ブラジル 新型コロナの感染拡大収まらず医療崩壊のおそれ

新型コロナウイルスの世界全体の感染者の増加ペースは緩やかになっていますが、南米ブラジルでは、感染拡大が収まらず、1日当たりの感染者が多い日で7万人を超えて世界で最も多くなっていて、多くの都市で医療崩壊のおそれが強まっています。

ブラジルでは、今月に入り、アマゾン地域の都市マナウスで発生したと考えられている変異ウイルスが全土に広がり、1日当たりの死者の数が多い日で2000人を超えています。

最大都市サンパウロの郊外にある墓地には1日に30以上の遺体が運び込まれていて、その80%近くが新型コロナウイルスの感染者だということです。

また、1日当たりの感染者の数も今月に入って多い日で7万人あまりに上り、アメリカを上回って世界で最も多くなっています。

今月12日の時点で27の州のうち少なくとも24の州で集中治療室の占有率が80%を超え、多くの都市で医療崩壊のおそれが強まっています。

中でもサンパウロの集中治療室の占有率は、今週に入って90%を超え、地元メディアによりますと、入院できない患者が1日に数十人、亡くなっているということで、医療体制が危機的な事態に直面しています。

ロックダウン機能せず

ブラジルで感染拡大が収まらないのはなぜなのか。

背景の1つには、経済活動の厳しい制限、いわゆるロックダウンが十分に機能していないことがあります。

サンパウロ州では、今月6日から生活必需品を売る店以外の営業を原則禁止し、午後8時以降の外出も禁止しました。

ふだん多くの人でにぎわう街の中心部は車の出入りが禁止され、警察がルールを守らずに営業をする店がないか、厳しく目を光らせています。

しかし街の郊外では営業を続ける店舗が多く見られます。

厳しい経済状況を背景に、営業の規制に従わない人たちが多くいるのです。

取材に応じた女性は、規制がかかって以降も自宅で衣料品をつくり、外で販売しているということで「働かないと生きていけない」と話していました。

経済第1主義を掲げるボルソナロ大統領も今月初め「泣き言は聞きたくない。家にいないで自分のできることをやれ」などと発言し、物議を醸しました。

また、夜間、若者が数百人規模でパーティーを開くケースも相次ぎ、警察が解散を命じる事態となっています。

規制を守らない人が後を絶たないことから、サンパウロの一部の地域では、周囲に注意を呼びかけるためだとして、検査で陽性とされた人には赤いバンドの着用を、症状があって検査を待っている人には黄色いバンドの着用を義務づけ、守らない人からは罰金を取る対策まで取られています。

ワクチン接種が進まず

一方、ことし1月から接種が始まったワクチンについても迅速に人々に行き渡っていないと受け止められ、国民の不満を高めています。

ブラジルの人口は2億を超えていますが、政府によりますと、これまでに接種を受けたのは1000万人余りとなっています。

政府に頼れないと、ワクチンの不足に悩む州の知事が中国政府に対して個別に支援を求める手紙を送り、波紋を広げました。

さらに、優先接種を受けに来た高齢者に注射器の針だけを刺してワクチンを注入せず、その分をほかの人に接種しようとしたなどとして、複数の看護師らが捜査の対象になる事態まで起きています。

このようにブラジルでは、感染拡大を防ぐ対策の徹底や、ワクチンの普及をどう進めるかが大きな課題になっています。