【菅首相会見詳報】“宣言”解除へ 再拡大防ぐ「5つの柱」示す

菅総理大臣は18日夜、総理大臣官邸で記者会見し、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言について、病床の状況などが安定的に基準を満たしていることから解除を判断したと説明した上で、感染の再拡大を防ぐため、飲食の感染防止や、安全で迅速なワクチン接種など5つの柱の対策を進めていく考えを示しました。また、ワクチンについては、ことし6月までに少なくとも1億回分が確保できるという見通しを示し、医療従事者と高齢者に行きわたる十分な量だと述べました。

菅総理大臣は、首都圏の1都3県の緊急事態宣言について、期限の今月21日で解除する決定をしたあと、総理大臣官邸で記者会見しました。

この中で、菅総理大臣は、解除を判断した理由について「飲食店の時間短縮を中心にピンポイントで行った対策は大きな成果をあげている。2週間宣言を延長し、病床の状況などを慎重に見極め判断すると申し上げてきたが、目安とした基準を安定して満たしており、本日解除の判断をした」と述べました。

一方で「感染者数は横ばい、あるいは微増の傾向が見られ、人出が増加している地域もあることからリバウンドが懸念されている。変異株の広がりにも警戒する必要がある。宣言が解除される今が大事な時期であり、それぞれの地域の状況を踏まえ国と自治体が一層協力しながらしっかりと対策を続けていきたい」と述べました。

そして、国民に対して、マスクの着用や手洗い、それに「3密」の回避などの基本的な感染対策を、引き続き徹底するよう呼びかけました。

また、宣言を解除したあとの感染の再拡大を防ぐための総合的な対策として、飲食の感染防止、変異したウイルスの監視体制の強化、感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施、安全で迅速なワクチン接種、次の感染拡大に備えた医療体制の強化の5つの柱を決定したと説明しました。

さらに、ワクチンについて「医療関係者への優先接種は順調に進んでおり、現在は1日8万人の規模で接種が行われている。来月12日からは高齢者への優先接種が始まり、そして6月までに少なくとも1億回分が確保できる見通しだ。医療従事者と高齢者に行き渡る十分な量であり、皆さんに安心して接種頂けるように丁寧な情報発信を行っていく」と述べました。

そのうえで、菅総理大臣は「感染拡大を二度と起こしてはいけないと、今回の宣言解除にあたり、改めてみずからにも言い聞かせている。世界でもまだ、闘いは続いているが、1年間でわかったこともある。そして何よりもワクチンという武器がある。一進一退はあっても先には明かりが見えてくる。そうした思いで、私みずからが先頭に立ち、国民の命と暮らしを守り抜く覚悟を持って全力で取り組む」と述べ、新型コロナウイルスの感染拡大の収束に向けた決意を示しました。

一方、菅総理大臣は、来月9日にも予定されている日米首脳会談について「バイデン大統領との個人的な信頼関係を深めつつ、日米同盟のさらなる強化につなげていきたい。また、新型コロナ、気候変動、さらに中国をめぐる諸課題、北朝鮮による拉致問題などのさまざまな課題について、日米で連携していくことをお互いに確認しあえる機会にしたい」と述べました。

また、衆議院の解散・総選挙の時期をめぐり、自民党の下村政務調査会長が菅総理大臣のアメリカ訪問のあとが選択肢の1つになり得るという認識を示したことについて「新型コロナウイルスの収束に向けて、変異株や高齢者施設での検査など、5つの掲げたことについて、しっかり対応していくのが私の役割だ。それなので訪米後の解散は全く考えていない」と述べました。

さらに、東京オリンピック・パラリンピックについては「一つ一つ感染拡大を収束させていく中で、IOCのバッハ会長が世界のそれぞれの組織委員会に提案して、開催する方向でいましっかり準備を進めているのが実情だ。開催をしっかり応援していきたい」と述べました。

「5つの柱」とは

菅総理大臣が記者会見で示した「5つの柱」の対策です。

第1の柱「飲食の感染防止」大人数の会食は控えて

「宣言の解除にあたり、感染の再拡大を防ぐための5本の柱からなる総合的な対策を決定する。第1の柱は飲食の感染防止だ。1都3県ではそれぞれの都県の要請により、夜9時までの飲食店の時間短縮を継続することとし、これに対し1日4万円の支援を行う。席の間隔や店内の換気のガイドラインを守ってもらうことも重要だ」と述べました。

