃金の落ち込みを背景に住宅の需要が減少したことが要因です。

▽「商業地」は全国平均でマイナス0.8%と7年ぶりに下落しました。
「三大都市圏」は平均でマイナス1.3%
「地方圏」では平均でマイナス0.5%でした。

感染拡大前に観光客が増えていた店舗やホテルのある地域、それに飲食店が集積する地域が大きく下落しました。

ことしは「東京23区」も住宅地、商業地ともに8年ぶりに下落に転じ、新型コロナが経済全般に与えた打撃の大きさがうかがえます。

一方で、
▽札幌 仙台 広島 福岡の「地方4市」では
「住宅地」が平均でプラス2.7%
「商業地」が平均でプラス3.1%と上昇が続きました。

地域の拠点としての利便性の高まりや再開発が進められていることを背景に、底堅い需要が見込まれていることが地価に反映された形です。

都道府県別では…

地価の変動率を都道府県別に示した図です。
住宅地は全国38の都府県で下落したほか、商業地は全国39の都府県で下落しました。

商業地. 全国39都府県で下落

次に商業地と住宅地の用途別に詳しく見てみます。
まずは商業地です。商業地は全国39の都府県で下落し、全国平均でマイナス0.8%と7年ぶりに下落しました。

商業地. 外国人観光客人気エリアで大幅下落

外国人観光客に人気のあったエリアや繁華街は大幅に下落していて、最も下落したのは大阪 中央区道頓堀1丁目でマイナス28.0%でした。
全国の商業地で地価の下落率が高かった10の地点のうち8地点が大阪の繁華街「ミナミ」に集中していて、新型コロナウイルスの感染拡大と渡航制限によって外国人旅行者が急減し、ホテルや飲食店などの収益が大幅に悪化したことが影響した形です。

商業地. 下落率最高の大阪 ミナミでは…

全国の商業地で地価の下落率が最も大きかった大阪 ミナミは、立体的なカニやタコなどのユニークな看板が並び、飲食店をはじめデパートや衣料品店、ドラッグストアなどが狭いエリアに集中し多くの外国人旅行者に支持されてきました。

しかし、新型コロナの感染拡大と海外からの渡航制限で旅行者は激減し飲食店や小売店は売り上げの減少に悩まされています。
ミナミの道頓堀にある老舗の串かつ店は、地価の下落率が最も大きかった地点=去年閉店した老舗のふぐ料理店「づぼらや」があった土地と同じ道沿いにあります。

この店ではコロナの感染拡大前は客のおよそ3割が外国人旅行者だったということですが、緊急事態宣言で外食を控える動きも重なり、先月の売り上げは前年の同じ時期のおよそ3分の1に落ち込んだということです。
串かつだるま道頓堀店 中嶋隆晴店長
「インバウンド需要が見込めないのでこのあたりの地価が下がるのもしかたないですが、早くワクチンが普及して安心して観光に出られる世の中になってほしいです」

商業地. 全国最高値 銀座4丁目も9年ぶりに下落

全国の商業地で地価が最も高かったのは15年連続で東京 中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で1平方メートル当たり5360万円でした。
高級ブランドの店が並ぶ銀座の中央通りに面し、国内外の観光客が激減した影響で、去年に比べると地価はマイナス7.1%と9年ぶりに下落しました。

商業地. 上昇率高い地点は北海道と福岡に

一方、全国の商業地で上昇率が高かった地点です。北海道と福岡県で地価の上昇が目立ちました。
1位.
北海道倶知安町南1条西1丁目 21.0%上昇
世界的なスキーリゾートの「ニセコ観光圏」にあたり北海道新幹線の延伸などによる利便性向上への期待感から上昇しています。

2位.
福岡市中央区清川2丁目 15.0%上昇

3位.
福岡市博多区店屋町 14.0%上昇
福岡市は街の再開発が進み底堅い需要が見込まれていて、地価が上昇しています。

住宅地. 全国38都府県で下落

住宅地です。住宅地は全国38の都府県で下落し、全国平均でマイナス0.4%と5年ぶりに下落しました。特に去年7月の豪雨で大きな被害を受けた熊本県人吉市相良町はマイナス14.6%と最も大きく下落しました。

住宅地. 上昇率高い地点 上位はすべて北海道

一方、住宅地で上昇率が高かった地点です。上位3つはすべて北海道でした。
1位.
倶知安町山田 25.0%上昇
「ニセコ観光圏」にあたり富裕層向けの別荘の開発が進んでいることが要因です。

2位.
北広島市共栄町1丁目 17.7%上昇

3位.
北広島市東共栄2丁目 15.6%上昇
北広島市にはプロ野球 日本ハムの新球場が開業する予定で人口の増加が見込まれることや、隣の札幌市に比べて割安感があることから需要が高まっています。

