首相 “宣言”延長で会見 解除に向け国民にさらなる協力求める

菅総理大臣は5日夜、総理大臣官邸で記者会見し、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言を2週間延長することについて、解除できないことを陳謝したうえで解除に向けて国民にさらなる協力を求めました。

記者会見の冒頭、菅総理大臣は、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言を2週間延長し、今月21日までとすることを政府の対策本部で決定したと説明しました。

そのうえで「宣言を発出した1月以降、大きな効果が目に見えて現れていて、全国の新規感染者は8割以上減少した。これは諸外国のような厳しい宣言を行わずとも、ひとえに皆様方のふんばりと、心を1つにして懸命に取り組んでいただいた結果だ」と述べました。

一方で1都3県について、病床の使用率が高い地域があるほか、いわゆるリバウンドの懸念も高まっていると指摘したうえで「2週間は感染拡大を抑え込むと同時に、状況をさらに慎重に見極めるために必要な期間だ。こうした点を冷静に、そして総合的に考慮し内閣総理大臣として延長の判断をした」と宣言を延長する理由を説明しました。

そして「当初約束した今月7日までに宣言を解除することができなかったことは大変申し訳ない思いであり、心よりおわびを申し上げる」と陳謝しました。

また今後の対策として飲食店の営業時間短縮や不要不急の外出自粛、テレワークの実施などを引き続き徹底するほか、市中感染を探知するため、無症状者のモニタリング検査を今後大都市でも規模を拡大して実施する考えを示しました。

そのうえで「特にリスクが高いのは、マスクを外した会話が多くなる飲食であり、そこが対策の中心となることも分かってきた。春は卒業式、入学式、歓送迎会など人生の節目であるとともに、お花見など人が集まる機会も多くある。今回そうした機会であっても大人数の会食は控えていただくようお願いする。解除後の地域であっても、会食はできるだけ、家族または4人以内でお願いする」と述べ、協力を呼びかけました。

そして、解除の判断で考慮すべき点について「病床の占有率を全部50%未満にするわけでそうした努力をしっかりと行い、体制をつくることが、この2週間でやるべきことだ。病床の占有率も一定以上の余裕のある数字になるまで落としていきたい」と述べました。

一方、ワクチンについて、菅総理大臣は「来月12日から、全国の高齢者への接種をスタートし、来月末から規模を大幅に拡大する。感染対策の切り札として、希望する国民に1日も早く届けたい」と述べました。

また、変異したウイルスへの対応について「地域的な広がりは確認されていないものの、昨年末以来、19の都府県で確認されており、引き続き十分な警戒が必要だ。今月から変異株が短時間で検出できる新たな方法の検査をすべての都道府県で実施し、国内の監視体制を強化する」と述べました。

さらに今後の支援策に関連し「事業や生活に深刻な影響が及んでいる。飲食や宿泊、地域の公共交通機関など、特に厳しい状況が続く業界もある。雇用調整助成金など、できるかぎりの支援を継続する。また資金繰りは十分な資金と、規模や状況に応じたさまざまな支援策を用意しており、個別に相談を伺い、丁寧に対応していく」と述べました。

一方現在、全国で停止している「Go Toトラベル」について「緊急事態宣言が延長され、当面の再開は難しいと考えている。今後、各地域の感染状況を踏まえて、専門家の意見を聴きながら判断していきたい。各地域の感染状況はさまざまで、いろいろな地方から県内だけの再開の要請も来ているが当面の再開は難しい」と述べました。

そして「今、総理大臣の私がなすべきことは、これまでの成果を確実なものにし、リバウンドを阻止し、宣言を解除できるようにすることだ。『緊張感が緩んできている』という意見もある一方『もう限界だ』という声があることも承知している。こうしたさまざまな声にも思いをめぐらしながら、もう一段、対策を徹底する決断をした。国民には大変申し訳ない思いだが、皆さんの命と暮らしを守るため、安心とにぎわいのある生活を取り戻すために、一層のご協力を心からお願い申し上げる」と述べました。

このほか記者団から、衛星放送関連会社からの接待問題で懲戒処分を受けたあと、NTTの社長などと会食していたことが明らかになった、総務省の谷脇総務審議官を続投させるのか問われたのに対し、菅総理大臣は「お尋ねの件は、現在、調査中であると承知しており、答えは控えさせていただきたい」と述べました。また、武田総務大臣の責任について「武田大臣は、そのリーダーシップのもとに、事実関係の確認を徹底し、ルールにのっとって、しっかり対応してほしい」と述べました。

尾身会長「首都圏の医療の負荷 状況改善方向にいっていない」

菅総理大臣の記者会見に同席した諮問委員会の尾身茂会長は首都圏の1都3県で緊急事態宣言が延長されたことについて「いま首都圏は、感染状況も、医療の状況も解除の条件として以前から示していたレベルはクリアしている。ただ、医療の負荷という部分では安定的に状況が改善する方向までにはいっていないというのが現状だ」と述べました。

そのうえで延長の理由について「ひと言で言えば首都圏の特殊性ということが挙げられる。人口が多いのと同時に歓楽街も多く、自治体どうしの広域の連携が難しいことなどによってクラスターが起きた際のみなもとが分からないことが多い。こうした状況で宣言を解除すれば必ず一定程度の感染増加が見られる。知事には、それがリバウンドにつながらないようにこの2週間のうちに、検査や医療体制の強化など対策をお願いしたい。解除するときもその対策ができているかどうかが判断の重要な要素になってくると思う」と述べました。

「まん延防止等重点措置」活用を

さらに尾身会長は新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正で新たに設けられた「まん延防止等重点措置」の活用について「政府の分科会は、重点措置の活用にかなり強い関心を持っている。今回の緊急事態宣言が出される前、去年のうちに『準緊急事態宣言』のような措置をしっかり取って、宣言をなんとか回避したいと考えていたが、必ずしも強い措置をとることができなかった。そこには、国や自治体の権限や役割の分担の関係も影響している。今後は、感染が大きな波になってしまう前に国が『まん延防止等重点措置』の適用をしっかりと決めて、自治体も一緒になって連携してやってもらうことが、最も重要なことのひとつだと思う」と述べました。