「免疫の働き弱まる」変異ウイルス 国内も発生か 慶大など発表

新型コロナウイルスの変異ウイルスについて、免疫の働きが弱まるおそれのある遺伝情報の変異が国内でも起きていた可能性があるとする分析結果を慶応大学のグループが発表しました。

この分析は慶応大学医学部の小崎健次郎教授らのグループが発表しました。

グループでは国内の感染者から検出され、遺伝情報が公開されているおよそ4400人分のウイルスの遺伝子を詳しく分析しました。

その結果、免疫の働きが弱まる可能性が指摘されている「E484K」と呼ばれる変異を持ったウイルスが64人分見つかったということです。

このうち62人分は遺伝子の特徴から海外から持ち込まれたとみられますが、去年の8月と12月にそれぞれ採取された2人分の変異ウイルスについては日本で流行しているウイルスと遺伝情報が非常に近く、国内で変異が起こった可能性が高いことが分かったということです。

「E484K」の変異は南アフリカやブラジルで広がった変異ウイルスでも見つかっていますが、今回、分析されたウイルスは、いずれもこれらとは異なり、感染性が高まるような変異は起こっていないということです。

小崎教授は「今回、数は少ないが国内で変異したとみられるウイルスが見つかった。変異ウイルスは、海外から流入するだけでなく、国内でも発生するおそれがあることを念頭に広く監視していく必要がある」と指摘しています。

変異ウイルス 20都府県で確認

イギリスなど海外で広がる変異した新型コロナウイルス。国内では去年12月に初めて見つかり、それ以降、徐々に感染が拡大しています。5日までに確認された地域は合わせて20の都府県に上っています。

国内で最初に変異ウイルスが確認されたのは去年の12月25日。イギリスを出て羽田や関西空港に到着した5人から検出されました。

その翌日には、東京都で、空港の検疫以外では初めて変異ウイルスが確認されました。

年が明けた1月、6日には兵庫県、18日には静岡県、28日には埼玉県で、空港の検疫以外では初めて変異ウイルスが報告されました。この時期になると、海外に滞在歴が無い、いわゆる市中感染したとみられる人も出てきました。

2月に入ってさらに地域が拡大し、4日には神奈川県、9日には福島県、栃木県、群馬県、茨城県、新潟県、長野県、12日には山梨県と滋賀県、16日には京都府と鹿児島県、18日には岡山県、22日には大阪府で、変異ウイルスの検出が初めて報告されました。

職場や保育園などで変異ウイルスによるクラスターが発生したとみられる地域もありました。

3月になっても、3日に千葉県と岐阜県で、5日に石川県で初めて変異ウイルスが報告されました。

5日までに、20の都府県で194人、空港の検疫で57人の合わせて251人の感染が確認されています。