【変異ウイルス】これまでにわかった特徴・感染拡大の現状は

新型コロナウイルスのうち、感染力が高いとされる変異や免疫が働きにくくなるとされる「変異ウイルス」が世界の100を超える国や地域から報告されていて、WHO=世界保健機関や各国が警戒を強めています。

その変異ウイルスについてこれまでわかっている特徴や感染拡大の傾向についてまとめました。

特に警戒が必要なのは、
▼イギリスで最初に見つかった変異ウイルス、
▼南アフリカで最初に見つかった変異ウイルス、
それに
▼ブラジルで広がった変異ウイルスです。

いずれも「N501Y」と呼ばれる変異があり、ウイルスが人などに感染する際の足がかりとなる表面の突起部分が感染しやすいように変化していて感染力が高くなっていると考えられています。

3つの変異ウイルスそれぞれの特徴とは

1)イギリスで最初に見つかった変異ウイルス

イギリスで最初に見つかった変異ウイルスは、WHOによりますと、3月9日までに111の国と地域で感染が確認されています。

この変異ウイルスの感染力は、ECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターによりますと、複数の研究から36%から75%高くなっているとしています。

また、イギリス政府は従来のウイルスより入院や死亡のリスクの上昇に関わっている可能性が高いとしていて、検証が行われています。

一方で、ワクチンの効果には大きな影響はないとしています。

2)南アフリカで最初に見つかった変異ウイルス

次に、南アフリカで最初に見つかった変異ウイルスです。

WHOによりますと感染力は50%高いとされ、3月9日までに58の国と地域で感染が確認されていますが、発症した場合の重症度は従来のウイルスと比べて変わっていないとしています。

一方、このウイルスには「E484K」と呼ばれる体の中で作られる
抗体の攻撃から逃れる変異があるため、再感染するリスクが上がると考えられています。

さらに、ワクチンが効くかどうかについて抗体がウイルスを抑える効果が下がるという研究結果が出ていて、各ワクチンメーカーはそれでも十分な効果はあるとしていますが検証作業を進めています。

3)ブラジルで広がった変異ウイルス

そして、ブラジルで広がった変異ウイルスです。

ブラジルでは、北部のマナウスで去年12月4日に最初に出現したと見られ、1月の時点ではマナウスで報告された感染者の91%がこの変異ウイルスへの感染だったということです。

WHOによりますと、感染力が従来のものより高いとされ、3月9日までに32の国と地域で感染が確認されていますが、発症した場合の重症度への影響は限られているとしています。

また、このウイルスも、抗体の攻撃から逃れる「E484K」と呼ばれる変異があるため、再感染したケースが報告されています。

一方で、ワクチンへの影響については現在、調査が行われている途中だということです。

さらに新たな変異ウイルスも続々見つかる

このほか、国内では2月25日にフィリピンから入国した人で感染しやすく変化した「N501Y」の変異と、免疫の攻撃から逃れる「E484K」の変異がある別の変異ウイルスが検出されたと報告されています。

さらに、免疫の攻撃から逃れる「E484K」の変異がある別のタイプの変異ウイルスも3月3日までに400例近く見つかっています。

この変異ウイルスには感染しやすく変化した「N501Y」の変異はなく、感染力は従来のものと変わらないと考えられるものの、中には国内で変異が起きたと見られるものもあり、国立感染症研究所は「注目すべき変異株」として遺伝情報の解析などを通じて実態を把握していくとしています。

変異ウイルス 新たに全国で128人感染判明

厚生労働省によりますと、遺伝子解析の結果、16日までの1週間に11の道府県の合わせて128人が、イギリスや南アフリカ、それにブラジルで広がっている変異ウイルスに感染していたことが確認されました。

前の週に確認された人数を51人、率にして66%上回っています。

内訳は、
▽兵庫県が最も多く56人、
次いで
▽埼玉県が16人、
▽北海道が13人、
▽大阪府が10人、
▽徳島県が9人、
▽神奈川県と愛媛県がそれぞれ6人、
▽京都府と広島県がそれぞれ5人、
▽香川県と沖縄県が1人ずつとなっています。

