聖火リレー 出発地の福島県 「TOKIO」や窪田正孝さん辞退

東京オリンピックの聖火リレーの開始まであと19日となり、スタート地点の福島県では、大会組織委員会の森前会長の発言をめぐる問題に関連して辞退した被災者の男性に代わって復興を支援する活動をしてきた男性がランナーを務めることになりました。また、聖火リレーの延期で改めてランナーに参加の意向を確認したところ、新たに人気グループの「TOKIO」と俳優の窪田正孝さんが辞退したことが分かりました。

東京オリンピックの聖火リレーは今月25日に福島県のJヴィレッジをスタートし、3日間で県内26市町村の265区間を走ったあと、全国を巡ることになっています。

福島県の実行委員会には、福島ゆかりの著名人ランナー7人の「推薦枠」と、県内59の市町村からそれぞれ1人がゆかりの人として参加する「公募枠」の、合わせて66の枠が割り当てられています。

福島県が、新型コロナウイルスの影響で聖火リレーが1年延期されたことに伴って改めて参加の意思を確認したところ、63の枠については変わらず参加するものの、新たに著名人のランナーが辞退したことが分かりました。

辞退したのは、初日の最終ランナーとして南相馬市を走る予定だった「TOKIO」と、NHKの連続テレビ小説「エール」で主人公を演じ福島市を走る予定だった俳優の窪田正孝さんで、いずれもスケジュールの都合が理由だということです。

また、大会組織委員会の森喜朗前会長の発言をめぐる問題の対応に納得がいかないとして福島県の男性が辞退しましたが、「補欠」に決まっていた福島の復興を支援する活動を続けてきた69歳の元教員の男性が代わりのランナーを務めることになりました。

“著名人ランナー”が交代

注目されていた7人の著名人ランナーのうち、▽初日の最終ランナーとして南相馬市を走る予定だった「TOKIO」と、▽NHK連続テレビ小説「エール」で福島市出身の作曲家古関裕而をモデルとした主人公を演じ福島市を走る予定だった俳優の窪田正孝さんは、いずれもスケジュールの都合を理由に辞退しました。

これに伴って、新たに▽NHKの連続テレビ小説「エール」で主人公の母親役を演じた俳優の菊池桃子さんと、▽前回は公募枠だった陸上女子400メートルの日本記録保持者で現在は矢吹町の職員の千葉麻美さんが「推薦枠」に入りました。

新しいランナーの男性「恩返しの気持ち込めて走る」

今回新たに「公募枠」に選ばれ、原発事故のためにかつて避難指示が出された田村市を走ることになった田村市大越町の佐久間辰一さん(69)は、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長の発言をめぐる問題への対応に納得がいかないとして辞退した被災者の男性の「補欠」にもともと決まっていました。

佐久間さんは、「福島県から参加依頼の連絡があったときは驚きました。走者に決まっていた男性が森前会長の問題に伴って辞退したことはニュースで知っていたので、代わりに参加するべきか一瞬、ちゅうちょしましたが、オリンピックを成功させたいと思って参加を決めました。辞退した男性も本当は走りたかったと思うので、彼の思いも背負って田村市の代表として走りたいです」と語りました。

佐久間さんは元教員で、現在は農業を営んでいます。

地域のつながりを維持していくために、平成8年から地元の道路沿いや畑などにひまわりを咲かせる活動を行っていて、東日本大震災と原発事故のあとは、福島の復興を支援するため全国の協力者に育ててもらったひまわりの種を県内で咲かせるプロジェクトにも参加してきました。

佐久間さんは「震災をきっかけに全国の応援してくれた人への恩返しの気持ちを込めて走り、田村市や福島県が元気だと伝えたいです」と話していました。

代わりのランナーに「おめでとう」のメール

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が、森前会長の発言をめぐる問題への対応に納得がいかないとして辞退した被災者の男性の「補欠」として走ることになった男性に「おめでとうございます」などと書かれたメールを送っていたことが分かりました。

メールを受け取った福島県田村市の佐久間辰一さんによりますと、当初走者に決まっていた男性が森前会長の問題に関連して参加辞退を申し入れたことが明らかになった5日後の先月15日、福島県の担当者から「聖火リレーへの参加をお願いできないか」という電話がありました。

さらにその10日後、今度は大会組織委員会で聖火ランナー関係の業務を担当している「東京2020オリンピック聖火ランナーデスク」から「おめでとうございます!!あなたは、正式に2021年実施の東京2020オリンピック聖火リレーのランナーに決定しました!」と書かれたメールが届いたということです。

メールの文面には、森前会長の発言やその後の対応をめぐる騒動についての説明、それに当初決まっていたランナーが辞退した経緯などは書かれていませんでした。

佐久間さんは「複雑な思いで参加を辞退した人がいる中で、配慮が足りないのではないか。仮に森前会長の問題がなかったとしても、代わりのランナーに参加要請が来るということは、健康上の理由やスケジュールの問題など何らかのやむを得ない理由で念願の聖火リレーを走れなくなった人がいるということなので、代わりのランナーに『おめでとう』というメールを送ること自体が疑問だ」と話していました。

