ベルリン映画祭 濱口竜介監督の「偶然と想像」審査員大賞

世界3大映画祭の1つ、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞に次ぐ銀熊賞の審査員大賞に濱口竜介監督の「偶然と想像」が選ばれました。

ことしで71回目となる「ベルリン国際映画祭」は5日、コンペティション部門の審査結果が発表され、審査員大賞に3つの短編映画からなる濱口竜介監督の「偶然と想像」が選ばれました。

審査員大賞は最高賞の金熊賞に次ぐ銀熊賞の1つで、2014年には「小さいおうち」に出演した黒木華さんが銀熊賞の最優秀女優賞を受賞しています。

審査員は物語が展開するにつれて作品に引き込まれていくと評価しました。

また、最高賞の金熊賞にはルーマニアのラドゥ・ジュデ監督の「バッド・ラック・バンギング・オア・ルーニー・ポルノ」が選ばれました。

ベルリン国際映画祭は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今月は関係者向けにオンライン形式での作品公開と審査を行い、6月にはベルリンで授賞式と一般観客向けの上映を予定しています。

ことしの映画祭は性別を区別しない姿勢を強く打ち出すとして、「最優秀男優賞」と「最優秀女優賞」を廃止し、新たに「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を設けたことでも注目を集めました。

濱口監督「あまり期待せず驚き」

濱口竜介監督が、一夜明けた6日オンラインで会見し、「受賞することはあまり期待していなかったので驚いています」と喜びを語りました。

濱口監督は、「コンペに入ることも受賞することもあまり期待していなかったので驚いています。すごく小さな態勢で作った映画でも、規模の大小にかかわらず映画祭が取り上げてくれるのだと証明されたと思います」と喜びを語りました。

また作品がどう受け止められたかについては、「会話劇なので、日本語では伝わるニュアンスがきちんと伝わらないこともあるし、字幕が疲れると言われることもありましたが、役者さんの表情がダイレクトに伝わったと思います。役者がことばを発するときに空間が変わっていくところを見たと評価されたことは、映画として異質なことだと思います」と語りました。

そして、「賞をいただくことで、作品を簡単に発見してもらい評価される機会が増えます。今後も大きい作品か小さい作品かは分かりませんが、淡々とそのときに撮れるものを撮っていきます」と話していました。

濱口監督と東日本大震災

濱口竜介監督は東日本大震災の2か月後から被災地に行き、2年がかりでドキュメンタリー映画を作りました。

そのときの思いについて「『震災というのは少なくともこの人にとってはこういう体験だった』ということを、少しだけ理解するということを、ひたすらやってきました」などと語っています。

濱口監督は、福島県や宮城県の沿岸部に住む被災者の語りをまとめた「なみのおと」と「なみのこえ」というドキュメンタリー映画を、ほかの監督と共同で制作しています。

制作の動機について、濱口監督は「一体何が起きているかを見極めたいという気持ちがいちばん大きなモチベーションだったと思います」としたうえで「震災というものが何なのか結局分からず、まず聞くしかないというところから始まりました」と語りました。

一連の作品では、震災の爪痕を伝える生々しい映像はほとんどなく、被災者が親しい人と震災の記憶を語り合う様子が記録されています。

こうした「語り」の記録を続けてきたことについては「親しい人たちに会話をしてもらい、その人たちがどういう人なのかをだんだん教えてもらいました。『震災というのは少なくともこの人にとってはこういう体験だった』ということを、少しだけ理解するということを、ひたすらやってきました」と説明しました。

撮影を通じて思い至ったことについて、濱口監督は「何で自分は助かったのか、何で自分の家は流されたのかは、誰にも分からないというか、誰にでも起こりえたということだけが分かった気がします。だから被災者や死者と自分を分けて考えるのはやめておこうと考えたと思います」と話していました。

そのうえで、震災10年を前に「自分はいつでも当事者になるということを考えておくことが、きっと必要ではないだろうか。当事者になったときに自分がどうできるのかという準備をしておくことは、とても大事なことなのではないかと思っています」と語りました。