そのうえで「1日1万件前後の見回りを行っているが、さらに対策を徹底する。会食はできるだけ家族で4人以内でお願いしたい。これから卒業式や入学式、歓送迎会などの季節となるが、大人数の会食は控えていただきたい」と述べました。

さらに「こうしたメッセージが広い世代に届くよう、テレビのコマーシャルやSNSなどあらゆる媒体を活用し、これまでにない規模で集中的な発信を行う」と述べました。

「世界でもまだ闘いは続いているが、1年間でわかったこともある。そして何よりもワクチンという武器がある。一進一退はあっても先には明かりが見えてくる。そうした思いで私みずからが先頭に立ち、国民の命と暮らしを守り抜く覚悟を持って全力で取り組む」と述べました。

第2の柱「変異ウイルス対応」

5つの柱のうち「変異ウイルス対策の強化」について「第2の柱は、変異ウイルスへの対応だ。国内の監視体制を強化するために、全都道府県で陽性者の検査を行っているが、今後、抽出する割合を、現在の10%から40%程度に引き上げ、変異ウイルスを割り出し、感染源をきめ細かくたどることで、拡大を食い止めていく。航空便の搭乗者数の抑制により入国者の総数を管理するなど、水際措置も強化する」と述べました。

第3の柱「戦略的な検査の実施」

また「モニタリング検査など感染拡大防止策の強化」について、「第3の柱は感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施だ。繁華街や駅などですでに実施している、無症状者のモニタリング検査を順次、主要な大都市で大幅に拡大し、来月には1日5000件の規模にする。さらに、高齢者施設などについて、今月末までに、3万か所の施設を対象に検査を行い、来月からは、さらに集中的、定期的な検査を実施する」と述べました。

第4の柱「安全 迅速なワクチン接種」

さらに「ワクチン接種の着実な推進」について「第4の柱は安全、迅速なワクチン接種だ。変異株を含めて感染対策の決め手となるのがワクチンであり、1日も早くすべての国民の皆さんにお届けしなければならないという思いで準備を進めている。副反応も報告されているが、専門家の評価によれば、いずれも比較的軽度で、適切に治療され、改善しているということだ」と述べました。

そのうえで「医療関係者への優先接種は順調に進んでおり、現在は1日8万人の規模で接種が行われている。4月12日からは高齢者への優先接種が始まり、そして6月までに少なくとも1億回分が確保できる見通しだ。医療従事者、高齢者に行き渡る十分な量であり、皆さんに安心して接種頂けるように丁寧な情報発信を行っていく」と述べました。

第5の柱「次の感染拡大に備えた医療体制の強化」

そして5つの柱のうち「医療提供体制の充実」について「第5の柱が、次の感染拡大に備えた医療体制の強化だ。今回は急速な感染拡大に十分対応できず、各地でコロナ病床や医療スタッフが不足する事態となった。各都道府県において、今回のような感染の急拡大に対応できるよう準備を進めている。コロナ病床、回復者を受け入れる病床、軽症者用のホテル、自宅療養が、役割を分担して感染者を効果的に療養できる体制をつくる」と述べました。

「飲食や恒例行事などリスク高い場面着目した対策を徹底」

「飲食や恒例行事などの、リスクの高い場面に着目した対策を徹底していく。政府としては、情報発信を強化し、感染防止に必要なことをわかりやすく伝えていく。また同時に、偏見や差別などの防止に向けた取り組みを進めていく」と述べました。

「新規感染者数はおよそ8割以上減少 はっきりした効果」

「総理大臣に就任して以降、国民の暮らしと命を守る強い思いでこんにちまで取り組んできた。対策による国民生活の影響も考えてきた。そういう中で、『Go Toキャンペーン』の停止や緊急事態宣言といった必要な判断を行い、対策を講じてきた」と述べました。

そのうえで「感染防止にかじを切り、飲食店の時短営業を中心としてピンポイントの対策を行い、新規感染者数はおよそ8割以上減少するなどはっきりした効果が出ている。一方で、感染が急激に拡大し、病床や軽症用のホテルが不足したことは真摯(しんし)に受け止めたい。これまでの経験をいかし、再拡大を防ぐことに努めたい」と述べました。