住宅地. 全国最高値は港区赤坂1丁目 4年連続

全国の住宅地で地価が最も高かったのは4年連続で東京 港区赤坂1丁目で1平方メートル当たり484万円でした。周辺の虎ノ門地区などで再開発が進み高級マンションの用地としての需要が高まっていて、地価は去年より2.5%上昇しました。

工業地. 上昇率最高は沖縄 豊見城

最後に工業地です。上昇率が最も高かったのは沖縄県豊見城市豊崎で29.1%上昇しました。国道の4車線化に伴って那覇市の中心部や空港へのアクセスが向上していることなどから物流施設向けの需要が高まっています。

また、工業地で地価が最も高かったのは9年連続で東京 大田区東海2丁目で1平方メートル当たり68万9000円でした。巣ごもり消費などでネット通販の利用が一段と増え物流施設の需要が高まる中、高速道路や港などへのアクセスのよさから地価は去年より5.0%上昇しました。

「東京圏」 住宅地・商業地とも8年ぶりに下落

首都圏の1都3県を中心とする「東京圏」も住宅地と商業地ともに8年ぶりに下落に転じ、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の減少や外出の自粛を背景に、都内の商業地で特に落ち込みが目立ちます。
6800余りの地点が対象の「東京圏」では、まず
▽住宅地は「東京圏」のすべての調査地点の平均でマイナス0.5%と、8年ぶりに下落に転じました。
千葉県はプラス0.1%とわずかに上昇した一方、東京 神奈川 埼玉はいずれもマイナス0.6%と下落しました。

次に
▽商業地は「東京圏」の平均でマイナス1.0%と、住宅地と同じく8年ぶりに下落に転じました。
千葉が0.5%、神奈川が0.1%それぞれ上昇しましたが、東京がマイナス1.9%、埼玉がマイナス0.9%となり全体を押し下げた形です。

中でも「東京23区」は
▽住宅地が去年のプラス4.6%がことしはマイナス0.5%に、
▽商業地はプラス8.5%からマイナス2.1%と値下がりの傾向が顕著になっています。

観光客の減少や外出自粛を背景にホテルや飲食店などが集まる都内の商業地で落ち込みが目立っています。

「テレワーク」 今後、地価に影響か?

テレワークに代表される新しい働き方の広がりは今後、オフィス街の地価に影響を及ぼす可能性もあります。
東京 渋谷のIT企業「ピクスタ」は新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに導入したテレワーク中心の働き方を今後も続けるとして先月、オフィスを移転しました。

同じ渋谷区内での移転ですが、
▽広さは3分の1、
▽社員用の席はおよそ120から20に、
▽11あった会議室は1室に減らしました。

移転によって賃料や光熱費などオフィスの維持にかかる費用はほぼ半減したということです。
古俣大介社長は「リモート中心の働き方に移行してもあまりデメリットがないのでオフィスの縮小を決めた。オフィスの縮小や移転は今後も続くのではないか」と話していました。

テレワーク中心の働き方を導入した去年2月以降、およそ3割の従業員が住所を変更していて、
▽九州や東北などの実家に戻った人や、
▽東京の近郊に家を購入した人もいるということです。

夏ごろに引っ越しを検討しているという女性は「どこに住んでも今の仕事が続けられるので旅行に行って好きになった北海道の釧路で暮らしたい」と話していました。

古俣社長は「社員が好きな場所や働きやすい場所で仕事をして生産性が高くなるのは会社にとってプラスだと思う。感染が収束しても出社前提の働き方に戻ることはないだろう」と話しています。
テレワークに代表される新しい働き方に合わせてオフィスの移転や縮小の動きが今後も広がっていけば、地域によってはオフィス街の地価に影響を及ぼす可能性もあるとみられています。

専門家「商業地から住宅地へ“負の影響”」

不動産の調査会社「東京カンテイ」井出武 上席主任研究員
「新型コロナウイルスの影響で特に観光地のホテルや施設、店などの需要が大きく減り、その地域の住宅のニーズも落ち込ませ商業地から住宅地へいわば“負の影響”が広がった」

・都心の住宅地の下落について
「マンション価格は高止まりしており都心の住宅地が下落する要素は見当たらなかったため驚いた。感染拡大前は用地の取得をめぐってホテルなどとの競争が激しかったが、今は比較的取得しやすくなっている可能性がある」

・東京の近郊で地価が上昇した地域について
「人の流れが変わったわけではなく都心と比べると買いやすい価格なので以前から底堅い需要があった。そうした人たちが感染が拡大しても予定を変えずに購入したことを反映していると思う」

・今後の地価の動向について
「コロナ禍でも業績が好調な企業もあり駅に近いオフィスビルなどは今後も底堅く動くと思う。感染拡大が収束したあとは交通や生活の利便性が高い地域、今でも高値がつくような都心や地方都市の人気エリアで地価は再び上がっていくのではないか」