北海道と徳島県、愛媛県、香川県、それに沖縄県で確認されたのは初めてです。

これまでに国内で399人の感染を確認

これまでに国内で変異ウイルスへの感染が確認された人は、
▽北海道が13人、
▽福島県が5人、
▽茨城県が1人、
▽栃木県が1人、
▽群馬県が3人、
▽埼玉県が57人、
▽千葉県が1人、
▽東京都が14人、
▽神奈川県が28人、
▽新潟県が32人、
▽石川県が1人、
▽山梨県が2人、
▽長野県が1人、
▽岐阜県が4人、
▽静岡県が7人、
▽滋賀県が2人、
▽京都府が24人、
▽大阪府が72人、
▽兵庫県が94人、
▽岡山県が3人、
▽広島県が12人、
▽徳島県が9人、
▽香川県が1人、
▽愛媛県が6人、
▽鹿児島県が5人、
▽沖縄県が1人の合わせて399人となっています。

また、この399人が感染した変異ウイルスの内訳は、
▽イギリスで報告された変異ウイルスに感染していた人が374人、
▽ブラジルが17人、
▽南アフリカが8人となっています。

「変異ウイルス」感染 死者は神奈川県と大阪府で合わせて3人

国内で17日までに死亡した人のうち、変異ウイルスへの感染がわかった人は3人となっています。

このうち神奈川県によりますといずれも県内に住む50代と70代の男性の合わせて2人が、死亡したあとに変異ウイルスへの感染が確認されました。

また17日、大阪府も新型コロナウイルスに感染して死亡した80代の女性が変異ウイルスに感染していたことが確認されたと発表しました。

厚生労働省 変異ウイルス感染者の入退院基準とりまとめ

変異ウイルスに感染した人の入院や退院について厚生労働省は基準をとりまとめ、都道府県などに通知しています。

それによりますと、法律に基づく入院措置の対象となるのは、
▽変異ウイルスの感染が確定した患者のほか、
▽変異ウイルスが流行している国や地域に滞在歴のある入国者で新型コロナウイルスの感染が確認された人や感染が疑われる人、
▽過去14日以内にこれらの国や地域に滞在歴のある入国者の濃厚接触者で感染が確認された人や感染が疑われる人などとなっています。

入院措置の対象となった人の退院基準については、
▽37度5分以上の発熱が24時間なく、
▽呼吸器症状が改善傾向となっていることが必要で、その上で24時間以上あけた検査を2回行い、連続で陰性となることとしています。

また、変異ウイルスに感染した無症状の患者の退院基準については、
▽検体を採取してから6日間が経過した後の検査で陰性が確認され、▽24時間以上が過ぎてからの検査で再び陰性が確認されれば退院を認めるとしています。

厚生労働省は科学的な知見が得られるまで、当面の間、この基準の運用を続けるとしています。

専門家「変異ウイルス主流の流行起きれば状況厳しくなるおそれ」

変異ウイルスの国内での状況について、公衆衛生学が専門で国際医療福祉大学の和田耕治教授は「国内でどこまで広がっているのかまだわかっていないことも多いが、各国の状況を見ると封じ込めることは難しく、国内でも感染の主流に置き換わると考えるべきだ。変異ウイルスの情報が盛んに出始めた年末年始の時期以降、感染者数が減ってきていて一般の人はなかなか危機感を持ちにくい状況だと思うが、変異ウイルスが主流の流行が起きれば、感染拡大のスピードや感染者数などの状況がこれまでより厳しくなるおそれがある」と述べました。

そのうえで行うべき対策について和田教授は「個人で行う対策は全く変わらないが、年度替わりの時期で多くの組織で人事異動で感染対策の責任者が替わり、これまでやってきていた対策がうまく引き継がれないケースもあるかもしれない。去年の同じ時期にもそうしたケースが見られていて特に高齢者施設、医療機関、自治体などではこれまでの対策をより素早く行う必要があり、徹底してほしい。また、監視体制の強化も必要で、民間の検査会社が検査したウイルスの検体からも変異ウイルスを検出できるように、しっかりとしたルール作りを国が行うべきだ」と話しています。