「資金繰りや雇用調整助成金など支援 きめ細かく行っていく」

「総合的な対策と合わせ、宣言が解除されても、資金繰りや雇用調整助成金など、できるだけの支援をきめ細かく行っていく。生活や雇用に深刻な影響が及んでいる方々への緊急支援策をとりまとめ、厳しい状況の中でも未来を担う子どもたちを第一に考え、ひとり親や低所得の子育て世帯に対し、子ども1人あたり5万円を給付する」と述べました。

そして「一定の所得を下回る方々について、月々10万円の給付金がついた職業訓練の対象を拡大し中でもデジタル分野の訓練の人数を倍増させて5000人とする。緊急小口資金などについて、新規の貸し付けを4月以降も継続し、住民税非課税世帯については、来年度以降返済を免除する」と述べました。

そのうえで「自殺防止、子ども食堂、子ども見守りなど、政策のはざまにあって、現場で活動を行うNPOなどに新たに60億円の支援を行う。さらにこれまでの多くの雇用を担ってきた、飲食業などの事業の継続を支援するために、金融面の対応策を早急に取りまとめる」と述べました。

「財政 非常に厳しくなっているがまずは新型コロナ収束へ対応」

また記者団が新型コロナウイルス対策に伴う財政出動と今後の増税の必要性を質問したのに対し「何としても大事なのは、新型コロナ対策なので、収束に向けて、必要なものにはしっかりと付けていく。思い切って財政出動をしていることで、財政そのものが非常に厳しくなっていることも事実だが、今は、まずは新型コロナを収束するためにできるかぎりの対応をすることが大事だ。『経済あっての財政』という考え方で、全力をあげて、何とかしのいでいきたい」と述べました。

「五輪・パラ 開催をしっかり応援していきたい」

「再び緊急事態宣言を出すことがないよう、5本の柱からなる総合的な対策をしっかりやるのが私の責務だと思っている。また、ワクチンは発症予防や重症化予防への効果があると指摘されており、感染拡大を防ぐために極めて大事だ」と述べました。

そのうえで「一つ一つ感染拡大を収束させていく中で、東京オリンピック・パラリンピックについては、IOCのバッハ会長が、世界のそれぞれの組織委員会に提案して、開催する方向で、いましっかり準備を進めているのが実情だ。開催をしっかり応援していきたい」と述べました。

「若者に対しての発信が足りなかった」

一方、若者に向けた情報発信について「例えばSNSなど、若者が見る部分に対しての広報が全く欠けていたのではないかと思っている。私自身も、若者に対しての発信が足りなかったと思っており、しっかりと発信していきたい」と述べました。

「ワクチン確保など地方自治体支援 全力で取り組んでいる」

またワクチン接種をめぐって「医師や看護師だけでなく、医学生でも接種を担当できるよう規制を緩和する考えはあるか」と質問したのに対し「接種に伴う安全性を確保する観点から、医師や看護師に限定されている。先般、日本医師会の会長と直接会い、全面的に協力するという趣旨のお話をいただいた。今後も、さまざまな事態を想定して、大規模な接種を円滑に進められるよう全力を尽くしたい」と述べました。

さらに「ワクチンの確保や財政支援を含めて、地方自治体への支援について、いま全力で取り組んでいるところだ」と述べました。

来月前半訪米へ 「日米同盟のさらなる強化につなげていきたい」

一方「日米同盟は日本外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤でもある。バイデン大統領とは、電話会談や、日米豪印の首脳テレビ会議などの場で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けたコミットメントを繰り返し明確にしてきた。同盟国である米国をはじめとして、志をともにする国々と緊密に連携して、さまざまな機会を捉えて、自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進していきたい」と述べました。

そのうえで「諸般の事情が許せば来月前半にはワシントンを訪問し、バイデン大統領との個人的な信頼関係を深めつつ、日米同盟のさらなる強化につなげていきたい。また、新型コロナ、気候変動、さらに中国をめぐる諸課題、また北朝鮮による拉致問題などのさまざまな課題について、日米で連携していくことをお互いに確認しあえる機会にしたい」と述べました。