福島の聖火リレーコース 先月の地震被害で変更も

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1年延期されたことに伴い、福島県では聖火リレーのコースも当初の計画と変わりました。

大会組織委員会は、時間を短縮し運営を簡素化するため、浪江町と猪苗代、それに双葉町でルートを一部見直しました。

このうち猪苗代町では、全国で唯一、ランナーがスキーで滑る予定で、昨シーズンの記録的な雪不足になっても滑走できるよう、スタート地点を当初の予定より250メートルほど標高が高い場所に変更しました。

また双葉町では、当初予定していたランタンを持ったランナーがJR常磐線の列車に乗って聖火を運ぶパフォーマンスをやめました。

さらに、先月13日に発生した東日本大震災の余震とされる最大震度6強の地震の影響で、相馬市のルートも一部変更になりました。

地震の揺れで参道の両脇の石灯籠が数本倒れ、中継ポイントとなっている大手門の支柱が壊れていることが分かったためです。

このほか、相馬市と隣の新地町で、先月の地震でルートや周辺の道路に亀裂が入ったり段差ができたりしている所が見つかっていて、応急的な補修が行われる所もあります。

感染対策 密を避けネット中継 応援は拍手で

大会組織委員会は、先月25日に新型コロナウイルスの感染対策のガイドラインを発表しました。

それによりますと、沿道での密集を避けるため、リレーの様子はインターネットでライブ中継し、著名人ランナーは密集対策ができる場所を走ります。

このため、著名人など各ランナーが走る区間は去年いったん公表され顔ぶれはそこからほとんど変わっていませんが、実際にどの区間を走るのかは直前まで公表できないとしています。沿道などでは、マスクを着用し、応援は大声ではなく拍手などで行うよう求めます。

さらに、1日の最後の式典の会場は事前予約制とし、過度な密集が発生した場合はリレーを中断するなどとしています。

福島ゆかりの著名人ランナーは

「推薦枠」で走る福島ゆかりの著名人ランナーは、次の7人です。

1日目 3/25

▽常磐ハワイアンセンター、現在のスパリゾートハワイアンズを舞台にした2006年公開の映画「フラガール」に出演したお笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃんは、いわき市を走ります。

しずちゃんは「フラガールの撮影では、たくさんの福島の人たちに支えてもらいました。福島のみなさんに力をもらったことを思い起こしながら、少しでも多くの人々に笑顔を届けられるよう、そして、第2の故郷である福島の魅力を発信できるよう、一生懸命走りたいです」というコメントを寄せています。

▽福島市を拠点に活動し、世界トップレベルの技術を持つパイロットたちによる小型機のレース「エアレース」の世界選手権でアジア人初の年間総合優勝を果たした室屋義秀さんは、南相馬市を走ります。

室屋さんは「エアレースパイロットとしてキャリアを歩む中で、活動拠点である福島は特別な場所です。大好きな福島の空を見え上げながら、これまでお世話になった方々への感謝の気持ちを胸に、多くの人に笑顔の輪が広がるよう、心を込めて走りたいと思います」というコメントを寄せています。

2日目 3/26

▽NHKの連続テレビ小説「エール」で主人公の母親役を演じた俳優の菊池桃子さんは福島市を走ります。

菊池さんは「『エール』の福島ロケでは、多くの方々にエキストラとしてご協力いただき、温かい雰囲気と優しい福島弁に包まれた思い出深い現場となりました。多くの人を元気づけ、励まし続けた『古関裕而メロディ』を心の中で奏でながら走りたいと思います」というコメントを寄せています。

▽フリースタイルスキーモーグルで冬のオリンピックに3大会連続で出場した遠藤尚さんは、出身地 猪苗代町を担当します。

遠藤さんは「これまでのモーグル人生でお世話になった福島の皆さんへの感謝の気持ちを思い出し、また、コロナ禍で困難な状況に直面している方々に少しでも明るい心の灯火がともるよう、しっかりと聖火をつないでいきたいと思います」というコメントを寄せています。

▽バレーボール元日本代表でオリンピックに3大会連続で出場した大林素子さんは、観光大使を務めている会津若松市を走ります。

大林さんは「人の温かさ、食事のおいしさ、お酒のおいしさ、そんな大好きな福島県の魅力を発信しながら、聖火ランナーとして福島の地を走れることをとても楽しみにしています」というコメントを寄せています。

3日目 3/27

▽陸上女子400メートルの日本記録保持者で、現在は矢吹町の職員の千葉麻美さんは郡山市を走ります。

千葉さんは「これまでたくさんの方々からのご支援や応援が私の背中を押してくれました。そんな方々への感謝の気持ちを込め、そして、県内の多くの子どもたちにオリンピックを身近に感じてもらえるよう、笑顔で楽しみながら走りたいと思います」というコメントを寄せています。

▽郡山市出身のクリエイティブディレクター箭内道彦さんも郡山市を走ります。

箭内さんは「当初、灯を感じた『復興五輪』という言葉がしぼんでしまっている今…、それでも福島県で聖火リレーが行われるのであれば、全国の、世界の人々に、東日本大震災から10年後の福島の現在を見てもらうために、故郷の道を走ろうと思います」というコメントを寄せています。