アストラゼネカ製ワクチン 欧州で接種一時見合わせ動き広がる

ヨーロッパではアストラゼネカなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを、接種したあとに血栓が報告されたなどとしてヨーロッパ各国が予防的に接種を見合わせると相次いで発表し、ワクチンセンターが一時的に閉鎖されるなど接種計画に影響が出ています。

アストラゼネカなどが開発したワクチンをめぐっては、接種後に血栓が確認されたケースがあるなどとして、16日までにドイツやフランス、イタリアなど15か国が予防的な措置として接種を見合わせると発表しました。

このうちイタリアでは16日、首都ローマ中心部の駅近くに設置されたワクチンセンターが政府の見合わせの決定を受けて朝から閉鎖されるなど、ローマのあるラツィオ州では30か所以上が一時的に閉鎖されているということです。

市民からは「調査をするためにワクチンの接種を止めることは良いことですが、その後は接種を進めるべきです」といった声や、「血栓は偶然かもしれないが心配です。アストラゼネカ製のワクチンの信用が失われている」といった声が聞かれました。

また、フランスでは15日から全国の薬局でアストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が始まったばかりでしたが、政府の決定を受けて、接種が急きょ中断される事態となっていて、ワクチン接種を急ぐ各国の計画に影響が出ています。

調査を行ってるEU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局は「ワクチンを接種した人が血栓を起こしたケースは接種していない人に比べて多くないとみられる」とした上で、「ワクチンを接種して得られる効果の方が、接種しないリスクを上回る」と強調していて、18日にも今後の対応を発表する予定です。

一方、WHO=世界保健機関は、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が死亡につながった例は確認されていないとして各国に接種を続けるよう呼びかけています。

ヨーロッパではアストラゼネカ製のワクチンを接種したあとに血栓が報告されたなどとして一時的に接種を見合わせる国が相次いでいます。

今月11日に北欧のデンマークが予防的な措置として2週間接種を見合わせると発表し、これを受けてノルウェーやアイスランドも接種を見合わせました。

その後、ブルガリアやアイルランド、オランダが続きました。そして16日までにドイツやフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、キプロス、スロベニア、ラトビア、スウェーデンが接種の見合わせを発表し、これまでに少なくとも15か国にのぼっています。

110万回分届いたインドネシアも接種計画見直しへ

アストラゼネカなどが開発したワクチン、およそ110万回分が今月8日に届いたインドネシアでは、このワクチンを使った接種計画を見直すことを明らかにしました。

インドネシアではことし1月から中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチンの接種が医療従事者らを優先して始まっていますが、これに加え、アストラゼネカなどが開発したワクチンの緊急使用を9日に許可し、国内のイスラム教団体による「ハラル認証」を待ったうえで接種の開始時期を決める計画でした。

こうした中、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種後に血栓が確認されたとの報告があったことから、インドネシアのブディ保健相は、15日議会への説明の中で、「EU=ヨーロッパ連合の医薬品規制当局などの情報も確認している。ワクチンの接種と関係があるかどうかはまだ明らかになっていない」と述べました。その上でブディ保健相はWHO=世界保健機関の調査結果をもとに、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種計画を見直すことを明らかにしました。

接種延期していたタイは16日から再開

タイ政府も、今月12日に予定していたプラユット首相へのこのワクチンの接種を急きょ延期し、国民への接種も見合わせていました。

しかし、タイ政府は「科学的な根拠に基づいて安心して使用できるとするアストラゼネカの声明や、ワクチンの接種と関係があるとは言えないという WHOの見解などを受けて、タイの医療チームが安全性を総合的に判断した」として、16日から接種を開始し、プラユット首相も自ら接種を受けました。

プラユット首相は接種を受けた後「国民の間にワクチン接種への信頼感が高まってくれればよい」と述べました。

タイでは、中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチンの接種が先月から始まっていますが、アストラゼネカなどが開発したワクチンの接種が延期されたことで、ワクチンの接種自体を心配する声が上がっていました。

6000万人分供給契約 日本への影響は

現在日本ではファイザー製のワクチンの接種が進められていますがアストラゼネカも日本政府との間で6000万人分を供給する契約を結んでいます。

日本への影響について東京都内で「ヨーロッパの一部の国で使用が一時停止されているが日本の接種計画に影響はないか」と記者団から質問された菅総理大臣は「まずは、情報をしっかり集めて、それを精査したうえでの判断になると思う」と述べました。